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「気分は、下克上。」旅行編-19



凸凹画像を二つクリックして別窓から読んで下さると嬉しいです。感涙の涙が川になります~!凸凹
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 祐樹に大きなオレンジ色の紙袋を半ば無理やり手渡した長岡先生は、安心したように溜め息を吐いた。
「ああ、本当に重かったです…」
 そう言って彼女はノースリーブのスーツの両手をストレッチするように――というのは好意的な表現で、実際は不器用な女の子がラジオ体操をしているような感じに――腕を伸ばした。彼女の華奢な腕や手のひらにはくっきりと赤い紐の跡が残っている。見るからに痛そうだ。彼女よりは力のある祐樹でさえも、その紙袋の重みに苦しんでいるので彼女には手の余る荷物だったのは分かったが。
 顔を顰めている祐樹を心配そうに見遣った彼は、曖昧な笑みを浮かべた。そんな表情も匂うように綺麗だったが。
「お見送り、有り難うございます。岩松氏はご一緒ではないのですか?」
 彼女の抑止力に最も効果を発揮する婚約者の名前を出した。
「ええ、彼は今東京で…私も二時間後の便で東京に参ります」
 彼の声が僅かに低くなる、落胆したかのように。
「お餞別はとても有り難いのですが、一体何を?」
 彼の言葉を額面通りに受け取った長岡先生は満面の笑みを浮かべた。教授の形の良い眉が顰められていることには気付かないまま。
「色々考えたのですが、やはり私の心のこもったものが良いと思いまして…」
――まさか彼女の手料理…なんてことはないだろうな…と祐樹の背中に冷や汗が二重に伝う。手が千切れそうに痛かったこともあって。祐樹もそう料理は得意な方ではないが、教授と同棲してからは彼の健康維持も慮ってなるべくバランスの良い手料理を作れる限りは作っている。最愛の恋人が「長岡先生の家事能力は…」と絶望的な表情を見せたことがあるくらいだ。悪い意味での教授の折り紙つきだ――
 一瞬、手が滑ったフリをして紙袋を落としてしまいたい危険な誘惑に駆られた。
「それで、私が出来る最大の貢献を考えましたの。中に入っているのは、私の特製アンプルです。心臓中心ですが、他の症状にも良く効く各種様々な物を作って参りました。使用法はちゃんと紙袋の中に入っております」
 やめてくれ…と正直思った。「国○なき医師団」でもあるまいし、私達は治療が目的で外国に行くわけではなく、単なる観光…しかも最愛の彼との初めての海外旅行なのだから…仕事のことは忘れたい。
 祐樹以上に職務に真面目で几帳面な彼はどういう反応を見せるのだろうかと、恐る恐る彼の表情を窺う。あまり公の場所では表情を変えることのない彼も戸惑っている様子だったので、少しは安心した。
「しかし…医薬品といえども液体ですよね?それにシリンジ(注射)も入っているのでしょう?例のテロ以来、そういったものの機内持ち込みは厳しいと聞きましたが」
 祐樹が苦心して持っていることが敏感な彼にも分かったのだろう、婉曲に断ろうとしてくれている。手の苦痛を一瞬忘れて、彼の心遣いに感謝の視線を送る。
「ええ、液体の機内持ち込みは確かに制限されておりますわ。ただ…」
 そう言って、彼女はいつぞや祐樹が難なく開けたバック――今日は流石に留め金を外して中身が丸見えだったのだが…やはり若い女性が丸見えにしてはあまり好ましくない状態だった。それほど整理整頓には拘らない祐樹ですら目を覆いたくなる混沌さだ。特に生理用品をむき出しに入れておくのは特殊な性癖を持つとはいえ異性としては居たたまれない。
 最愛の彼は、見るのも怖いらしく視線を故意に外しているのが妙に人間味を感じさせる――の中からラミネート加工された仰々しい紙を取り出した。大きく「JAPAN」と書いてあるところなどは一万円札を彷彿とさせる。
「これをお見せになればフリーパスかと…」
 祐樹が持っていても苦痛を感じる重さの紙袋を――どうせ空港まではタクシーか何かの車を使ったにせよ――運んで来た長岡先生の化粧崩れした顔が晴れ晴れと輝く。2人の当惑に満ちた苦渋の表情にはまるで気付いていないのが彼女らしい。
 書類を一瞥した彼が驚愕の表情を浮かべる、珍しいことに。
「日本政府、それも厚○省大臣の印璽付き許可証?」
「ええ、そうですの。岩松からも働きかけて貰いました。大臣の印璽は本物であることは保証致します。やはり、香川教授はどこにいらしてもこの程度の薬品は持ち歩かれるべきですわ。アクシデントに備えてこその医師ですわ。そう父も申しておりました。父も旅行の際には各種薬品を――といっても市販されているレベルのものですが――を持ち歩いておりましたので、香川教授ならばこの程度の物はお持ちになるべきだと愚考致しました」
 大臣の名前をマジマジと見てしまう。新聞などで活字ではお目にかかっている名前が肉筆サインともなると却って仰々しい。一瞬手の痛みも忘れそうになったが。
 だが、ホントウに「愚考」だと…旅行中、誰が持ち運びするのかを考えてウンザリした。
「大臣が許可したものですので…確かにフリーパスですが…。ただ、我々はアフリカなどの衛生面で問題の有る国に行くのではなく…」
 彼も祐樹の顔色を見て必死の防戦に努めてくれている。
「ええ、それも存じております。ただ、救急の患者さんがいらっしゃった場合、お役に立ちますし、そのお薬で助かった場合は病院の宣伝になりましてよ」
 別に病院の宣伝のために海外旅行をするわけではない…と祐樹も言いたかったのだが。
 ただ、彼がこれほど婉曲にとはいえ断っているにも関わらず彼女は気付かない。尊敬する香川教授の言うことにも理路整然と反論しているのだから、祐樹が何を言っても無駄なような気がした。彼が必死に断ろうとしてくれていることに気を良くして、祐樹は自分が我慢をすればいいのだと諦めた。
「有り難くお借りしておきます。万が一使用した場合は、報告書、作りますね」
「良いのか?」
 彼の憂い顔が祐樹を直視する。空港という公の場所で見る彼のそんな表情は、健康的でありながらどこか艶っぽい。そんな表情を見られたことだけで満足しようと祐樹は必死に手の痛みと戦っていた。
 長岡先生の見送りを受けながらスーツ・ケースを持って搭乗入り口に並ぶ。祐樹の手を見かねた彼は祐樹のスーツ・ケースも持ってくれる。やっと2人きりになれたという解放感で二人は同時に溜め息を漏らし、お互いの顔を見て微笑し合った。あくまでこっそりと。そういう視線の絡め合いが2人の笑みを深くする。


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 スミマセン…飛行機に乗れませんでした~!次回で飛行機に乗って、ホテルに着くといいのですが、ついつい長くなるので、飛行機はまだかと…。どうしてこんなに長くなるのか自分でも謎ですが、本編が暗いので、こちらで明るくしようと無意識にしているのかも…。
 シルバーウイークでお忙しい中、読んで戴いて有り難うございます!
 コメント&ポチもとっても感謝致しております~♪
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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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