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「がんじがらめの愛」第一章-23

 そう言い切ってしまった後、室内には静寂が立ち込めた。父母は心配そうな、だが決然とした目で黙って自分を見ていた。 
 想定内の父母の怒りであったが、矢張り実際に叱責されてしまうと予想以上に心に響く。
 但し、片桐の事を諦める事も不可能なように思える。
 今夜は眠れそうにないな…と自嘲的に思った時、扉の向こうで使用人の声がした。
「晃彦様、家庭教師の先生がお見えで御座います」
 母は安堵した微笑を浮かべた。
「先生がいらしたのですから、お待たせしてはいけませんよ。折角貴重な時間を割いて来て戴いている帝国大学の英語の先生なのです。早くお部屋に戻らなくては」
 父は厳しい顔をして、ただ頷いた。
「では失礼します」
 そう言い置いて静かに部屋を出た。
 案の定定刻に寝台に入っても眠りは訪れなかった。朝が来るまで自分の考えを整理しようと努める。自分の立場や父母の思惑、そうして片桐家への配慮。そして片桐への恋情。しかし、中々纏まらないまま、夜明けが訪れた。起床にはまだ早いと思ったが、制服に着替え、朝食用の部屋へ行った。支度をしていた女中が二人、驚いたような顔で挨拶してくる。
「早い時間で済まない。珈琲だけを用意して欲しい」
「畏まりました。晃彦様」
 屋敷の人間も只ならぬ雰囲気を察しているのだろうかと苦笑がわく。父母とマサ、その人らの思惑で屋敷が動くのが現状だ。嫡男である自分もまだ学生の身分なので父母の庇護の下に生きている、その事実は自分で動かせるものではない。片桐も同じだろうと思った。 

 彼の事を本当に大切に想うのなら、自分の気持ちは伝えてはならない。

 寝台の中で決意した事だったが、本当に守りきれるかどうかは自分でも分からなかった。

 いつもより早い時間に屋敷を出た。もしかしたら片桐と二人きりで話せるかも知れないと一縷の望みを込めて。そして今は、父母やマサの顔を見たくないと思った。女中がマサを呼びに行く前に屋敷を出なければならなかった。
 教室に近付く。密かに気配を窺った。中に誰かが居る。片桐だと良いと一瞬祈りを込めてドアを開いた。
 祈りが通じたのか、それとも偶然か。先着していたのは片桐だった。片桐も驚いた様に大きな目を見開いた。白い顔がいつも以上に白かった。
「お早う。話が有る。此処では話し辛いから、中庭に行かないか」
 そう言ってきたのは片桐だった。頷いて横に並んで歩き出した。彼も無言、自分も何も言えなかった。
 中庭の大きな楠の木に凭れた片桐は、華奢で器用そうな人差し指を唇に当てていた。黙ってその様子を眺める。
「昨日、御父上に何か言われただろう、オレの事で」
「お前は迷惑だったか」
 逆に聞き返す。
「いや、オレは妹に一部始終を話したくらいだから、何の事はない。両親は鮎川公の園遊会に呼ばれただけだと思っていらっしゃるだけだ。ただ、お前の事が気になった。屋敷で叱責されたのではないかと」
 無言を通すしかなかった。それを察したのだろう、唇に当てていた指の数が次第に増え、握り拳の形になった。血管を浮き上がらせる白い手首を微かに震わせて、静かに言った。
「もう、オレとは関わらない方がいい。今まで有り難う」


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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

コメント

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Re: No title

R様
いえいえ、やふー過去記事を加筆修正だけしてアップしているだけです…。
それよりもテンプレとか、皆様のように素敵なレイアウトが出来ないのが悲しいですネ。

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Re: No title

Rさま(いや、Lさまでしょうか~?)
リンク有難うございます(嬉)
こちらこそ、どうかよろしくお願い致します。

> 「がんじ」の会うこともままならぬ二人にはどれだけ涙したことか……。

 有難うございます~!!今読み返すと赤面の至りですが(ちょこちょこっと変えてます)といってももう完結した話なので、話の筋は変えられませんが。。

> わたしは目次は記事へのリンクを手張りで作成していますが、

 も、目次ってどうやって作ればいいのでしょう(TT)さっぱり分かりません(滝汗)
プロフィール

こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
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