スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

がんじがらめの愛 最終章ー23

 二人して席に戻ると、次次に祝いの言葉を述べに来る人達で列が出来る程溢れかえって居た。
 まずは恩人を優先したいので、片桐の耳に囁いた。不自然に成らない様に気を付けて、それでも出来るだけ彼の皮膚に触れる位の近さで。
「列の中ほどに華子嬢が柳原嬢が並んでいらっしゃる。お前の妹なのだから、名指しで呼んでも構わないだろう」
 片桐は頷くと妹を手招きした。案の定華子嬢は柳原嬢と一緒に自分達の近くに寄って来る。
 華子嬢は暫く見ない間に随分と大人びた美しさを備えて居た。これも三條との婚約が決まり、恋愛中だからに違いない。大人びた彼女を見て、「これならシズさんの結婚の件も安心して任せられる」と思った。
「片桐、柳原嬢だ。この度の件でとてもお世話に成った方だ」
 かつて一応知らせて置いたのだが念押しの為に敢えて言った。
「お力に成って戴いて有り難う御座います」
 片桐が満面の笑顔で言うと、彼女は頬を上気させ、恥ずかしそうに袖で顔を覆った。その後、淑やかな声で返事をした。顔は袖に隠れたままだった。
「いえ、片桐様のお役に立てて光栄で御座います。わたくしなどの力は本当に微力で御座いますわ。それよりも、慣れない英吉利暮らしでお体にはくれぐれもお気をつけ下さいませ。もし、お暇が有りましたら絵葉書を送って戴ければとても嬉しいですわ」
「はい、必ず送らせて戴きます」
 律儀な片桐の返事に袖から顔を上げた柳原嬢は頬を上気させ片桐の顔を見詰めた。片桐も笑顔で彼女を見詰めて居る。嫉妬心が無い訳ではないが、片桐の愛情が自分だけに注がれて居るのを知っているだけに、ここは自分の笑顔で居るべきだろうと判断した。本心は自分以外の人間に笑いかける彼を見たくは無いが、片桐は「恩人への感謝の笑顔」を浮かべているだけに過ぎないと理性で感情をねじ伏せた。
「お兄様、お父様とお母様の伝言で御座います。横浜港には見送りに行く予定ですが、御車はこちらのホテルから出して貰えるかどうか確認して、もし出して戴けないのでしたら、我が家の御車を回すとの事ですが…」
「多分、このホテルからの車に乗って行くと思う。後で支配人に聞いてみて、もし無理なら電話をすると母上に伝えて欲しい」
 その会話を聞いて、島田支配人に頼んでみようと思って居る時――出来るだけ二人で居たかったので――
 柳原嬢が真剣な表情で華子嬢に仰って居る。
「横浜港には、わたくしも参りたいです」
「鈴子さんもご一緒にお見送りをして下さるなんて、とても嬉しいですわ。是非ご一緒に」
 華子嬢は親友と一緒に見送る事が出来て嬉しそうだった。片桐も、笑顔で「光栄です」と答えて居る。
 こんな話をしている内にも列は長く成って居た。華子嬢もそれに気付いた様だった。
「では、御二人の英吉利留学、つつがないようにお祈り致して居ります」
 柳原嬢と同時に頭を下げた。
 次に祝いの言葉を述べる人の顔を見た。同級生ではなく、多分先輩だろう。勿論彼も、黒の燕尾服姿だったが、その服装は板についているとは言い難かった。
「二年先輩の田辺だ。この度は誠に目出度い。祝いと忠告に来た。話が長くなるが、構わないだろうか」
 そう言って後ろを振り返った。
 主賓としては出来るだけ多くの人と話したかったが、彼の瞳に真剣さが宿っていたので、気に成った。
「はい。この度はご出席有り難う御座います。お話を承ります」
 片桐も怪訝そうな顔をして居る。
「俺は帝大で国際経済と国際関係を学んでいる。今の日本は経済的にも行き詰まりを見せている上に、いつ戦争が起るか分からない状態だ。その辺りを倫敦大学で客観的に学んで広い視野を持った上で自分達の進路を決めるべきだ。そういう意味ではお前達は幸運だった。何なら、英吉利に永久に住むという選択肢も有る事を忘れないで欲しい。
 お前達が華族の特権を活かして日本に戻って来て学者となるのも良いが、この先、日本経済や政治がどうなるか分からない現状を考えると、日本と同じく貴族制度の有る英吉利に居て研究を進めるのも良いと思う」 
 心からの忠告の様だった。先程は絢子様も同じような事を仰っていたが、実際学んで居る者の言葉は重みが違う。
「有り難う御座います。その点は倫敦大学で学んで、良く考えます」
 片桐も思い当たる節が有るのか深深と頭を下げた。自分は片桐さえ傍に居てくれるので有れば、何処に住んでも構わないし、一時は廃嫡まで覚悟していた身だ。自分の身分に拘泥する気は無い。
 理系を選択する考えに変化は無いが、ここまで皆が危惧している世界経済についても学んでみようと思った。経済学は理系の頭も必要とされると聞いた事がある。片桐も幾何などの理系の成績も良いが、どちらかと言うと文系科目が得意なので、自分も片桐の役に立ちそうだ。
 そんな事を考えながら会場を見回していると、自分が招待した人間と片桐が招待したがった同級生が睦まじげに歓談しているのが見えた。この送別会が切っ掛けで彼らも心理的な壁が取り払われて呉れる事を切に願った。自分の視線の先を片桐も敏感に感じ取ったのか、同じ光景を見ている様だった。ふと、手の甲に片桐の熱を感じる。さり気無く下を向くと彼の手の甲が自分のそれと重なり合っている。多分これは、自分と同じ考えで同級生の不可視の壁を取り払えた事を喜んでいるからに違いないと思った。
 女子部の令嬢と話している同級生も居る。この送別会が切っ掛けで皆が幸せに成れれば良いと思った。
 折りしも、音楽が「皇帝円舞曲」に変わり、ダンスを申し込んでいる同級生が多かった。
 三條が現れ、耳打ちする。
「主賓の座興としてなら疑われない。一緒に踊って来たらどうだ」
 笑顔だったが目は真剣だった。






___________________

    

↑↑
応援宜しければお願い致します。あまりBLらしくない小説ですが…本人は一生懸命ですので…。皆様の画像クリックが「更新頑張ろう~!」っと思う原動力です!

はい、画像クリック有り難う御座いました~~!


___________________





この話(随分長くなりました…)は下記リンクから始まっています。暇で仕方の無い時にでも読んで下されば嬉しいです!!





 体調を心配下さった方、有り難う御座います。元気は元気なのですが、眠くって仕方ありません…。きっと夏場の睡眠不足が、朝晩は過ごしやすくなった今頃になって身体は睡眠を求めているんだと思います。風邪とか病気ではないと思いますので…ご心配をお掛けして申し訳ないです。有り難う御座います!!


スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

FC2ブログランキング
ランキングに参加させて戴いております。ご訪問の際ポチっと。とっても喜びます!!

FC2Blog Ranking

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。