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「がんじがらめの愛」3章-15

 そんな微笑を浮かべた片桐に強い口調で言った。
「お前の悩みは俺が背負う。悩み事が有るなら俺に話すせ。いいな」
「ああ、そうする事にする。今はこれといって悩み事などはないが…な」
 だが、瞳の深遠には暗い影が宿っている。片桐は周りを見回している。
「やはり、この界隈は良い。自分の家の事を知っている人間が通り掛からないから」
 先程とは違い解放感に満ちた表情だ。
「そうだな。この辺りは俺も初めて来た」
 片桐と同じ様に周囲を見回す。歩いているのは、ごく普通の庶民達だった。彼らは尋常小学校を卒業出来れば良いほうで、それすら家庭の事情で辞めて働く人間の方が多い。
「晃彦、お前は目立つな。ほらあそこのご婦人、晃彦をさり気なくだが…じっと見ているぞ」
 案外真剣な声で言う。
「お前だって…向こうのご婦人が見ている」
「オレはきっとこの制服が珍しいだけだ」
 本気でそう思っている様な口調で言った。制服を着ている人間は確かに珍しいだろう。たとえ学習院だと分からなくても目立つことこの上ない。
「俺だって、同じ制服を着ているが」
 そう言ってみると、それもそうだなと頷いた。
「しかも、向こうのご婦人はお前の顔をちらちら見ている」
「晃彦を見て居る方だって顔を見ているぞ」
 他愛のないことで笑いあった。
「それはそうと、華子の事を言ってなかったか」
 冷静になってから思い出したらしい。
「ああ、言った。三條が華子嬢に懸想をしているらしい。彼は女子部でも人気の有る人間だが、醜関係になった事は当然無いし、人柄は誠実だ。言い出した事には責任は取る。それに何より似合いの二人だと思う」
 暫く考えて片桐は口を開いた。
「自由恋愛の話しでは無く、婚約とかそういう話なのか」
 慎重な口ぶりだった。
「俺の読みでは、多分そうだと思うのだが」
「そうか…ただ、出自の問題は残る…な。華子の想いはともかくとして」
「敢えて冷酷に言う事を許して欲しい。俺の家とお前の家は敵同士だ。しかし、50年以上前の事だ。片桐伯爵のお考えは分からないでもない。俺の家でもそうなのだから。しかし、三條の家は違う。片桐家に何の遺恨も持ってらっしゃらないし、三條だってああ見えて真面目でしっかりした男だ。侯爵家の嫡男だし、別に差し障りは無いだろう」
 かつて、母上の弱みはたくさん握っているとの彼の言葉が蘇った。
「問題があるとすれば華子嬢の気持ちだな。惚れた方は居ないのか」
「ああ、それは居ないと断言出来る。華子が恋をすれば、煩い程言ってくる筈だ」
「仲の良い兄弟なのだな。俺とお前の仲も話しているのか」
 純粋な疑問だった、別に片桐が華子嬢を信頼して打ち明けていても、口外していなくてもどちらでも構わない。
「いや、問題が問題だけに話して居ない。華子は『晃彦様とは随分親密でいらっしゃるわね』と言っていたが、どういう関係かまでは想像出来ない筈だ。そんなに大人びた娘でもないからな」
「そうか…それはいささか残念だ。華子嬢には祝福されたい」
 冗談めいた口調で言うと、片桐は唇を弛めて言った。
「絢子様が祝福なさって下さった。それだけで充分だ」
 彼も園遊会で絢子様が加藤家の両親と故意に引き離して下さった事を察しているのだなと思った。
 夕闇が辺りに漂って来た。名残りは尽きないが帰宅しなければならない時刻となったようだ。
「明日もここで逢えるか」
「ああ、逢おう」
 短い返事だったが、揺ぎ無い口調だ。
 約束して家路に着いた。電灯の明かりが途絶えて居る所に来ると、手を繋ぎ唇を触れ合うだけの接吻をした。



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テーマ : 自作BL連載小説
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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
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