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「気分は、下克上。」第十四章-17




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「しかし、香川教授が持っていたU銀行の開示書類…あれは、田中『先生』のアイデアなんだろう?教授はこの大学を卒業後、アメリカに行っているので日本の銀行のことには俺以上に疎いハズだ。俺もあんな方法が有ったとは知らなかったよ。その点だけは褒めておこう」
 「先生」と意味ありげに発音されることも不愉快だ。それに先ほどからずっと続いている貧乏揺すりも祐樹を苛立たせる。
「お褒めに与って恐縮です。開示書類の件ですが、もしお教えしたら、興信所の調査を取り下げて貰えますか?」
 交換条件の積りで言ってみる。結果は50%程度だとは思っていたが。
「さあな…事実がバレた以上は俺もどうでもいいし、田中『先生』の周りを探ると思いも寄らない大きな魚が釣り上げられそうなのでその条件は呑めない…な。
 こんなことなら銀行振り込みにするのではなく直接手渡しの方法を選択すべきだったと後悔はしている。銀行経由だと、彼女が約束を破った場合に切り札になると思ったのが間違いだった」
 本人はニヒルな笑いを浮かべている積りらしいが…実際、最愛の彼が同じ唇の形を作ればさぞかし怖いと思うのだが、色の抜けた明太子のような唇では恐怖よりも笑いを誘う要因にしかならないが、流石に全てを話さない。百鬼夜行の大学病院でそこそこの出世をしただけのことはある。
「そうですか。それは残念です。ただ、先ほどからの会話で私なりに考えたことが有ります。要は香川教授が邪魔だった。それは…」
 白衣のポケットの携帯を操作する。どうせ、証拠として最愛の彼には聞かせる積りのものだ。彼に話していないのは興信所の一件だけなので、それ以外の証拠は多い方が良い。
「黒木准教授を順送りに教授のポストに上げる。医局の人事は、穏健派の黒木准教授のことですから余計な波風は立てないでしょう。すると、皆さんが一個ずつキャリアアップをする。役付きの人間は…となると、その恩恵に与れるのも同様に役付きの人のみ…木村先生ももちろんその一人ですが、医局長もそうですよ…ね?手技が上手いと私が個人的に思っている柏木先生などは役付きではないので、その点圏外です。違いますか」
 彼の表情の変化を読み取ろうとじっと見詰めて質問をする。祐樹が凝視するには値しない容貌だが、この際は仕方がない。端整さには徹底的に欠ける顔だったので。
 「医局長」のところで僅かに表情が変わった気がした。そういえば畑仲医局長は山本センセのお友達だった。となると、畑仲医局長が一枚噛んでいるのかも知れない。医局長の次は准教授だ。
「さあな…それは明敏な田中『先生』に期待するよ。齋藤医学部長の部屋に呼ばれることが何を意味するか親切にも教えてくれた人だ。
 実家の病院の事情も内部情報ではなく、ネットで調べたことを元にして考えたのだろう?その頭脳と推理力を働かせたらどうだ。とにかく、星川ナースの一件がバレたんだから俺のここでの病院人生も挫折だ。その報復を兼ねて、一切はノーコメント」
 山本センセは祐樹から顔を背けた。これ以上言葉を重ねても何も語らないような気がする。祐樹とて時間が有り余っているわけではない。早々に辞去すべきだ。
「では私はこの辺で…先生のこれからのご活躍を陰ながら応援していますよ」
 嫌味を込めて言い、丁寧な――まるで医学部長にする程度の――お辞儀をして部屋を出た。もちろんささやかなイヤガラセだ。この一件でどれだけ最愛の彼が傷付いていたのか少しでも分からせるために。ただ、山本センセには応えないだろうな…とも思う。教授を蹴落とす手段として、コトも有ろうに患者さんの命を引き換えにした人間だ。そんな山本センセにまともな倫理観は残っていないだろうし、祐樹の理解の範疇を超える人間性なのは分かっていた。祐樹が――香川教授を追い落とそうなどとは全く考えては居ないが――もし実行するとしても、患者さんは巻き込まない。弱みを握ってそれを盾に脅す程度だろう。
 行き先はまずは最愛の彼の部屋だ。祐樹の携帯の中に入っている録音された証言をまずは彼に手渡さないといけない。
 早足で病院内――と言ってもスタッフ専用通路だけだが――で教授室に駆け込んだ。黒木准教授の手伝いをする約束も有る。
 教授室に盗聴器が仕掛けられている可能性は有るが、盗聴しているのは山本センセに依頼された興信所の社員だろう。山本センセと自分の会話を盗聴しても価値はない。
 教授室をノックすると、物憂げな様子を無理に押し隠しているような声で応答が有った。他の人間には分からない程度だが。
 部屋に入ると、彼の澄んだ瞳が驚いたように大きくなる。祐樹が彼を訪ねたことが予想外だと言わんばかりに。瞳を大きく見開いてはいるが、どこか落ち込んだ色を滲ませる彼の眼光の弱弱しさが気になった。が、滅多なことは話せない。部屋に入ると彼の傍に近付く。黙ってという合図を指でしながら。
 一歩一歩歩みを進める。彼の眼差しは暗いままだった。祐樹が近付くにつれ、彼の体が強張って行くのが分かる。そうさせているのは祐樹だとは分かっているが、今はどうしようもない。申し訳なさについ視線を外しそうになる。彼の悲愴な色を含んだ眼差しが祐樹には辛すぎて。ただ、ここまで黙ってきたからにはケリが付くまではこのままにする方が良いと必死で自分に言い聞かせる。
 彼の横に立ち、パソコンの電源が入っているのを確かめると、文書入力ファイルを呼び出した。横の彼は当惑した瞳で息を殺して祐樹を見詰めている。
『山本センセから証言を引き出しました。医学部長に新規の証拠として必要とあらば提示して下さい。操作方法は…』
 機械の操作方法は入力して説明するよりも、実際に手で教えた方が早い。携帯電話を白衣のポケットから取り出し、彼の手を握る。いつもよりも冷たく、そして強張っていた。
 指先に口付けしたかったが、彼が何らかのリアクションを起こしてはマズイと自粛する。
『このボタンで再生です。試してみて下さい』
 彼の幽かに震える指先がボタンを押す。ポケット越しというハンディはあまり感じさせない音で祐樹と山本センセの会話が再生される。祐樹も携帯電話の録音機能は使ったことがないので、この電話は彼に預けようと思った。
『操作方法は分かりましたね?斉藤医学部長の英断を期待しています。頑張って下さい』
 そう入力して、携帯を彼の机上に置いて部屋から出ようとすると、彼が手招きをする。声を出してはマズイということは聡明な彼はとっくに気付いているハズだ。
 彼は、自分の携帯電話をポケットから出して祐樹に手渡した。冷たい指先が祐樹の指に触れる。切なげな眼差しで祐樹を見た彼は、机上のメモ帳に「医学部長室に居る時は、祐樹の携帯からそちらの携帯に電話を掛ける。もし祐樹が心配してくれるなら、聞いていて欲しい」と震える指先で語句を綴る。
 力付けるように――効果の程は分からないが――微笑して彼の携帯を受け取ると黙って部屋を出た。もっと彼の部屋に居たかったが、黒木准教授の手伝いも有ったのでそそくさと出てきてしまった。

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【本編はこちらから】





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 24話までにはキチンと告白させますので、しばらくお待ちくださいませ~!

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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