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「がんじがらめの愛」第三章-2

 (誰かが居る)
 そう思って、身体を硬くした。使用人ではないだろう。使用人がこんな高価な香水を身に纏っているわけがない。
 この場所は三條屋敷の豪華な庭園の中で一番目立たない。そこまで来る人間はそうそう居ないだろう。
 片桐も、自分の身体が強張ったのを感じたのだろう。不思議そうに顔を見て居る。彼は抱擁に夢中で何時ものような精神の鋭さには欠けているようだった。視線を動かして、誰が居たのかを確認する。一番危惧されたのは自分の母だった。この場面を見られる事は有ってはならない。
 片桐も自分に倣って視線を動かした。ただ、まだ抱き合って居る状態だった。幾つもの思考が瞬時に交錯した為、身体を離すという所までは考えが及ばなかった。

 そこに佇んで居たのは絢子様だった。
「覗き見などする積もりは御座いませんでしたのよ。片桐様が御退席遊ばしたので、お話しがしたかったのですわ」
 そう仰って、寂しげに微笑んだ。しかし、瞳に浮かんでいる表情は自分には分からなかった。
 二人は固唾を飲んで絢子様のお言葉を待つ。
「片恋の御相手がいらっしゃる事は片桐様から伺って居りました。でも、華子さんから聞くとそのような方はいらっしゃらないようだとも聞いて居りました。ですから、方便だと思ったのです、わたくしは。でしたら機会が御座いますでしょ。この園遊会に招待され、招待客の御名前を三條様から伺った時に、片桐様が御出席されるとの由でしたので、参りました。御二人のご様子を偶然とはいえ、拝見致してしまいました。片桐様は加藤様が御好きなのですわね」
 片桐は、斜め下に視線を向けている。思わず言ってしまった。
「片桐君を好きになったのは私です、絢子様。私が無理矢理自分の想いを通してしまいました。ですから、この件は、私に全責任が有ります。御不興は私が背負います」
 絢子様の言動次第では、我が加藤家には確実にこの件は漏れるだろう。社交を控えている片桐家まで噂が広まるかどうかは分からないが。
 それでも構わないと判断した。これで彼を失う事になるかも知れない。その事だけが…苦しい。片桐と引き離されるかも…と、そう思った。もし、そういう事態になれば、彼に強い恋情を抱いているだけに、喪失感は計り知れないだろう。
 片桐の視線が上がり、絢子様を見詰めた。
「いえ、私がずっと片恋していたのです。それを加藤君が受け入れて呉れただけです。絢子様のお申し出は大変忝く思っていますが、加藤君の件はどうしても諦める事が出来なかったのは私のせいです。御軽蔑なさいますか、この関係を」
 静かに言った。絢子様の思慮深い瞳が、複雑に揺れた。
「わたくしは、自由に恋愛など出来ませんもの。学校を卒業したら…もしかしたら其の前かも知れませんがフィアンセが決まり、否応無く嫁がされるでしょう。大陸に嫁ぐかも知れませんわ。…その前に自由恋愛をしたかったのです。それが片桐様ですわ」
 そう仰って、紅色の口を噤んだ。緑色の単の振袖に合わせた翡翠の簪が彼女の頭に飾ってある。其の簪が揺れた。
 暫く唇が悔しそうに閉ざされた。敵意とも決意とも取れない表情をしてこう仰った。

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
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著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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