スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「気分は、下克上。」旅行編-22



凸凹画像を二つクリックして別窓から読んで下さると嬉しいです。感涙の涙が川になります~!凸凹
____________________________________________________

 彼の身長や肩幅は平均男性よりも僅かに上回るが、骨格は少し細い背中を見ながら、誰にも気付かれないようにこっそりと溜め息を吐く。祐樹の不純な目論見では、飛行機の中で散々彼の性感を煽っておいて、滞在予定のホテル――このホテルは贅沢なことにスイート・ルームしか存在しないそうだ――に着くや否や、この頃お互いが忙しいことも有ってご無沙汰だった身体を使った愛の交換へとなし崩しに彼を誘い込もうという計画だったのだが。どうやらご破算になってしまったようだった。
 仕事モードに入ってしまった最愛の人の背中を我ながら未練がましく見詰めた。フライト・アテンダントは飛行機の前部に案内をしているようだった。祐樹の記憶違いでなければそこはファースト・クラスのエリアのハズで。
 回りを見回すと先ほど彼が祐樹の肩に凭れ掛かっていたような狭い座席ではなかった。お金には困っていない彼がエコノミー・クラスに拘ったのは、祐樹の体温をも感じられる座席の方がファースト・クラスの乗り心地よりも優先順位が高かったのかと、今更ながら彼の気持ちに胸が熱くなる。
 祐樹が幼い頃母と一緒に休んでいた布団ほどの大きさのある座席がゆったりと配置されている。――これがファースト・クラスのシートなんだな――と感慨に耽ったのは一瞬で、複数のフライト・アテンダントに囲まれて、1人の恰幅も服装も良い男性が、胸を押さえ蒼白になって苦しんでいた。
 それをこれもまたいかにも会社の重役か何か――要は社会的地位は有りそうな――少し太めの男性が介抱していた。
「医師ですが、お役に立てることは有りませんか?」
 彼は涼しげな声を掛けた。先ほどの手を繋いでいた時の薄紅色の艶を含んだ口調はなりを潜め、明晰かつ冷静な声で彼は言った。
「あいにく、私も医師でね…この患者さんは狭心症の発作を起こしたようだ。私も心臓の専門医なので、人手は足りている」
 患者さんのネクタイを解いていた男性が居丈高に言った。祐樹も一応心臓外科に籍を置く身の上だが、この場合は内科的アプローチしか無理なので…彼が同席していなかったら「私は皮膚科です」とか何とか言って引き返しただろうが…ただ、彼の恋人は座視しないことは分かっている。
「私も心臓の専門医です、ただし外科ですが…。先生は何かお薬をお持ちでいらっしゃいますか?」
 彼の社会的地位――年齢は別にして――からすると、彼の上座に立つ人間は心臓外科の医師では数人しか居ない。にも関わらず彼はいつも丁寧な口調を崩さない。
「いや、あいにく機内なので、薬品は持ち込んでいない。ただ、狭心症の患者さんは常時ニトログリセリンを持っている筈なので探しているところだ」
 何だ、この生意気な若造は…という表情を隠さずに恰幅の良い医師は言った。そういえば数人のフライト・アテンダントが患者さんの着衣を探っている。狭心症の発作はいきなり起こることが多いことくらいは祐樹も十分心得ていた。そして、一旦、狭心症と診断されるとニトログリセリンの薬剤を処方されることも。そしてその薬剤を手元から離さずに持っているように指導されることも。
 彼が患者さんを凝視していたのは一分くらいだろう。それで十分だと言うようにおもむろに口を開く。
「この患者さんは発作を起こしたのは初めてのようです。その証拠に、回りにはウイスキーの瓶が半分ほど減って残っています。皆さんの中で、この人にアルコールを運んだ方はおられますか?」
 彼の涼やかで耳触りの良い声に数人のフライト・アテンダントがおずおずと手を上げる。
「狭心症と診断された人はお酒を控える筈です。しかも飛行機の中で発作を起こし、なおかつニトロなどを服用していないとなると、初めての発作でしょう。狭心症の持病のある方は発作だな…と自覚すれば速やかにニトロを服用するように主治医に申し渡されている筈ですから」
 立て板に水という諺が祐樹の脳裏に浮かんだ。先ほどの医師も、表情を微妙に変化させている。何かを考えている表情だ。
「ゆ…田中先生、この紙袋の中にニトログリセリン、もしくはそれに類似した薬品を探して下さい」
 彼はそう言うと、彼の上半身の着衣を事務的に寛げていく。そしてマニュアル通りの手順で蘇生術を試みている。
 幸いなことに祐樹は先ほど長岡先生の説明書を読んだばかりだった。
「この薬が長岡先生のスペシャルアンプルです」
 薬品をシリンジ――注射器――に入れて手渡した。
 彼にしか出来ない優雅かつ正確な手つきで注射を施す。
「狭心症の場合は、併用してこれらの薬品が効果的と書いてありました」
 そう言って、次々と彼にシリンジを手渡す。もっとも、中には長岡先生のスペシャルアンプルの中で狭心症には効果は少ないが、かといって害にもならない薬品もこっそりと混ぜておいたのは…彼には内緒だ。
 どうせ、旅行中に全ての薬品が役に立つはずもないので、この際、少しは重量を減らそうという魂胆だった。幸い彼は眠っていたので長岡先生の説明書を読んではいない。読んでいるのは祐樹だけだ。ならば彼が読む暇もないほど祐樹が疲れさせれば、祐樹の密かな企みは誰にも分からない。関西空港で余りにも重たい荷物を持たされた忌忌しい余韻が祐樹の掌には残っている。患者さんの害になるならともかく、毒にも薬にもならない薬品をこの際、この患者さんの体内に入れてしまって少しでも荷物を減らそうという魂胆だった。 どうせ誰も困らないのだから。
 これが、香川教授が直々に機内に持ち込んだ薬品ならば、祐樹もこんな勿体ない使用法はしない。が、ある意味では――結局役に立ったのだから――小さな親切大きなお世話とでも言うべき長岡先生の特製アンプルだ。最愛の彼も困っていたシロモノなので、この際盛大に使ってやろうと思った。
 彼の水際立った処置に手をつかねて見ていた年配の医師は、患者さんの容態が回復すると共に――狭心症の発作はニトログリセリンの投与によって劇的に回復するのは医師からすれば常識中の常識だ――香川教授に向かってさっきとは打って変わった丁重な挨拶をした。
「これはこれは、K大学医学部の香川教授でいらっしゃいますね。ご高名はかねがね。先ほどはいささか動転していたとはいえ失礼いたしました」
 彼は一瞬長い睫毛を瞬かせたが、誰だか分からなかったらしい。祐樹も恰幅の良い先生の顔には見覚えがなかった。が、香川教授ほどのレベルになるとこちらが知らなくても相手が知っている可能性は大きい。
「申し訳ありません。御名前を存じ上げないのですが…」
 几帳面に頭を下げる彼に男性は慌てたようにスーツの胸ポケットから名刺を取り出した。
「7月に東京の本郷で最新かつ難易度の高い術式の講演をされましたよね。私も拝聴して大変感銘を受けました。大胆かつ繊細な教授の手技は心臓外科医の憧れです。
 そういえば、こちらの先生にもその時お目にかかったような…。それはともかく私はこういう者です。以後お見知りおきを」
 丁重な仕草で名刺を渡している。ついでに祐樹にも丁重度は下がるが一応は丁寧なお辞儀をして名刺を差し出した。そこには杜の都として名高い都市にある大学病院の名前と准教授の肩書きが記してあった。この世界は肩書きが全てだ。いくら年齢が上でも席次としては香川教授の方が上になる。
「あいにく、休暇中なもので…名刺を持ち歩いていないご無礼をお許し下さい」
「いえいえ。休暇中にも関わらずこんな薬品を持ち歩いてらっしゃる教授が何を仰いますことか」
 そんな会話を聞いていたフライト・アテンダントは目を丸くして聞いていた。患者さんの発作が治まったようなので。
 男性が彼女達のチーフと思しき1人に耳打ちをする。彼女は艶やかに微笑んで告げた。
「患者さんの容態が落ち着くまで傍にいらして下さいませ。シートは空いておりますので。出来れば現地に到着するまでお願い致します」

_____________________________________________________

下の画像(。゚ー゚)σポチッ凸(。゚ー゚)σポチッ凸っとお願いいたします~!






 やっと、ファーストクラスまでたどり着きました~!あと一話(予定は未定)で18禁エリアでございます~。
 最近疲れ果てて、更新の元気が出るときと萎えてしまう時があるのが困り物です。。。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

FC2ブログランキング
ランキングに参加させて戴いております。ご訪問の際ポチっと。とっても喜びます!!

FC2Blog Ranking

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。