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「がんじがらめの愛」第一章-4

 一言も口を利くことなく、雪交じりの大雨の中2人は帰路を歩いていた。身長差があるので、片桐は不自然に手を上げて傘を差している。それも気の毒だと思い、
「傘、持ってやろうか」
そう言った。誰にでも向ける加藤の優しさだった。しかし、片桐は冷たい表情のまま、
「構わない」
 つっけんどんに言った。視線は正面を向いたままだ。
「あの」片桐に親切に言ってやったのにと心外に思った。憤りのあまり、
「何故、俺に傘を差し出してくれたのか。知っているだろう。加藤の家がお前の家を恨んでいることは…」
 社交界は狭いのでその件が噂になっていることは、知っていた。
「オレの家だって、お前の家のことは恨んでいる。それは知っているのか」
 正面を見据えながら真剣で強い口調で、言い切った。
「それは…初耳だ」
 片桐の家を憎んでいるのは加藤家だけだと思っていた。しかし、片桐家でも同じだったとは。
「話を聞きたいか」
 真率な声がした。わずかに震えている、声。
「ああ」
「加藤侯爵が大将となって、我が城に攻め込んだ時のことだ。圧倒的な政府軍・・・当時は薩長軍と言ったが・・・に、ろう城するしか方法は無かった。
 おまけに我が領国は飢饉続きで、碌な蓄えも無かった。その中で家臣達は飢えを紛らわせ戦った。皆、『城を枕に討ち死にいたす』が口癖だったそうだ。奥女中や元服していない少年までが戦ったそうだ。
 ろう城は二ヶ月続き、政府軍の猛攻に成すすべも尽きた。兵糧も武器も、家臣たちの気力もな。
 政府軍がこの城を落としたら、何をされるか分からない。奥女中は喉を突いて自害し、重臣どもは、和平に向けての話し合いの場に立った。
 その時、条件を出したのは加藤侯爵だ。『父上を助命するために重臣達は切腹せよ』と。『殿をお守りするため』に・・・話し合いが終わり、誓紙を取り交わした後、父の信頼していた家臣達は全員が腹を切った。
 戦が終わってみると、落城の憂き目をみたのは我が城だけだったが、政府軍に反抗していた他の藩は、城に白い旗をささげると藩主はもちろんのこと家臣全員が無事だったそうだ。
 我が家だけが重代仕えてくれた重臣をあたら命を奪われた。総大将の命令で。助命嘆願を加藤侯爵が総司令官に上申すれば助かったはずだ。もちろん奥女中の命もだ。
 父上は、今も当時の悪夢を見て、うなされるそうだ」 
 感情を押し殺した声で片桐は言った。大きな目は潤んでいたが、悔しそうだった。
「…そう・・・だったのか…」
 それだけしか言葉が出なかった。
「何故、俺の家のことは社交界には伝わっているのに、片桐の家のことは伝わっていないのだ」
 自嘲気味に唇を噛んだ片桐は、
「政府軍のしたことの美点は喧伝されたが、民にとっては欠点となるようなことは隠された。社交界も例には漏れない。だから知っている者は我が家のものしかいないはずだ」
 淡々とした口調だったが、内心は違うな、と加藤は思った。




_________________________



この小説はフィクションでありファンタジーです。一応、歴史上のことも出て来ていますが、作者の浅学不才により間違いもあると思います。なお、人名は、登場人物は全てフィクションで、ちらっと出てくる人物はノンフィクションです。風習なども調べましたが、至らない点がありましたらお教えください。

このお話しもどきは、1年以上前にヤフーブログで掲載していたものです。読み返すと、下手さのあまり失神しそうですが、書き直すと余計に混乱しそうなので恥を忍んでこのまま載せます。


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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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