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刹愛の公子(2)



 このお話は、「タニス・リー」原作の「闇の公子」の二次小説です。原作をご存知ない方が多いと思われますが、ファンタジー物で、「地球が平らであった頃に美しき妖魔の王が居て、その妖魔の王にまつわる物語」です。人間を時には愛し、時には残虐な行為をし、人間を見下しながらも人間が居ないと存在出来ない妖魔の王、美しきアズュラーン。彼はかつて、人間が滅びることを看過出来ず命を懸けて戦った「憎悪」に勝利するも人間からは蛇蝎のように嫌われている(まぁ、自業自得ですが)ので、功績を認められずにいる…といったお話の続きになります。備忘録としてこちらにアップしておきます。完成の暁には一般書庫に移します。実はイラストを戴いた銅貨様のリクエストで書きました。

    

 十八年の昔、日輪が唯一無二の神として崇拝され祀られている国――ソヴァイユに二人目の皇子が誕生した。それ自体は寿ぐべきことであった。
 日嗣の皇子と定まった第一皇子と同腹の正妃から産まれた第二皇子は誕生と同時に国を挙げての慶賀に包まれた。ただし、皇子の瞳が開くまでの短い間のみであったが。ソヴァイユでは日輪を仰ぐ故、王は無論のこと、王妃も厳格な資格が要求される。その資格とは日輪に近い色の髪、そして日輪が鎮座ましている空の色の瞳。髪は日輪に近ければ近い程尊ばれる。勿論のこと瞳の蒼さも。
 逆に日輪が隠れる夜は忌み色とされてきた。黒は言うまでもなく月読みの神の色である銀や紺などはもっての他。故に王家は勿論のこと貴族達の中に夜に属する色を持つ人間は居らぬ。
 正妃も愛妾も徹底した血統の調査が行われ、いかに王が熱望せし女性であったとしても忌み色を持つ者は愛妃には選ばれぬ。そういう国であった。正妃はこの国で王家に次ぐ貴族の長女であった。無論、正妃の家系図にも金の髪、蒼い瞳以外を持つ祖先は存在せぬ。王家は言うまでもなく。御年五歳の日嗣の皇子もまた日輪の如く輝く金の髪と蒼穹の空の青さが結晶したかの如き蒼い瞳の持ち主であった。第二皇子もその二つを兼ね揃えていると臣下は元より両親である王と正妃は疑ってはいなかった。産み落とされた嬰児の髪が日輪の如くであったゆえ。
 第二皇子の瞳が開くと、侍医は卒倒し、侍従は顔の色を空の色の如く、否、月の如くと表現すべきかも知れぬが、産褥で休んでいた正妃ではなく王に奏上した。
「そは誠か?我が王家にも后の生家にも瞳の黒い者など1人も居らぬ。何かの間違いじゃ」
 色を失った王が叫んだ瞬間、重臣達の顔色が空の青に一斉に変わり、寿ぎの祝賀の音曲が絶えた。産褥に苦しむ正妃には知らせず、王と宰相が慌てて産室に入り侍従の言葉が真実であることを確かめた。
 ソヴァイユの国は苦悩に包まれた。日輪の子であるはずの王――幸いなことに第一子では無かったが――に忌むべき瞳の御子が誕生したのである。後宮は王以外の男性が立ち入ることあたわずの風習があった。たとえ王の皇子であろうとも。そして後宮の女は正妃ですら男性と接する機会は皆無。日輪は孤高を以って第一とするが故。正妃もまた孤高ゆえに密通の疑いはありえぬ。
 知らせを聞いた正妃は卒倒し、己が罪――忌み子を産み落としたという一点のみであったが――を深く悔い、懊悩の日々が始まった。王も日輪の怒りであろうかと恐れ戦いた。国の民もしかりであった。
 皮肉なことに第二皇子の瞳は、ぬばたまの色でこそあったが、髪の色は日輪よりも眩く、容貌は王と正妃の良い部分を併せ持っていた。正妃と王の皇子であることは誰の目にも明らか。ただ、瞳のみが忌み色。故に王は乳母を――日嗣の皇子の時は慎重に選別したが――ぞんざいに定めたのみだった。どうせ人目には触れさせることの出来ぬ皇子ゆえ。
 乳母と1人の従者のみを伴って王宮の端の塔で物心付くまで育てられた皇子は、王が吐き捨てるように名付けたシェディム――悪魔という意味を持つ古い名であったが――という名前で育てられた。乳母と従者はさして分別こそ有りはしなかったが善良かつ熱心に皇子を育てた。父母には見捨てられた皇子とは知っていたが。
 日嗣の皇子の乳母はこの国の風習を良くわきまえた女の中から最良の知性――ソヴァイユの歴史や神である日輪を怒らせぬために振舞うべき数々の教条――を持った女が選ばれた。当然のことであろう。日輪の逆鱗に触れる行いをすれば農業を第一の生業とする国ゆえ王たるものの責務を教えねばならぬ。
 しかし、シュディムの乳母はソヴァイユ人ではあったものの、祖父はソヴァイユに住み着いた――どこの国から来た者であったか歴史書は秘して語らぬ――人間であり、ソヴァイユ以外の国の有様を皇子がせがむと話し聞かせた。
 父母がこの塔に来臨することは皆無であったが、塔の中での暮らしが物心付いてからも当たり前であったゆえシュディムはさして疑問も持たずに育った。そして乳母と従者以外の人間――食べ物や衣服を運んで来る下級役人――が自分を忌忌しげに見ることにいつしか気付いた。
「何故、私のことを怖い目で見るの?」
 ある日、乳母に尋ねた。常々疑問を持っていた故に。乳母は黒い瞳がこの国では忌まれることを教えた。
「皇子様、しかし、闇を崇拝している国もございますゆえ、気になさる必要はございませぬ」
 その一言が皇子にとっては嬉しくなかった筈もない。その後、各国の書物が皇子の塔に運ばれた。王や正妃の知らぬ間に、否、自らが捨て置いた子のことは人間が反故を捨て去り、その紙の行方を知らぬが如く第二皇子のことは忘却の彼方であったからやもしれぬ。
 シュディムはソヴァイユの歴史と共に手に入る限りの書物を読み悉くそれを諳んじた。聡明かつ美貌の皇子であった。よし、蒼穹の瞳を持っていたならば宮廷でその賢明さと美貌はソヴァイユの幼い宝と賞賛されたに相違ない。しかし、塔の中では無意味であった。 皇子の心を捉えた書物の中にはアズュラーンの逸話があまた含まれていた。自らが黒い瞳であった故、不思議な慕わしさを感じるのは必然であった。
 皇子が八歳になった頃、ソヴァイユでは未曾有の飢饉が起こった。雨の月とされる六月中に降った雨はごく三日。それも絹糸のごとき雨のみであった。農民達は日輪の怒りだと断じた。占い師もまた。王の第二皇子が元凶であると実しやかに囁かれた。貴なるも卑しきも。王もほぼ忘れかけていた塔に追いやった第二皇子――その頃までには正妃との間に一人の皇子と二人の皇女が出来ていたゆえ。その皇子達は皆、濃淡の違いこそあれ金色の髪、蒼の瞳の持ち主であったことは無論であった――がもたらした災悪であると信じ、ソヴァイユから去らせる方策を案じた。
 王族ゆえに、また、かの皇子の歳ゆえに――それすらも王は忘れていたが――それなりに尊重される場所に遣らねばならぬ。かつ、ソヴァイユの神からも隠せる場所。自ずと答えは明らかであった。神殿である。かといってソヴァイユの国内の神殿では当然のことながら日輪を祀っており、かの皇子が仕えることはあたわない。
 祀っている神こそ異なるが友好国の一つである国の最上の神殿に仕えさせることとなった。その後、ソヴァイユに豊饒をもたらす雨が降ったという話は聞かぬ。
 その神殿は平らな地球に於ける一般的な神を信仰していた。神とは思索に耽るものであり、言葉は慎み、実しやかに語られていた――直接見た者は闇の公子・麗しきアズュラーン以外にはいくたりとはおらなんだが、噂はなにとはなく伝わってはいた――見目良く、肢体はしなやかかつ優美なものであると考えられていた。シュディムは全ての条件に適っていた。
 心中を言葉にせぬのが神官の習いであったために闇の君への崇拝は決して語らなんだ故もあったが。しかし、このシュディムは神殿の図書は全て――異国の言葉で書いてある物さえ――遍く読み、闇の君の孤独と――比べ物にはなりはしないのは承知の上――塔の中の孤独を重ね合わせていた。未だ拝見するにあたわざる闇の公子への憧憬は日増しに募ってはいたが。父母の愛を知らぬゆえであったのかも知らぬ。
 他の神官から漏れ聞く身の上話を聞く程に、ますます父母ではなく闇の公子を慕わしく思った。
 しかし、この聡明な若者は闇の公子への崇拝の念をうかうかと他の神官に気付かせるような愚かな真似はせず、その胸の奥深くに留めるのみであった。神殿では、出自ゆえに、また神に近い美貌ゆえに、かつその聡明さゆえにシュディムを神殿の長と定めた。
 闇の公子・美しきアズュラーンへの思慕を知らぬが故の人選であった。
 

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
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著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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