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刹愛の公子(4)



 このお話は、「タニス・リー」原作の「闇の公子」の二次小説です。原作をご存知ない方が多いと思われますが、ファンタジー物で、「地球が平らであった頃に美しき妖魔の王が居て、その妖魔の王にまつわる物語」です。人間を時には愛し、時には残虐な行為をし、人間を見下しながらも人間が居ないと存在出来ない妖魔の王、美しきアズュラーン。彼はかつて、人間が滅びることを看過出来ず命を懸けて戦った「憎悪」に勝利するも人間からは蛇蝎のように嫌われている(まぁ、自業自得ですが)ので、功績を認められずにいる…といったお話の続きになります。備忘録としてこちらにアップしておきます。完成の暁には一般書庫に移します。実はイラストを戴いた銅貨様のリクエストで書きました。

    


「妖魔と交わった事が露見すればそちは人間界において唯では済まぬ。その事は承知しておろうな?」
 麗しの君、アズュラーンは、暗闇の中で銀糸の如く光を放つシュディムの髪を梳りながらその名を裏切らぬ美声で尋ねた。気ままに悪事を行う妖魔の王にしては稀有な事だった。何かしらこの若き神官に興を覚えたのかも知れぬ。通常妖魔は愛の行為は黙して行うのが常だった故。
「元より承知致しております。私の身体如きで人間の罪を贖えるとは思いも寄りませぬが、一夜のお慰みになることがあたいましたなら望外の幸せで御座いますゆえ」
 妖魔の王、闇の公子アズュラーンは、金色の髪のみを纏い寝台に横たわった若き神官に身体を重ねた。が、アズュラーンは神官の首の下に男性的だが細い腕を差し込み、花のかんばせを愛でるかのようにしばらく見詰めた。あるいはこの神官の真意を妖魔の力で探ろうとしていたやも知れぬ。ぬばたまの闇よりも黒く、黒曜石の輝きを百個集めてもかくの如き光にはならない妖魔の王の目が幽かに笑みを帯びた。強大で富んだ王国を滅ぼした後の如く満足げな笑みであった。悪徳を為すことも妖魔の戯れの一つであった故。
 公子の冷たい唇がシュディムの唇と重なる。妖魔の肉欲は娯楽であり、歓びでありまた才能であった。その王であるアズュラーンの口付けは、シュディムには甘露の如き味と背筋を走る甘美な雷をもたらした。妖魔の王は体重を感じさせぬ。が、溶岩流――妖魔の国の都ドルーヒム・ヴァナーシュタに流れていると書物に書いてあった――の如き冷たい熱さを感じた。その不可思議な感触にシュディムのしなやかな肢体はしどけなく足を開く。 別に公子からの言葉は無かったが。横たわっている妖かしの寝台は水仙の芳香をより一層薫らせると共にシュディムの腰の辺りを闇の君に誇らしげに見せるかのように形を変えた。
 アズュラーンの命か、妖かしの寝台の自発的な意図かは分からぬが。
 慎ましげに閉じた無垢な蕾を闇の公子は長い指で繊細かつ優美な花の蕾を愛でるが如くしなやかに触れた。
 その刹那、花が自ずから開くが如く無垢な蕾も鮮やかに花弁をゆっくりと開花させる。シュディムも自らの身体の変化に慄くように密やかな声を上げた。その奏でる音色は――シュディムには知る由もなかったが――妖魔の貴族であるヴァズドルーの声に似てアズュラーンの耳ならぬ耳には心地よく響く。
「余の交わりは人間のそれとは異なり一切の苦痛をもたらさぬ。そなたは悦楽の深みと高みを味わうが良い」
 その後、シュディムは公子の興を殺ぐのを恐れたのか、心の中で独語した。公子が人間の心を読む事は知っていた故。
『御身様の寵を受けるだにすら考えも及ばぬことで御座いましたが…有り難き御言葉を頂戴し忝く存じます。私の身体は御気に召して戴けるかそれのみが心苦しゅう御座います。身体の痛みなど御身様のかつての人間の為になされた御痛みに比ぶれば、何ほどのことが御座いましょう』
 公子の長く優雅な指が無垢な蕾を愛でるが如く、また咲くのが待ち遠しいかのようにこの世ならぬ繊細さと優雅さと熱意を込めて人間界のみならず妖魔の都の名工すら敵わぬしなやかさで動く。シュディムの心根を嘉したのやもしれぬ。その動きに従ってシュディムの息は水仙の芳香も顔色を失う程鮮やかな香りを纏った。
 充分に開ききった花弁を見下ろすと麗しの君、美しきアズュラーンはその名に相応しい笑みを浮かべた。勿論、その美しさは表現することあたわざる事は自明である。
 充分な――否、人間界の男性の全てに勝る――大きさ、太さを持ち合わせた物が花開いた花弁へと導かれた。しかし、公子の語った如く、シュディムには苦痛は皆無。感じるのは熱くかつ冷ややかな官能のみ。
 公子との肉の交わりは、溶岩を身に纏ったかの如く熱い。また脳にはあまたの星が煌いているかの如く心地よい酩酊感をもたらせた。身体中が甘美というよりは溶けそうな悦楽の嵐に巻き込まれた。官能の渦に巻き込まれた一片の花びらの如く。巻き込まれ翻弄されてはいるが、それは自身の身の内を焼き尽す官能の業火であった。焼き尽されても構わない程の悦楽の灼熱に似た。
「そちの身体は錠前よ。それも極上の。そして余はそを開ける唯一の鍵」
 耳元で囁かれる美声に恍惚とした瞳をゆるゆる開ける。
「はい、御身様は剣で御座います。私はその剣に誂えられた柄にしか過ぎませぬ。その唯一たる剣を頂戴し、これに過ぎたる歓びは御座いませぬ。」
 黒い薔薇も色を失う程の色香を纏った、甘美な息を零しながらシュディムは息も絶え絶えに、しかし心を込めて闇の公子に言う。そして心の中で浅ましい願いを公子に訴えた。
『願わくばもう少し中に…そしてもう少し激しく頂戴出来ますことを。僭越なお願いでなければ』
 シュディムは水晶の涙をアクアマリンの如く零しながら甘く切なげな音を奏でる。公子が心中の願いを聞き届けたと知った時その水晶の珠は鸚鵡の目の如く大きく零れた。勿論悲しみではなく恍惚たる官能の涙であった。シュディムも瞳を閉じず――殊更命じられたわけではなかったが公子がそれを望んでいることが直観で分かった故――。
 その愛の営みは果てる事無く続いた。シュディムは幾度となく大きなうねりに浚われ公子の身体に恭しく手を回した。公子もそれを嘉し給うようであった。
 シュディムは甘美で切なげな声を漏らし、麗しのアズュラーンの顔に僅かな笑みが浮かんで居る事を確認すると月下美人の花の如く密やかな笑みを零した。
 彼の人間にしては細く長い脚は公子の許可を得て公子の腰に離れじと回されている。彼のしなやかな肢体から雫となって零れ落ちる汗は水晶の如く、また彼の奏でる音色は妖魔の貴族であるヴァズドルーの声よりも公子の耳には心地よく響いた。白い肢体はいつしか薄い珊瑚の色に変わり、悦楽の度合いを闇の君に知らしめていた。
 どれ程の時間が経ったのかシュディムには分からぬ。が、自らの目を覗き込んでいた公子の黒く眩く輝く瞳がもの言いたげに変わった事に気付いた。極上の恍惚を宿した瞳は、――公子の愛を知る前よりも色香と輝きを増していたが――公子の忌むべき朝の存在が近い事を知る。
 甘美な柄を名残惜しげに震わせ公子の剣を抜くのに任せる。美しきアズュラーンはシュディムの黒い瞳に唇を落とした。冷たく熱い唇を。その後、薄い唇をシュディムの唇の上に落とし、妖魔の王でしかなすことあたわざる官能的かつ甘美な口付けを送った。
「一夜の御戯れにはおなりになりましたか?私はそれが一番気掛かりで御座います。」
「余は、興が乗らなくば忌忌しい朝の光が直ぐ傍まで近付いておる今までそちと共に過ごすことは無い。そちの心根、そしてそちの身体――特に余の名を奏でるその声――誠に気に入った。我が愛は軽々しくは与えられぬが、よし、ひとたび与えられなば、そは確かなものになろう。そちは余が愛するに相応しい者ぞ。名前を聞く」
 シュディムは半ば夢見心地で公子の言葉を聞いた。己の耳が信じられぬ。反射的に答えた。
「シュディムで御座います。我が君」
「ほう、闇に属する良い名であるな。今晩もそちを迎えに行く」
 朝の最初の矢が一閃しそうな時刻であった。公子は声ならぬ声で黒馬を呼ぶとシュディムの身体を軽々と馬に乗せ、神殿まで送り届けると慌しげに、かつ優美に馬首を翻した。恐らくは彼の地底の都ドルーヒム・ヴァナーシュタに帰還したのであろう。妖魔の嫌う朝の陽光の矢を避ける為に。
 
 日輪が山の奥へと退き神殿に夜が黒いベールを掛けようとする頃、神殿の奥にある神官長の部屋では一心に祈るシュディムが額づいていた。食事を運ぶ係りの神官は昼の礼拝の時――といっても、天上におわす神は言葉ではなく思索を重んじている事が漏れ聞こえていた為、各々が黙って礼拝を捧げるのみであったが――の時に垣間見た神官長の変貌が自らの気のせいでない事を密かに確認していた。無論その理由など知る術も、また直接聞ける立場ではなかったが。
 闇の公子との平らな地球ですら表現することあたわざる愛の営みの故、シュディムの黒い瞳は黒真珠の如く濡れた艶を放ち、吐息は水仙の香を纏った。神殿が信仰している神は無表情かつ透明だと言い伝えには残っており、シュディムもその容貌も評価されて神官の長に選ばれたものであったが。その唇は薄暮に映える薄紅色の薔薇の色の如し。その頬も同様であった。長老達は声を出さずに神官長の変化の兆しを見て取ったが、神は己の思惟に耽り、他のことを省みぬ性質を持つと信じられていた為に誰も口には出さぬ。


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 なお、銅貨様のブログはこちらです~!
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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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