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がんじがらめの愛 蜜月編ー13

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 片桐の関心は常に平民で、貧しい暮らしを余儀無くされている人に有る。それが分かっているから三等のデッキへとまず行こうとしたが、特等のデッキから開けられるのはまず二等のデッキへと続く金網のドアだった。開けると、特等とは違って庶民の活気が有る。皆、白いシャツに糊の効いたシャツにズボンと言った姿だった。日本人の割合はかなり多いだろう。外国人も散見するが、特等と比べれば比率が全く違う。やはりこの船は横浜発の日本の外国航路船だけあって日本人の男性が多い様だ。商人らしい――いや、この場合は貿易商だろう――貿易会社の社長や社員が多い様に見受けられる。
 片桐も真剣な面持ちで彼らを見ている。
 肘でそっとつつき囁いた。
「先に三等デッキまで行くか」
 片桐が答える前に気さくな感じの中年男性が話しかけて来た。
「お前達は随分若いなぁ。その年で会社から任されているのか」
 邪気の無い笑顔に、曖昧な笑顔を返す。
「と言う事は、英語は話せるのかよ」
 本当の事を言う事も出来なかったので困っていると、片桐が助け舟を出して呉れた。
「外国に憧れて小さな貿易商に入りました。勿論最初は訳も分からず手伝って居ましたが、何となく英語が分かって来たので、上司が驚いて教えてくれました。それから社長も英語塾に通わせて下さいました。大体の言葉なら分かりますが、早口になるとさっぱり分かりません」
「な」とばかりに彼の眸は自分に向かっている。
「そうです。で、これが初の英吉利行きです」
 慌てて調子を合わせた。
 男は煙草を出し、「吸うかい」と聞いた。二人とも喫煙の経験は無いので謝絶した。その様子を見ていた片桐は、ちらりと笑みを零し商人に話しかけた。
「輸出ですよね…何を輸出するのですか」 
「お、お前達は江戸っ子だねぇ。しかも本当は小さな貿易商で働いているとは思えねぇ話っぷりだ。きっと大きな会社なんだろうなぁ」
――話し方が丁寧過ぎたのだろうかと思った――山の手言葉と下町言葉が有る位は知っている。
「いえ、これも社長に躾けられました。すっかりこちらの方に慣れてしまって…」
 片桐が臆する事も無く言った。
「そりゃ、立派な社長さんだよなぁ。あ、そうか、輸出の話な…」
 煙草の煙を美味しそうに吐き出しながら話し続ける。
「ウチの会社、本当は貿易商じゃねぇ。お面作りの会社なんだ」
「お面…と言うと、盆踊りなどで被る物ですか」
 片桐が興味深そうに聞いた。
「そうそう、そこに英吉利人から注文が殺到してな、それなら向こうで売った方が早いと社長が判断したわけだ」
「どんなお面なんですか」
 こういった話も片桐は大好きだ。彼の気の済むまで話させようとだんまりを決め込む。
「最初、注文が来たのは天狗のお面だ。それもびっくりするぐらいの発注数だったんで工場はてんてこ舞いだったんだ。で、それから曲がりなりにも英語が少し出来る俺が見込まれて現地に売りに行けという事になっちまった。天狗や「おかめ」や「ひょっとこ」なんかが船の倉庫には沢山有るんだぜ」
 しばらく考えていた片桐は、商人には気付かれない様に気の毒な表情を浮かべて居た。自分が片桐の唇や瞳などをずっと凝視していたからこそ分かる変化だった。
「商売繁盛を祈ります」
「おおよ、そっちもな、若いからってなめられるんじゃねぇぞ」
 気の良い商人は、煙草を持った手で挨拶した。
「晃彦、煙草を買おう」
 唐突な言葉に驚いた。自分も彼も嗜まないのに、何故。
「煙草を勧める仕草、あれは親愛の挨拶代わりなのだ。だからこちらから煙草を差し出せば話して呉れる人が増える」
 デッキですれ違った男に売店の場所を聞く。直ぐに教えて呉れた男に礼を行って、一番高い煙草とマッチを手に入れた。
 それからデッキへ戻り、暇そうにしている商人に煙草を勧め、色々な話を聞いた。日本の物…特に陶磁器や浮世絵がまだ人気が高い事などを知る。
 皆、英吉利で一儲けしようと思っているのかおおむね陽気で話しやすい人達だった。ただ商人は愛想の良いものと決まっているので、片桐が勧めた高価な煙草のせいの相乗効果でいつもより饒舌に話してくれたのだろう。
 二等デッキを大体回ったらそろそろ昼食の時間になって居た。
「昼食を摂ってからまた来るか」
「いや、一旦戻って、正装に着替えて食事して、またこの格好でこのデッキを歩くと、嘘がばれるかもしれない」
 確かにそうだ。自分達――主に話していたのは片桐だったが――相手の詮索に適当な事を答えていた。その数は20人位だろうか。全ての嘘を覚えて居なかった。
「昼食食べたいか…」
 片桐が心配そうに聞いて来る。いつもと違う環境の中に居たので緊張したのだろうか、それ程空腹では無かった。
「それよりも、お前を食べたい」
 揶揄気味に囁いた。片桐は、刹那の間瞳を泳がせた。おもむろに彼に腕を掴まれてつられて歩き出した。
 連れて来られたのは、人気の無いデッキの隅だった。彼は辺りを見回してから、抱きついてきた。僅かに背伸びをして唇を重ねて呉れる。彼の腰に両手を回すと、昨夜の交情で敏感になったのか切なげな表情を浮かべた。そのまま背骨に向かってゆっくりと撫で上げる。唇が少しずれて切なげな吐息を漏らした。その口を逃せじと唇で覆った。辺りに人が居ないか確かめながら。
――彼のこんな顔は誰にも見せたくない――
 彼の舌を味わってから唇を離す。片桐は脱力したように凭れかかって来た。幸い、人は来ない。背筋を撫でて彼の呼吸が回復するのを待った。彼も背中に手を回して呉れる。
「昼食分はこれだけで充分だ」
 耳元で囁くと、小さな声が聞こえた。何を言ったか聞き取れなかったので、耳を近づけた。
「ニコライ堂でも思ったが、昼間からこういう事をすると…」
 一瞬黙り込み、意を決した様に言った。

「とても感じる」
 その一言で抱き締める力が思わず強く成った。しかし、片桐は唇を弛めたまま他の事を言い出した。
「最初に会った商人な、天狗のお面は売れるだろうが、他は日本に持って帰るか二束三文の値段で売り飛ばすしかないだろうな。英吉利の蚤の市かどこかで」
「何故だ」
 力の緩んだ隙に片桐は端整な顔に極上の笑みを浮かべて腕からすり抜けた。
「晃彦がオレの考えている答えを当てたら、今夜、晃彦の思い通りの事をする」
 そう告げる彼の睫毛が強い日光のせいで肌に影を作る様子を呆然と見ていた。


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 今日のちょっとしたナゾなんですが、とある推理小説からヒント戴きました。ヒントと言っても「殆どそのまんま」かも…。こういうことを自分で考えないといけないのでしょうが…。解答が分かった方、あ、その元ネタ知ってるって方は、内緒コメでお願いします~!
 私が内緒コメ、内緒コメと連呼するので、オープンコメが更に減ってしまいました←自業自得です…ね。
 オブライエンはその内出します。
 内緒コメで映画「タイタニック」の名場面(船首の場面)が有ると期待した方もいらっしゃいましたが、、流石にそんな恥ずかしいことはしないと思われます。

 最後まで読んで下さいまして有り難う御座います!感謝を込めて!!
 ブログ村も本当に有り難う御座います!!


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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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