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がんじがらめの愛 続 蜜月編ー24

 翌朝はドアのノックの音で目覚めた。
 横には満ち足りた表情の片桐の寝顔が有った。いつの間にか腕枕をしていた様でしびれて居る。しかし、それよりも感じたのは彼の体内に留まっているものだった。心地よく締め付けていてくれる。
 彼は当然、無理な体勢で眠っていたに違いない。
 昨夜はお互いが本能のままに振舞ったので、今朝はそのツケが特に彼に振りかかっているのでは無いかと案じられた。
 一晩繋がっていた部分をそっと抜き出す。眠りの国に居る片桐の無意識の動作だろうが、惜しむような動きを見せてくれた。
 その後彼の目蓋が開く。自分の姿を認めると、無邪気ながらも色香を纏っている微笑みを浮かべた。
「お早う。身体は辛くないか」
 唇を奪ってから聞いた。
「ああ、多分大丈夫だ」
 そう言っては居るが、少し動きが緩慢だった。
 昨夜は二人の行為における彼のダメージが気に成った。
「午前中はベッドの中で休んでおく方が良いな」
 眉間にしわを寄せてアドバイスすると、彼も矢張り辛いのだろう、黙って頷いた。
「部屋に食事を運んで貰おう」
 彼の今の姿を誰にも見せたくないので、ダイニングに行き部屋に運んで貰える様に頼んで来た。食事が運ばれて来ると扉の近くで受け取り、食事は寝室に自分で運んだ。
 彼はベッドに半身を起こしたが、いつもの機敏さは無かった。
「食べられるか」
 そう言ってベットサイドにあるテーブルに朝食を二人分置いた。
「大丈夫だ。食べる事くらい自分で出来る。それにこの様な事になったのはオレが望んだ事でもあるし・・・」
 彼らしい潔さの発言と共に、そうふわりと微笑むと食べ始めた。自分も倣う。食事が済むと、彼を無理やりベッドに押し込んで、念の為鎮痛剤を口移しに飲ました。自分はベットサイドで倫敦大学の講義内容についての案内書を読みながら彼の様子を窺っていた。
 特に言葉の無い時間が流れる。触れ合うのも良いが、こうした静謐で親密な時間も悪く無いと思ってしまう。
 昼食の時間が来たので彼に尋ねた。
「昼食も部屋に運んで貰うか」
「いや、もう大丈夫だからダイニングへ行こう」
 部屋から出る為に身なりを整える。尤もネクタイだけはまだ結べる様になっていないので彼に手伝ってもらう。片桐は平常と変わりの無い動作だった。自分に心配を掛けたくないためにそう振舞っているのでは…と危惧したが、どうもその様な感じでもない。午前中寝ていた事が効果を発揮したのだろうか。

 ダイニングに行くと、ウイリアム元侯爵と出会った。彼は早速特等に移って来たらしい。
 丁重な挨拶をすると、あたかも孫に対するような微笑を浮かべて呉れた。
「君達を驚かす為に少し悪戯をさせて貰った」
 同じテーブルに着くように促した後、含み笑いをする。
「何ですか」
「いずれ分かるだろう」
 そんな会話を交わしていると、オブライエンが通りかかった。ウイリアム侯を恐れるように丁重な挨拶をし、そそくさと離れた席に座る。金輪際、自分達とは関わり合いに成らない積りなのが態度で分かる。
 三人で英吉利の事などを話していると、ダイニングの入り口に林親子の姿が見えた。美鈴の母親も一緒だった。
「何故、ここに」
 片桐が呟くと、ウイリアム侯爵が会心の笑みを浮かべた。
「フィニシングの礼も兼ねて、特等に部屋変えして貰う様に船長に口添えしたのだ。彼らも、君たちと話したがっていたからな」
 確かに英国人上流社会でこの人有りと有名な彼の言う事を無碍に断れる日本人は居ないだろう。その人に偶然にも気に入られた自分達は、英吉利に行っても相談先が一つ増えた事になる。
 美鈴は心の底から嬉しそうな顔をして、片桐に挨拶をした後で、自分に向かって言った。
「勝ったと聞いたわ。おめでとう」
 隣で林氏も満足げに笑っている。
 椅子から立ち上がり、深深と頭を下げた。
「特訓の賜物です。感謝致します。これからも宜しければ、ご指南をお願いしたいのですが」
 その様子をウイリアム侯爵が満足そうに見ているのが分かった。
「どう致しまして。これからも指南しても良いのですか」
「ええ、片桐共々お教え戴ければと思って居ります」
 会話を続けているとウイリアム侯爵が片桐にこっそりと何かを囁いている姿が目に入った。
「御蔭様で二等の料金で特等に移れましたし、指南のし甲斐があります。喜んで」
「こちらに移れたのは、ウイリアム侯爵の計らいですので、私がしたわけでは…」
「いえいえ、これも日本語で言う何かの縁でしょう。これからも色々と宜しくお願い致します。お二方やウイリアム侯爵とお近づきになれた事はこちらにとって誠に光栄です」
 彼らとの船中生活は充実したものになりそうだ。
 そして、ウイリアム侯爵の御蔭で英吉利に行ってもマナァなどで恥をかくことなく過ごせるだろう。
 先ほど見た侯爵と片桐との会話が気に成ったが、林親子と別れてテーブルに着き昼食を再開した。
 ウイリアム侯爵は日本での華族社会にいたく興味を示した。知る限りの事を述べていると、昼食が終る。
 ウイリアム侯爵に挨拶をし、林親子のテーブルでお茶を飲んでから二人して船室に戻る。
 片桐は穏やかな微笑を浮かべて居る。その隣にずっと居る事が出来る事を神にでも祈りたい気持ちになる。
 鍵当番は片桐だったので、鍵を開ける片桐の細い指先に指先を重ねる。他愛の無い接触もまた良いものだ。
 船室に入って、彼の細い腰を引き寄せ口付けをする。二人して空気を分け合う事がこの上無く貴重な時間に思える。
「さっき、ウイリアム侯爵はお前に何を」
 名残惜しげに唇を離して言うと、片桐は満足そうな吐息を漏らして言った。
「晃彦は『英吉利に来ても本当の貴族社会に馴染める事の出来る人間だ。特権階級で有る事で人も無げな振る舞いをするような成り上がりとは違う。私は助力を惜しまない』と言っていらした」
 そのような信頼を得たとは思いも寄らない事だったので唖然としたが、素直に喜んで良いものか、些か疑問だった。
「ああいう態度はお前に学んだ。ウイリアム侯爵はその経緯をご存知ではないからそう思われただけだ」
 思ったままを口にすると、片桐ははにかんだように笑った。
「オレが何をしようと、晃彦が変わらなければと思わないと変化は無い筈だから…。晃彦がオレに影響を受けてくれた事は素直に嬉しい」
 彼の言う事は尤もだが、片桐の行動や考えに共感したからこそ彼を愛するようになった側面も有る。
 彼を良く知りたいと思って居た頃、親友の三條に「片桐のような人間と付き合うのはお前に取っては良い事だ」というような意味の事を言われたが、三條はそういう意味で言ったのだろうと今更ながら懐かしく思い出された。
 日本の事は恋しいが、新しい世界に彼と二人きりで踏み出した事により自分が少しは成長したのかと思った。
 これからも色々有るに違いないが、彼が傍に居てくれる限り、自分は世界で一番幸せな人間に違いないと全身が震える様な感動を覚えた。
「ずっと一緒に居よう」
 片桐が自分の気持ちを代弁して呉れた。
「ああ、ずっと一緒だ」
 彼の掌に口付けし、誓うように言った。
                                -了ー

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 本編は下記リンクから始まっています。暇で暇で仕方の無い時にでも読んで下されば嬉しいです!!







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 風邪で、数日お休みを戴き、申し訳ありませんでした!
 この小説もどきはこれで終了です。自分の頭の中にあるものを文字にして伝えることの難しさを知った作品でもあり、また、愛着もある作品ですので、(結構、リクエストも多かったですし)倫敦編は、資料をぽつりぽつりと集めて書いてみたいと思っていますが、いつになるのかは分からないという…。
 次は、一部(だろう、多分)の方からお待ち戴いている医学部教授と研修医のお話を書いてみたいと思っております。
 お暇なら、お付き合い下されば嬉しいです。

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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