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「気分は、下克上」スピンオフ。「長岡先生は見た?」



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 「パーク・ハイアット東京」最上階のバーの上席で、いつものように婚約者岩松とのデートを楽しんでいた。
「何でもLAのノーザンクロス病院に物凄い手技を持った日本人外科医が居るらしい」
 ロマネ・コンティの豊饒な香りを楽しみながら岩松は言った。彼は世界中の医師の動向に詳しい。自分の病院をもっと充実させるための情報収集に抜かりはないようだ。
「そう…それは素晴らしいわね」
 大振りのワイングラスの縁に付いた新色だという触れ込みの口紅をそっと拭き取りながら「物凄い手技を持った」というフレーズに心を惹かれる。
 内科医として二年目、岩松と内々の婚約を交わしたのは先ほどのことだった。
 彼のことを熱烈に愛しているというわけではなかったが、一生を共に過ごす相手としては性格も相性も多分良いと思う。父母も賛成してくれていた。問題は岩松が大病院の御曹司で次期院長に決まっているため、次々と縁談が舞い込んで来ている点にあった。「婚約者がいるので」という断り文句が言えない相手からもそういう話が来ているらしい。彼は言葉を濁すが察するところ大物政治家の令嬢などのようだった。
「君と絶対に結婚する。それは何に誓ってもいい。だが、今婚約は出来ない。分かってくれ」
 精悍な顔に苦渋の表情を浮かべて岩松は言った。それは別に構わなかった。まだまだ医師としては半人前だし、今すぐ結婚したいわけでもなかったから。
 メルセデスで送ってくれた岩松とマンションの前で別れた。このマンションは大学に入った時から使っている。岩松の病院と比較するべくもないが長岡美樹子の父も病院を経営している。纏まった金額が貯まるとマンションや土地を投資用に購入していた。バブルの頃はあまりの土地の高騰振りに持っていた土地を逆に売り、現金に換えていた。それが幸いしてバブルが崩壊しても逆に貯金が増えたのだから幸運な人間だと言えるだろう。そして新しく買ったマンションの一室を「勉強用に」と美樹子に使わせてくれている。4LDKだが間取りはたっぷりとある部屋だった。自分1人が住むには広いと感じることもあったが、狭い部屋は落ち着かない。
 母が気に入っている店の一つで買ったバックから鍵を取り出す。留め金が外側に付いていて、開けるには非常に手間のかかるし、重いバックだったが形と発色は気に入っていた。
 部屋を飾る趣味はなかったので、化粧を落とし室内着に着替えると百貨店で適当に購入したソファーに座った。エビアンを大振りのグラスに注いで、先ほど聞いた話を思い出す。
 優秀な外科医…。それは美樹子の尊敬の対象だった。滅多に同業者を褒めない彼がそう言うのだから本当に手技は群を抜いているに違いない。
 医学部時代、手技が関係する講義は本当に苦手だった。解剖実習の時は、正中線――身体、正面の線のことだ――を胸から臍の辺りまで真っ直ぐにメスを入れたつもりが臍ではなく20センチもずらして切り裂いてしまった。解剖は献体を申し出てくれた善意の方のご遺体だから教官は烈火のごとく怒った。自分が不器用だと自覚していたのでうなだれるしかなかった。教官は最後に呆れたように首を振ってこう付け加えた。
「偏差値だけで間違って入って来る人間は毎年存在する…。長岡君もその内の1人だが、医師としての適正は有るのが救いだ。ただし、外科以外の道に進みたまえ。くれぐれもそのことを肝に銘じるように」
 最後の言葉はエコーがかかって聞こえた。それほど強く発音しているのだろう。神託を告げる預言者のように重々しい発言にコクコクと強く頷く。
 講義では内科が一番気に入っていたので、内科医になることに決めた。今は都内の病院勤務だが、岩松からは自分の代になってからは内科部長となって欲しいと言われている。 そのためにも、アメリカに行って最先端の技術を学びたかった。幸い岩松も賛成してくれている。
「ロサンジェルスのノーザンクロス病院…」か。
 その病院に勤務してその外科の先生の手技が見たいと思った。さぞかし職人気質の気難しい無骨な医師だろうと思ったが、手技と人間は別だ。
 岩松のコネクションは世界中に張り巡らされている。希望すれば勤務出来そうだ。
 早速自分の希望を伝えると岩松も、そして実家の父も賛成してくれた。先方からもOKの返事を貰った。
 勇躍渡米し、ケンという内科医が上司となった。彼は日系人だったが、性格はアメリカ人らしく陽気で冗談が上手い人だった。こちらに来て驚いたことは手術の直前まで担当患者の内科的アプローチを最後までこなすということだった。日本では、手術が決まれば外科送りとなり、外科医に任されるのが常識だったからだ。
 ケンから日本人医師の名前を聞いた。「サトシ・カガワ」今では病院一の執刀医らしい。この病院で一番ということはアメリカ一と同義語だ。会ってみたいと思った。
 ケンに頼むと気軽に承諾してくれた。どんな変人が出て来ても、気取った鼻持ちならない人間が出て来ても、チビハゲデブの三重苦の人間でも驚かない積りだった。手技が素晴らしいという一点で、どんな人間的欠点も霞んでしまう。美樹子にとっては。
 初対面の日、顔を合わせて内心驚いた。すらりとした長身の優しげな風貌の持ち主だったので。別に自分のことを特別だとは思ってないらしく、丁寧語で話してくれる。同級生にも先輩にもこんな優しい感じの人は居なかった。そしてこれほど整った繊細な容貌の持ち主も。
 才能があるのにそれを鼻にかけない人格に、すっかり尊敬の念を抱いてしまい、ツイツイ自分の悩みである不器用なコトを打ち明けていた。香川先生は少し驚いたように目を見開く。まるで異星人を見るような目つきだったが、その澄んだ瞳と睫毛の長さに見惚れてしまった。が、先生に対しては畏れ多いといった気持ちの方が強かった。
 その後、診療室に連れて行かれて、治療方針についてのテストめいたことが行われた。尊敬すべき人物を失望させたくなくて必死に答えた。薄紅色の唇を満足げに弛めた香川先生に心底安堵した。

 気が付くと、香川先生は自分をよく使ってくれるようになっていた。先生が万全の態勢で手術が行える処方を考えるのは大変ではあったが、充実していた。そして、手術の画像を見て、ますます畏敬の念が深まった。異性として意識するのではなく、まるで神に対するような気持ちだった。 
 病院内でもナースなどは香川先生のことは狙っている人は多かった。事実美樹子も「橋渡しをしてくれないか」と頼まれたことが度々有った。けれども、そういう話題を出してはならないような気がしたのでことごとく断っていた。
 それに好きな人がいると本人の口からハッキリ聞いた今、そういうことはしてはならないようなそんな雰囲気だった。
 そんな時、先生から日本の大学に招聘されていると聞いた。最初は自分の母校だった。先生も相談してみただけ…といった雰囲気なので率直に自分の意見を伝えた。
 次は先生の母校だった。こちらの話は何となく先生の態度に違和感を覚えた。外科医らしく即断即決の先生の瞳が戸惑いに揺れているように感じた。あちらの大学は自由なことで知られている。賛成すると、信じられないことに自分もスタッフの1人として推薦してくれるという話だった。
 アメリカの生活には取り立てて不満はなかったが、そろそろ日本にも帰ってみたいな…とも思う。先生のスタッフとして帰国するなら願ってもない話だった。京都住まいになるが、東京と京都では岩松の持っているペリコプターだとそんなに時間はかからない。もっともこのペリコプターは自家用兼緊急の時には患者を搬送するために持っているものだが。
 京都行きが正式に決まってから、先生は――決して患者さんの前や手術の時には窺わせなかったが――どことなくナーバスになっているような感じがした。
 そういえば京都に招聘された時もそうだったな…と思い返す。
 京都に何か有るのだろうか?好奇心は募った。もともとが感情を露わにしない方だけに。
 アメリカ時代は、女性関係の噂がなかったのも京都に待つ人がいるのかも知れないと思う。
 どんな人が先生の心の中に住んでいるのか興味が抑え切れなかった。これは是非とも知りたいと熱望した。

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 投稿の字数制限に引っかかりそうな悪寒がしますので、後書きは省略です。?では長岡先生だなぁというエピソードを用意していますので、お暇が有れば読んで下さいませ。

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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