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「がんじがらめの愛」第二章-16

「俺だったから声を掛けたのか」
 予想外の言葉に目を見開いた。
「ああ、他の人間なら、学校から電話で屋敷から傘を持たせて来るなり、自動車で迎えを頼んだりするだろう。晃彦もきっとそうする積もりだと思ったから、慌てて声を掛けた。晃彦は、嫌がらずにオレの傘に入ってくれた。それが嬉しかった」
 その状況を思い出したのか儚げに微笑んだ。
「その道すがらもオレにとっては信じられなかった。拘り無く話してくれたから。そして、老人を助けたオレにも嫌がらなかった」
「何故?お前は自分の身も省みずガラの悪い人間から老人を助けた。それは美談じゃないか」
 自嘲するような微笑が浮かんだ。
「学校の生徒なら、多分分かってくれない…。むしろオレの行為が乱暴だと学校に密告する可能性も有る」
 その言葉にいつかの園遊会で漏れ聞いた話を思い出す。自分達の階級は特別で選ばれたものである事に自尊心を持ち、平民は虫ケラと同じだと思っている。同じ人間とも思っていない。平民達の苦しみなど理解しようともしない人間が沢山居ることを。
「オレはいつものように弱者を助けた。しかし、晃彦の前であの老人を助けたことは、敢えてだ。」
「敢えて?」
「そうだ、敢えてした。晃彦のその後の言動が見たかった。あの後、他の生徒と同じ言動を取るようなら、晃彦はやはり華族階級の人間だったと自分自身に納得させるために。そうなれば、晃彦の事も、その程度の人間で、オレが腹を割って付き合う人間ではないと自分自身に納得させることが出来る。
 それなのに晃彦は加勢に加われなかった事を詫びてくれて、その上屋敷にまで招いてくれた。オレの身体を気遣って。その時思った。この人間は、オレに取っては特別だ…と。
 しかし、どういう特別かは分かって居なかった。
 しばらく経ってからの事だ。華子と二人きりになった時に学校であったことなどを話す習慣が有る、昔からな。
 妹は笑ってこう言った『気付いていらっしゃらない?お兄様は加藤様の事をお話しなさる時だけ、指を唇に当てますわね。新しい癖でしょうかしら』と。
 指摘されるまでは確かに気付かなかった。しかし、思い返してみると確かにその通りだった。何故唇に指を触れるのか…そう考えている内に分かった。
 お前の唇に触れてみたいと思って、それが叶わないから指を当てていたのだと」
 淡々と話す片桐に愛しさが募り、唇を重ねた。彼も目を開けて自分の顔を見ていた。満足そうに。
「園遊会に誘われた時は、とても嬉しかった。園遊会に出席する事自体ではなく、晃彦に学校以外で会える事に。勿論の事躊躇は有った。晃彦のご両親がいらっしゃっる事も知っていたし、どういう扱いを受けるか…オレでは無く、晃彦が…な。でも出席するとお前に会える喜びの方が大きかった。だから出席した。園遊会で二人きりになった事は覚えているか」
「当たり前だ…」
「あの時、晃彦が真剣な顔をして近付いて来ただろう。その時は、晃彦に唇を奪われたかった。変だろう?」
「いや、俺こそ、お前の燕尾服を剥ぎ取りたいと思った。そちらの方がもっと変だ」
 慈愛に満ちた微笑を浮かべた片桐は続けた。
「そして、加藤家の使用人が呼びに来た。晃彦は必ず叱責される…そう思った。その晩は寝台に入っても一睡も出来なかった。オレ達の関係は誰にも歓迎されない。かつての敵だからな。同性同士という点も論外だ。夜が明けると直ぐに学校に行く支度をした。晃彦の事が気になったからだ」
 一言も聞き漏らす事が無いようにじっと耳を傾けた。


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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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