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「がんじがらめの愛」第二章-22

 名残り惜しそうな片桐と、華子嬢を先頭に使用人達が並ぶ。丁重な辞去の挨拶をして片桐邸を出た。徒歩で屋敷まで帰る。近い事もあったが、片桐家の自動車も自分達の階級の例に漏れず家紋入りだ。その車に乗って帰るわけには行かない。
 正直、御親と顔を合わせるのは避けたかった。家族も確かに大切だが、自分に取ってそれ以上に大切な人が出来たのだから。しかも、あれほど深く熱く情熱を交し合った直後だ。平静な顔をする事には慣れているが、今夜ばかりは繕えるかどうか分からない。特に母は目敏い。出来るならば、顔を合わせたくはなかった。


 この恋が露見すれば、俺ばかりでなく片桐も破滅してしまう。


 覚悟は出来ていたが、露見しないように振舞うのが得策だろう。もう片桐を離したくない。失うことなど考えられなかった。
 屋敷に着いた時、安堵の溜息が出た。明かりは半分に落とされている。これは主人夫婦が寝室に入ったという事だ。女中頭であり、執事の役目もしているマサは起きては居るだろうが、彼女の目は誤魔化せる自信は有った。マサを始めとする使用人達に迎えられて部屋に入った。
「疲れているので、一人にして欲しい」
 そう言って、自分付きの女中も遠ざけた。マサも特に何も気付かなかったようだった。
 勉強用に使用しているデスクに向かう。通知表は父兄に送付されるので、成績を落とすことは出来ない。もし、成績が落ちたら母などは大騒ぎして家庭教師を探すだろう。英語の先生は片桐と同じなので続けるつもりだった。しかし、これ以上家庭教師を増やされると自由な時間が取れなくなる。
 机に向かって居る間は集中して学業に取り組んだが、眠る準備を整えて寝台に横たわると、色々な事が脳裏を横切る。
 家族の誰にも気付かれずに彼との逢瀬を続けるにはどうすればいいか。お互いの家が敵視している以上は迂闊な事は出来ない。
 六日間は、片桐伯爵夫妻が不在なので、自分が訪ねて行けば良い。華子嬢もおおよその事は分かって下さったのは有り難い。問題はその後だ。自分の屋敷には両親が社交などで不在がちだが、マサを始め社交の付き添いをしている使用人は数人居る。片桐の顔を知っている使用人も居るかも知れない。
 学校でも、噂になれば誰かが他意は無くても漏らすかもしれない。社交界は狭い。学校や社交場で密やかに取り沙汰されて、どこからともなく噂が広まるかも知れない。屋敷の使用人達にも噂が伝播するかもしれない。
 三條以外に相談する相手は居ない…な。
 覚悟はしていたが、自分達を取り巻く状況はあまりにも過酷だ。しかし、諦める気には全くなれなかった。
 今日の片桐の姿が不意に浮かんだ。彼のしなやかな肢体、恥ずかしげに振舞う仕草、羞恥に染まった顔、そして自分を呼ぶ声。ふっくらとした唇の感触や、握り締めた細い指の感触。
 思い出すと止まらなくなった。身体の中心が熱を帯びたのを自覚して、ほろ苦く笑うと、浴室に入った。湯は冷めていたが、丁度良かった。熱を冷まそうと努力した。
 熱を冷まして寝台に入った。通常よりも遅く就寝したせいか、自分付きの女中の大きな声がするまで目が覚めなかった。
 慌てて柱時計を見ると、朝食を摂っている余裕のない時間だった。朝食よりも、片桐の顔が見たい。そう思って、父母になおざりな挨拶をして車で学校に急いだ。
 予鈴を聞きながら校門を潜る。どうにか間に合った。慌てて自分の教室に入って行くと、片桐と目が合った。彼は一瞬だけ微笑み、その後冷たく視線を逸らせた。
 <学校では話し掛けるな、と言う事だな>
 そう思った。彼も昨夜自分と同じような事を考えたのだろう。慌てて着席した。その瞬間、始業を伝えるチャイムが鳴った。

 
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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
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