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「がんじがらめの愛」4章-12

 片桐が驚いたように形の良い眉を上げる。
「そんな目立つ事をして良いのか」
「ロクに食べても居ない最愛の人間の事を放って置けるか」
 頬を瞬時に上気させ絶句した片桐の顔を、優しく笑いながら見詰めた。
「…で、何が食べたい。西洋料理か」
「いや、出来れば和食が良い。」
「鰻はどうだ」
「ああ、大好物だ。滅多に食べないが」
「それでは決まりだな」
 いつもなら学校の規則通りに市電を使うが片桐の体調を慮ってタクシーを止めた。一キロ50銭の車だ。
 運転手に「池之端の『伊豆栄』まで」と告げる。
「晃彦、お前昼御飯は食べたのか」
 ふと気付いたように片桐が聞いて来た。
「いや、食べてない」
「それは悪い事をしたな。食べてくれても構わなかったのに」
「病人の前で食べるのは遠慮した」
 …それにお前の寝顔の方がもっとご馳走だ…と続けたかったが、運転手の手前、言えなかった。
 片桐が腕時計を見て呟いた。
「食事が終わっても時間は有るな」
「どこか行きたい所でも有るのか」
「ああ、華子が恋文を書くために竹下夢二の絵の付いた便箋と封筒を欲しがって居たのを思い出した」
「三條も幸せな人間だな。俺への恋文は普通のノォトだったぞ」
 笑って冷やかす。
「お前は、絵つきの便箋で欲しかったのか」
 片桐もすっかり普段の顔色で苦笑している。
「いや、最愛の人間からならどんな紙でも嬉しいものだ」
「オレもだ。最愛の人間から貰う心遣いは随分心が軽く成るものだと初めて知った」
「そうなら、もっと自分の悩みや考えを書くと好い」
「そうすることにする」
 運転手を憚って婉曲に言って車窓から帝都を眺めている。
 その端整な横顔に見入りながらも、目の下が青い事に気付いた。今日は良く寝たとはいえ、片桐の睡眠時間が足りて居ない事は明らかだ。
 そうかと言って、強情な面も有る彼の事だ。今回の様に倒れなければ救護室には行かないだろうし、屋敷でも安眠出来ないと行って居た。
 自分の屋敷は三日後で無ければ招く事は出来ない。また…三條に頼む事になりそうだ。三條なら二重の意味で頼みやすい。自分の親友であり、婚約式はまだだが内定している結婚相手の兄を粗略には扱わないだろう。
 自分が付いて居れば仮眠くらいは出来るのではないかと思った。片桐は無言だが寛いでいるのは薄く微笑んだ表情で分かる。
 そんな事を考えていると上野不忍池近くの「伊豆栄」に着いた。なるべく人目につかない座敷に上がる。本来なら学生の来る場所ではないが、店員は自分達の制服がどこのものかが分かったらしい。何も言わずに案内してくれた。


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Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
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