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「純愛と妄執に揺れる心」第二章-1

 小学校6年生の日々は毎日が陰鬱だった。冷泉君の家に家庭教師に行く時だけが憩いの場所だ。
 下町は人情が篤いなんて誰が言い出したのだろうと僕は真剣に恨んだ。「ひまわり園」では最低の衣食住は確保されているが、ただそれだけだ。
 直哉兄さんは「中学も小学校と同じだな…しかも、性や薬に興味を持つ年頃なだけに、授業中でもその話で盛り上がって先生の授業が聞けない」
 温和な顔を悔しそうに歪めてそう言っていた。ある夜に問題集の解き合いをしていた時だった。そういえば、小学校でもそうだな…と思い至る。クスリは誰がシンナーをやっているとか、誰が女の子とやったとか…本当かどうかは分からないけれども、自慢げに話している。そのことをお兄さんに話すと、「誰かに自慢したくてネタを探しているんだろうけど…純一」
 直哉兄さんは居ずまいを正す。
「僕のお腹を蹴った、平島が…少年院に入ったそうだ。といっても傷害罪だから直ぐに出所して来るとは思う。それに純一は平島の弟と同じクラスなのだろう。どうやらあの家は父親が暴○団の構成員らしいから気を付けろ」
 お兄さんは、真剣な顔で言う。
「そういえば、町で見かけなくなった、平島のヤツ…それに同級生のほうも『父親が極道だ』って自慢している。皆はそれで恐れ入っているよ。平島の兄さんは、僕が一人で道を歩いている時は口笛を吹いたり、ヘンな声を上げたりしてたり…」
「自慢出来るほどのことではないのが普通なのだけれど、この辺りでは自慢するネタにはなる。純一は狙われやすいから気を付けろ」
「狙われるって…?」
「何だか悪いヤツに目を付けられそうな顔をしているから…。この前の顔で思い知った。純一は冷たい顔も出来るだろう?あの顔は諸刃の剣だ。繊細なガラス細工に似た綺麗な表情だけど、それを踏みにじってみたいと思う人間だってこの辺りにはたくさん居るから。それでなくても綺麗な顔立ちで、『ひまわり園』の女の子も密かに憧れている子がたくさん居るし」
「え?悪いヤツって何をしてくるかな?また根性焼き?」
 あれはとっても痛かった。それとも殴る蹴るの暴行だろうか?でもお兄さんも何回かされている。「施設の子供のクセにその利口ぶった顔が許せない」とかで。
「お兄さんも何回か殴られたり蹴られたりしているよね?あれと同じことをされるのかな?」
 お兄さんがそういう被害に遭うたびに純一の心はとても痛んだ。お兄さんは我慢強いから「大丈夫」っていつも微笑っていたけど。それに、相手も手や足といった人目に付く所には絶対にケガはさせない。お兄さんが蹴られた時に助けてくれた藤田先生は、この学校で唯一不良ぶった児童に恐れられている先生だ。藤田先生にケガの跡を発見されると酷い時は体罰だそうだ。体罰はいけないことかもしれない…ただ、この学校では必要な気もする。けれど、藤田先生に言いつけると倍返しが待っている。僕は「今後手出しはしない」と約束させたメモが有ったので、倍返しはなかったが。
 皆は倍返しが恐くて藤田先生に言いつけることも出来ないらしい。
「純一は、女の子じゃないから大丈夫だと思うけど…」
 女の子でピンと来た。可愛い女の子で両親が無関心な子の場合、レ○プとやらの対象になる場合があると聞いたことがある。でも、僕は男だし関係ないと思っていた。実は大いに関係が有ったのだが。
「純一…何か性的なことをされたら…余計な抵抗はしない方がいい…犬に噛まれたと思ってひたすら耐えろ」
 お兄さんは暗い目をして諭すように言った。
「お兄さんはそういう経験があるの?」
「いや、僕は普通の顔だから大丈夫。ただ施設に居るというだけで暴力の対象になっただけのことだから…」
「じゃあ、僕もきっと大丈夫だよ」
 お兄さんの大人になりかけの整った顔を見て安心させるように笑った。
「そうだと良いけど。それに平野さん…純一と同じクラスなのだろう?」
「そうだよ?言ってなかった?」
「いや、聞いた。彼女は性的なことのターゲットになりやすそうなタイプだから…さり気なく気を配ってやってほしい」
「さり気なくって?」
「不良じみた連中に呼び出されたら、そっと跡を付けてみるとか…」
 平野さんは小学校一年の時にお兄さんが平島のヤツ――兄の方だ――に蹴られている時、僕を体育館まで連れて行ってくれた恩人だ。お兄さんがケガをしていることを藤田先生に伝えようとした時に僕は声を取り戻したというおまけまである。その後、彼女は背も伸びたし、とても綺麗な顔になった。胸も小学生にしては大きい方だろう。僕を見るとにっこり微笑んでくれるけど、小学校一年の時に「バカの平野」と呼ばれていた通りそんなに賢くはない。僕は賢い人が――今のところ、僕が賢いなと思ったのは直哉兄さん一人だ――好きみたいでそんなに関心はない。
「うん、分かった。お兄さんが言うなら、そうする。でも、お兄さんもそんなことをしていたの?」
「ああ、『ひまわり園』の子供がこれ以上心に傷を負わないように…そっと付けて行って、ホントに乱暴されそうな雰囲気ならこっそり引き返して藤田先生か上島先生に報告していた」
 上島先生はケガをしたお兄さんと失語症が治った僕を病院に運んでくれた先生だ。やる気のない先生の中に混じってこの二人だけは特別な先生だ。
「乱暴って…レイ○のこと?」
 お兄さんはもっと暗い顔で頷いた。
「あれはされた女の子に確実に身体にも心にも傷を残す。しかも加害者は面白半分でして罪悪感もないらしい」
 純一には具体的にそれがどういうものかも分かっていなかった。切れ切れにしか性に関する知識もなかった。それもかなり歪曲された噂話でしか入ってこない。また、特に性に関する興味も兆していなかった。
「ふーん。中学校でもそういうのはたくさん有る?」
「あるな…もっと酷い。暴力団と関わりのある生徒が生徒をレイ○して、その場面をビデオに撮って…そのテープをその団体が高値で買うらしい」
「買ってどうするの?」
 お金のことは切実だったのでついつい勉強そっちのけで聞いてしまう。
 冷泉君のママが純一の銀行口座を聞いた時に、25日を待たずにその銀行に行った。お兄さんがそうしろと言ったからだ。カードは純一の手元にあるものの、預金通帳は持っていなかった。お母さんの死のドサクサでどこかへ行ってしまったらしい。お兄さんと銀行へ行き、通帳を発行して貰おうとしたら大人でないと出来ないと言われた。だから機械を操作して残高照会というのをしてみたら、50万円という大金が入っていた。
「純一のお母さんは純一のために預金してくれたお金だよ。これは大切にしないと」
 そうお兄さんに言われていたし、使うアテもないのでそのままにしていた。
家庭教師の真似事をして25日にまた二人で銀行に行った。すると、お金が入金されていた。家庭教師一回につき3千円だった。お兄さんも同じく3千円。お兄さんの方が多いと獏然と思っていたが冷泉君のママは同じ金額を振り込んでいてくれているようだった。二つで割っても端数が出なかったので。この金額の多さにビックリした。お兄さんも驚いていた。ただ、前の家庭教師の先生は1万円が時給だったそうだから、大学を出てもいない上に冷泉君と年の変わらない僕たちにはこれくらいが妥当なのだと思う。
家庭教師の中途解約のことについても学んだ。エステも同じだが、中途解約をすると、上限5万の中途解約金というのを支払わなければならない「特定商取引法」という法律があることもネットで調べた。でも、それ以上に解約金を受け取ったら違法なのに、冷泉君のママは支払ったそうだ。その話を聞いて直哉兄さんは「金持ちケンカせず」ってヤツかなと笑っていた。
「ビデオを裏ルートで売るんだって…。大人の人が見るビデオっていうのがあって…それは法律が認めているのだけれど、厳しい規定があるし、肝心な所は隠さないといけない。けれども、隠しているところを観たいという大人がこっそり高値で買うらしい」
「ああ、施設の先輩達がこっそり観たがっているようなエッチなビデオ?」
「それは18歳になれば合法的に観られるのだけれどもね…。暴力団が絡んでくるのはもっと…全部写っているビデオだそうだ。もちろん法律で禁止されている」
 何が写っているのかは良く分からなかったが、暴力団とは係わり合いになりたくないのでその日はそんな話は打ち切って勉強の教えあいをした。


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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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