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「気分は、下克上。」第五章ー17



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 挨拶が済み、まず通されたのが応接室だった。
「田中君が来てくれることは電話で聞いていたが、香川先生までご一緒だとは…。医局で何か有ったのかね?」
 夫人がコーヒーを置き、応接室を出てから佐々木前教授は真剣そうに言った。
「はい、手術で不手際が起っています。佐々木先生のご意見を賜りたく夜分にお邪魔致しました。ご多忙のところ申し訳なく思います」
 香川教授の目配せに従って、紙袋からビデオを取り出した。
「いや、君の招聘を推薦したのは私だ。私で分かることが有れば協力は惜しまない」
――招聘したのは斉藤医学部長だと思っていたが…――
 怪訝な顔をする祐樹に気付いたのか、佐々木先生は祐樹に説明する。
「実は私が推薦した。ただ、それだと黒木准教授の顔を潰すことになるため、斉藤医学部長じきじきの招聘ということに表向きはなっている」
――これだから大学病院は油断がならない。祐樹は佐々木前教授の弱音(?)を聞いていた。それが全部嘘だったとは…――
 タテマエとホンネが違う世界に居るとはいえ、教授のポストを掴む人はあれほど芝居が上手なのかと思った。
「あいにく、この部屋にはDVDしか置いていない。書斎に来てくれないか?書斎はこの部屋とは違い、散らかっているが…」
 二人の目的はビデオ再生だ。ビデオがある部屋ならどんな場所でも異論はない。
 香り高いコーヒーを飲んでから、応接室を後にして二階に行く。佐々木教授が扉の一つを開けた。
「ここを書斎として使っている」
 天井まで届く本棚には医学書がびっしり並べられ、入りきれない本や専門誌が床に整然と積まれている。散らかっているとは思えない部屋だった。大振りの机にはパソコンと、資料と思しき書類・メモなどがこれもキチンと揃えて置いてある。一画にはテレビがあり、ビデオデッキも接続されている。
 テレビの画面は大きいほうだ。ここで手術の画像を見るのだろうか?
「拝見させて貰うよ」
 佐々木前教授がビデオを再生した。執刀医の香川教授はとても不本意そうに画面を見詰めている。祐樹はその顔を一瞥して、画面に集中した。
「何だ、この手術は?」
 始まって直ぐに佐々木前教授が陰鬱な声を出す。リモコンで一時停止の操作をし、夫人を呼んだ。
「志織、煙草と灰皿を持って来てくれ」
「まぁ、禁煙なさったんじゃありませんの?」
「これが吸わずにおけるか…」
 灰皿と煙草が届くと、画像を再生させた。
「香川教授、術死は今のところないと聞いているが?」
「はい、何とかしのいでいます」
「そうか…それは良かったが、術死は時間の問題だな」
 外科医らしい率直で簡潔な感想を言う。
「私もそれを危惧しています」
 呆然と佐々木先生は画面を見詰めて分析結果を述べる。
「これが星川君の動きか…私と組んでいた時は猫のようなしなやかさと反射神経で正確極まりない道具出しをしてくれた。それが…、こんな滅茶苦茶なリズムで…。動体視力の低下?それはないな。この場面では明らかに香川君よりも早く反応している。では、体調不良か?しかし、どこも庇っている様子はない」
 二人に聞かせる積りなのか、それとも考えを口に出して確かめているのかは分からなかった。
「星川君は香川先生の手術の時はずっとこうなのかね?」
「はい、それが、術例が増えると共にタイミングが比例して悪化しています」
 香川教授の言葉に、佐々木前教授は驚きを隠せない口調だった。
「星川君がこの調子だと、必ず手術は失敗する。直ぐに道具出しの人間を変えた方が良い。これなら手術室の新人の方がマシだ」
 控えめに祐樹は声をかけた。
「僭越なお願いですが、それを書面にして頂けませんか?斉藤医学部長に提出したいので…」
「ああ、こんな事態を知ってしまえば、出来る限りのことをさせて貰う」
「ただ、斉藤医学部長は今、スイスの学会に出席中で帰国は三週間後なのです…」
 佐々木前教授の言葉は嬉しいが、それまでの手術が心配なのだろう、浮かない声で香川教授が言った。
「担当の看護士を替えるのは手術室の看護士長…今も清瀬君か…の許可が必要だからな」
「あからさまなミスをしたわけではないので…交代要請は出来ないのです」
「そうだな…心臓外科手術に詳しい外科医しか、この不手際は分からない」
 空中の一点を見詰めて佐々木前教授も考え込んでいるようだ。
「すみません…星川看護士はどういう方ですか?」
 教授と前教授に遠慮して口を挟まなかったが、佐々木前教授は星川看護士との付き合いが長そうだったので聞いてみた。
「それは家内の方が詳しい。私は斉藤医学部長宛てに手紙を書くので、応接室で聞くと良い」
 そう言って、ベルを鳴らし、夫人を呼んで応接室に案内することと、星川看護士のことを話すように頼んで下さった。
 夫人と教授、祐樹が飲み物を前に落ち着いて座った。
「星川看護士はどんな方ですか?」
 祐樹が訪ねると、夫人はおっとりとした笑顔を浮かべた。
「主人が時々招いていましたので、お話はしたことが有ります。私のような世間知らずと違ってテキパキとした方で、それにお美しいですから良縁が有れば紹介したいと思っておりました。主人にも頼まれておりましたので」
 仕事以外でのプライベートな話を聞けそうだと内心ほくそえむ。
「それで、良縁はありましたか?」
「それが」 
 品の良い眉を顰めて夫人が言う。
「お母様がご病気で治療費が必要なので、専業主婦は無理だと仰って…。色々お釣り書きもお見せしたのですが、収入の面でしょうか…何方とも会わずに終ってしまいました」
 繁盛している開業医なら収入は多いが、そういう縁談は殆ど看護士には来ない。良家の子女が独占していると聞いている。勤務医は時間が不規則だし決して給料が良いとは言えない。佐々木夫人の人脈は医師が圧倒的に多いだろう。
 とにかく、星川看護士は金銭的に困っていることだけは分かった。今日はそれで良しとしようと思う。
 佐々木前教授も応接室に下りてきて齋藤医学部長宛ての手紙を手渡してくれた。
 二人して玄関先で夫妻に丁重な挨拶をして佐々木家を辞した。
 京都は少し歩けば大通りに出る。高級住宅街らしく人は歩いていない。
 そっと手を握った。華奢で冷たい指先だったが、手を繋いでいるうちに温かくなって来るのを感じると何となく嬉しかった。
「お金…ですかね?」
 星川看護士の豹変の件だ。その可能性が一番高い。
「そうかも…知れない。だが、それをどうやって調べるかだ…な」
 絡んだ指先を微細に動かすと、彼の身体が微かに震えた。
「女性ですから…余分なお金が入ると持ち物にも反映されるかも知れませんね。病院に戻って女性に聞いてみませんか?」
「そうだな…祐樹はナースに人気が有るから…」
 沈んだ声だった。ナゼこんな沈痛な声を出すのかが分からない。
 大通りに出て、タクシーを拾う。今回のタクシーは会社が違ったので、扉は自動で開いた。運転手も無愛想だった。彼と二人でタクシーに乗ると、条件反射にでもなったかのように手の甲がそっと押し付けられる。
 どう聞けば怪しまれないかを車中で考えていた。香川教授も物思いにふけっているようで、お互い無言だったが何となく連帯感が増したようで居心地は悪くない。
 病院に着いた時、フト悪戯心がおきて、短く切った爪で彼の手の甲を手首から指まで軽く引っかいた。ただそれだけの刺激で背中がしなる。経験値は高くないのは分かっていたが、これだけ感度を高めた過去の男性にいわれなき嫉妬心が起った。

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このお話は、



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 ちょっとは物語(?)が進んだかなと。男性の読者様にナゼか人気のある長岡先生、明日出番があります。


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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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