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がんじがらめの愛 最終章ー24

 三條の突飛な提案に絶句して仕舞う。幾ら何でもこの場所で二人してダンスを踊るのは躊躇せざるを得ない。ちらりと横を見ると片桐も唖然とした顔で居た。ダンスが踊れない訳ではないが――多分片桐もそうだろう――流石に男同士で踊るのは如何なものかと思った。拒絶の気持ちが顔に出たのだろう、三條は、絢子様の席に行って、囁いて居る。絢子様の御目が輝いた。三條を伴って自分達の席に静々とお出でに成られた。
「三條様のご提案、とっても素敵ですわ。わたくしからも御願いしたいですわ」
 意味ありげに仰り、片目を瞑られた。そして涼やかな良く通る声を張り上げられた。
「お集まりの皆様、わたくしの座興を主賓が叶えて下さるそうですわ。皆様、拍手でお迎え下さいませね。演奏家の方、もう一度『皇帝円舞曲』をお願い致しますわ」
 絢子様に逆らえる人間などこの場所には居ない。
 ここは腹を括って踊るしか無さそうだった。自分と片桐では身長差から言っても自分が男性側のステップを踏むのが妥当だろう。片桐も呆然としていたが、主賓の義務だと割り切ったのだろう。一度目を瞑ると大きな声で言った。
「ダンスは不得手ですので、座興には成るかと思います。皆様には楽しんで貰いたいので――下手でもご愛嬌という事でお願いします」
 温かな拍手が湧き起こった。仕方が無いので、「踊って戴けますか」と言い、手を差し伸べた。片桐は顔を引き攣らせたまま、「光栄です」とその手を取った。
 ダンスが行われて居る中央部までエスコォトして行く。その間にそっと囁いた。
「女性用のステップは踏めるのか」
「した事は無いが…何とかなるだろう…」
 今までダンスに興じていた出席者達も主賓に遠慮し、見物に回る様にした様だ。広い空間が出来る。片桐の片手を握り、もう片方の手は彼の細い腰に回す。それを合図にしたかのように楽団が音楽を奏で出す。
 初めて女性のステップを踏んだとは思えない片桐のダンスだった。
 不自然に成らない様に密着し踊ると、女子部の生徒だろうが溜息や控えめな声援が聞こえた。男性は拍手で応援して呉れている。
 片桐の細い腰に手を回して踊って居ると、片桐が耳元で囁く。
「公の場所でこんなにも晃彦と密着出来るとは思って居なかった」
 曲が終ると、盛大な拍手だった。どうやら好評だったらしい。
 三條が笑顔で皆に報告して居る。
「この会も好評の内にお開きにする事が出来そうです。お集まりの皆様有り難う御座いました。出港は二日後です。二人の留学生活が実り有る事を祈っています」
 そう宣言すると、学友達が集まって来て、口々に励ましの言葉を呉れた。この送別会で意気投合したらしい、今までは隔てを持って接して来た学友たちも一緒に来て挨拶をしてくれた。絢子様は「道中つつがなく、そして留学先では御睦み下さいね」と片目を閉じて挨拶しお帰りに成った。
 二日後、ホテルが手配した自動車に乗って横浜港に向かった。二人とも睡眠不足だったので、車内では片桐が自分の肩に凭れてうたた寝をして居る。
 横浜港に着くと、片桐をそっと起こし、乗船予定の船に近付く。予想以上に大きな船だった。港には家族は勿論の事、恩師や友人、両家の親戚や縁者が集まって居た。
 挨拶する相手が違うので自然と別れる。まずは両親に挨拶をと思い、両親に別れの言葉を述べた。母は涙ぐみ、自分を人気の無い所にと誘った。
「晃彦さんが心行くまで学んで帰国する事を一日千秋の思いで待って居ます。それと、これは餞別ですわ」
 そう言って、革袋を取り出した。
「開けて良いでしょうか」
 頷くのを待って開けて見た。そこには最低10個のダイアモンドやルビーの首飾りなどが入って居た。値段が張る物なのは見たら分かる。
「こんなに…」
 驚いて母を見る。
「今までのお詫びと、英吉利で手元如意に成った時には現金に変えて下さい」
 自分も未踏の国だ。現金が無くなるかも知れないので有り難く戴いた。最悪の事態に成らなければこの宝石類は母に返そうと思った。
 その後は、挨拶を受けるだけにして、出港の時間を待った。
 ふと、片桐の方を見ると、片桐伯爵や夫人、華子嬢に囲まれて居る。勿論柳原嬢もいらっしゃった。片桐伯爵は使用人に支えられていたが、それ以外はお元気そうだった。
 その背後には親戚や旧家臣と思しき人達が挨拶の出番を待って居る。自分も似た様な状況だったが。そこに自分の母も居た。意外にも片桐夫人と親密そうに話して居るのが嬉しかった。
 なるべく1人と話しをしようとしていたが、乗船時間が迫っているという合図の汽笛が鳴った。あたかも自分達の乗船を寿いでいるかの様だった。
片桐の傍に行き囁いた。
「そろそろ行くか」
「ああ」
 そう言ってから、「お見送り有り難う御座います。有意義な留学にすべく、頑張って参ります。港まで来て戴いて有り難う御座います」
 大声で言った。
 片桐も1人1人に頭を下げている。
 二人の前途を祝福するかの様に空には雲ひとつ無い晴天だった。
「では、乗船しよう」
「ああ、留学は楽しみな様な、不安な様な気がする。ただ晃彦とずっと一緒に居られるのがとても幸せだ」
 片桐は一点の曇りもない、今日の空の様な微笑を浮かべた。
                                    本編 了



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この話(随分長くなりました…)は下記リンクから始まっています。暇で仕方の無い時にでも読んで下されば嬉しいです!!







 一応、本編は終りましたが、「ホテルでの出来事編」「蜜月編」が待っていますので、
終ったという感じにはなりませんね。「ホテルでの」も「蜜月編」も性描写が入るので(でも、私の筆力ですから…そうハードなものは書けません><)
ただ、苦手な方はスルーお願い致しますぅ。


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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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