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がんじがらめの愛 最終章ー21

 これもまた正装した三條を見送り、バンケットの散歩道とでも表現される意匠を二人して眺めて居た。
「これは、亜米利加人の設計しただけの事は有って、現代的な佇まいだな」
 興味深そうに片桐は言った。自分も同じように考えていたので、頷いた。
 欧羅巴風の優美な曲線では無く、角ばった意匠が特徴的だ。角度が有ると言っても攻撃的な感じでは無く、見る者に安心感を与える稀有な設計だった。大谷石がふんだんに使われて居るのも大理石を見慣れた自分から見れば新鮮な感じがする。二人して眺めてから、三條が教えて呉れた控え室と思しき部屋に向かう、丁度従業員が通りかかったので確認する。三條の教示だけでは心許無かった。間違って入ってしまうと失礼だ。
「左様で御座います」
 従業員は紙片も見ずに即答した。この辺りが帝都のみならず日本一のホテルである事を彷彿とさせる。
 控え室は二人がゆったりと過ごせる程度の大きさだった。
「緊張はしていないか」
 社交界に度々出ていた自分とは違い、片桐は余りこういう場所には慣れて居ない。以前片桐の屋敷で見た、手の震えなどは出て居ないが内心はどう思っているのかは分からない。
「…実は…緊張している。主賓など初めての事だから」
 自分も主賓は初めてだったが、それを言って片桐に余計な精神的負担を掛けさせる積りは無かった。
「緊張しないための御まじないだ」
 そう言って、微かに汗ばんでいる掌を自分の掌と合わせた後、彼の唇に触れる。次第に深く成る口付けに、片桐は、左手でネクタイを緩めてシャツの釦を外していく。
 鎖骨が見える程にシャツをはだけた。意味して居る事は分かるので紅く染まった其処を強く吸った。片桐が満足そうな吐息を吐いて握り合った掌の力が強く成る。
「失礼致します」
 丁重さに溢れた声色だったが、今は状況が悪い。時間稼ぎの意味を持たせて返答する。片桐には早く服装を整えろという視線を送った。
「どなたですか」
「当ホテルの支配人を勤めさせて戴いて居ります島田と申します。ご挨拶に参上致しました」
「申し訳有りませんが少し待って戴けますか」 
 片桐の様子を見ながら返答する。
「勿論で御座います」
 片桐が大丈夫だという視線を送って来たので、待たせるのも気の毒だと思い入室を許可した。
 島田支配人はホテルの従業員らしい慇懃かつ親切そうな男だった。
「当ホテルをお使い下さいまして誠に有り難く存じます。バンケットルームは殆どのお客様がお集まりで御座いますのでその件をお知らせに参りました」
 片桐と自分を交互に見て暗にバンケット・ルームへと誘う様な台詞だった。
 そう言って、少し言葉を選ぶように口を閉ざした後、事務的な口調で言った。
「当ホテルは、お客様に最高のお持て成しをさせて戴きますし、お客様の秘密は何が何でも守らせて戴いて居ります」
 わざと片桐の方を見ないで、自分だけに言った。
 片桐の方を振り返ると、慌てていたせいなのか、第二釦だけが外れていて鎖骨がくっきりと見えていた。勿論、紅く咲いた情痕もちらっと覗いて居る。
 これでは何をしていたのか、島田氏にも分かった筈だ。片桐も不審を感じたらしく自分の身体を見下ろし、幾分頬を紅潮させ、羞恥に満ちたとした顔で釦を留めて居た。自分も動揺していたが、顔には出さずに言った。
「御心遣い感謝します」
「いえいえ、日本、いや東洋一のホテルとしては当たり前の事で御座います。二日間のご滞在が快適なものに成る様に全力で取り組む覚悟で御座いますので、お気づきの際には遠慮なく申しつけ下さい。
 片桐が完璧に元の姿に戻った事を確かめると、島田支配人の後に続いて宴会場に入って行った。
 まずは、人の多さに圧倒された。名簿の倍以上の着飾った人間が居る。殆どが自分達と同じ年代だったが、もう少し上の人間もかなり混じって居る。
 壮麗な石組みの部屋には奥まった席が一つ設けられ、その近くにも同じようなテェブルが有った。
 そして、その前の一番目立つ処に大きなテェブルが有った。そこには花が派手に飾られて居る。他のテェブルにも花は有ったが、この二人掛けのテェブルは一際派手だった。今の時期には珍しい薔薇や、西洋蘭が飾られて居る。
 どなたがお座りになるのだろうか…と思って居ると、島田支配人は事も無げに言った。
「御二人のお席で御座います」
 会場の何処からでも見渡せる事が出来る席に片桐と二人で座れと言う事らしい。
 これは三條の余計な…いや、心遣いだろう。
 仕方なく席に着くと、何処からとも無くベートーベンの第九が流れた。
 音楽までつけたのか…と片桐が小さく呟いた。彼も照れくさそうに着席した。
 すると、音楽が変わり、日本の国歌が演奏された。会場も自分達が現れた時と同じ位にざわめく。絢子様がいらっしゃった。自分達に微笑を含んで会釈すると奥まった席に着席なさった。
 鮎川公爵が進み出て、「皆さん」と呼びかけた。
「畏れ多くも皇后陛下の御意を得て、留学する二人の為に乾杯の音頭を取らせて戴きます」
 その言葉に皆が一斉にグラスを持った。



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応援宜しければお願い致します。あまりBLらしくない小説ですが…本人は一生懸命ですので…。皆様の画像クリックが「更新頑張ろう~!」っと思う原動力です!

 昨日皆様のご要望を承ったところ、内緒コメとオープンコメで色々なご意見を戴きました。この小説は男性の読者様やBLを読んだことがない…といった女性、そしてBL大好き☆な女性と多岐に渡りますので…、検討した結果、「二人だけの夜」は蜜月編とリンクさせ、「残り三話」←本当に三話で終るのだろうかとかなり不安ですぅ。でも24で揃えておきたいという野望は有るので…)は送別会&出港までを書きたいと思います。最後までおき合い下さればとっても光栄です。

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この話(随分長くなりました…)は下記リンクから始まっています。暇で仕方の無い時にでも読んで下されば嬉しいです!!





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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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