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「がんじがらめの愛」3章-23

 寂しげな口調に押しかぶせるように、繋いだ手にいっそう力を込めて言った。
「俺も成績対策ではなく、実践のための英語を教わる。だから、一緒に行こう…いや、行ってくれるか」
「………ああ、晃彦がそう言うなら」
「約束だぞ」
 念を押すように言うと少し陰りの有る笑顔で頷いた。
 周囲の人間は皆、景色に注意を向けている事を確かめると、素早く接吻した。
「なっ!」
「誓いのキッスだ」
 慌てて周囲に目を遣る片桐に微笑んだ。
 それからは、帝都の景色をただ手を繋いでずっと見ていた。
 二人で居る。本当はそれだけでいいのかもしれない。
 肉体の悦楽に溺れているわけでもない。ただ、身体を重ねた方が片桐の抱えている不安や苦悩が一時でも忘れられる。
 それに、彼の熱い身体は決して嘘を吐かない。本心を吐露してくれる。勿論自分にも情欲は有ったが、愛情の確認行為としての意味合いの方が大きい気がしていた。
「日没だ」
 彼の声に、彼が見ている方向を見た。赤い色の太陽が海に沈んでいく。残光が海や雲に映え、とても美しい。
 二人で見ているからこそ、余計にその美しさが心に残るのかも知れない。
「そろそろ、屋敷に戻らねば」
 とても残念そうに片桐が言った。
「明日も逢えるか」
 右手の人差し指を唇に当てて彼は頷く。
「いつものようにニコライ堂で。出口の近くに居る」
「分かった」
 そう言って凌雲閣を降りた。つかの間の別離で有る事はお互いに分かっているが、それでも言葉が出なくなる。
 市電に乗ると、勤め人達の帰宅とぶつかった。かなりの混雑だ。自分よりも頭一つ分だけ低い片桐の身体を庇っていた。
 こんな風に全てのものから庇いたいのだが…。勿論、彼は自分の力だけで何でも出来る。勉学も社交も何もかも。
 しかし、庇いたいと思った。出来れば一生涯かけて…己の非力さは分かっているがそれでもなお・・・。
 別れ難い思いを振り切って、各々の屋敷に戻った。
 屋敷に戻ると、いつもは気にしていない使用人達の人間関係を密かに探った。嫡子である自分に、使用人達は本音を決して口にしない。言葉の端々から窺い知るのみだ。
 知る事が出来たのは、キヨとマサの忠誠心は紛れもなく本当で、しかも――自分に取っては最悪な事に――二人は競争心を持ち合わせていないということだ。何でも、加藤家に江戸時代以来仕えて来た二人は仲が良く姉妹の様に加藤家を共に盛り立てて行こうと誓い合っているという。
 では、部屋付きの女中はどうだろうか。

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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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