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「気分は、下克上。」第十五章-14



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「このステーブン氏というのは?アメリカ時代に仲良くなった人ですか?」
 他は祐樹も知っている病院関係者や杉田弁護士だったので…一人だけアメリカ人の名前が登録されていることに何となく違和感を持った。彼がアメリカ時代にも余り交友関係は広げていないと容易に察することが出来た今、そこはかとない疑惑が祐樹の胸にわきあがる。努力して普通の声で聞いてみた。
「ああ、LAの病院の優秀な内科医だ。私が勤務したての頃から良くしてもらった」
 その時のことを思い出したのか懐かしそうな顔をする彼にさりげなく質問を投げかける。
「その方は…同じ性癖の持ち主ですか?」
 彼がアメリカ時代に関係を持った人間は一人、それも殆どいきずりの男性だとは知っていたので、ステーブン氏ではないことは確かだ。
「いや、彼は女性が好きだ。ただ、私が女性に恋愛感情を持てない人間だと察したら、その手のクラブに連れて行ってくれたが…。それに、随分親身になって私の恋愛相談を聞いてくれた…な。今でもEメールで連絡を取っている。私が祐樹に振られたら、アメリカの病院を紹介してくれる手筈になっていた…」
 いささか面白くない気分で聞いていた。異性愛者だとしてもひょんなキッカケで男性に恋愛感情を抱くことだって有り得る話だ。それに、過去の恋人が皆女性ならばなおのこと――祐樹のような性癖の持ち主は出会って直ぐに肉体関係を持つことのほうが多い――こういう思考回路を持つということも考えられる。
 友達として親しくなって信頼を得てから告白する…というパターンを。
 それにソノ手のクラブに連れて行けるというのは、そんな店も知っていたということで。
 祐樹の疑惑はとめどなく膨れ上がる。が、彼は信じられないほど恋愛感情については分かっていない。彼が淡々と語っている以上、祐樹がこれ以上の質問をしても無駄というものだろう。ステーブン氏がもし彼に片思いをしていたとしても、彼はきっと気付かないだろうと確信を持って断言出来る。
 その時、彼の手にしていた携帯電話が着信を告げた。彼の細い指が瑞々しい色香を放って携帯を触っている。
「黒木准教授からだ。出てもいい…か?彼が電話を掛けて来るのは初めてだ」
 プライベートな時間、しかも恋人と過ごしているのに仕事の話をするのはマズいと初心な彼でも分かったのだろう。ここで止めるのも野暮だと思い頷いた。それにこんな時間に、しかも初めて電話を寄越したという点も気になる。
 彼の携帯を触る指はまだ情事の余韻を残していていつもよりも薄紅色をしている。携帯電話を耳に当てて会話をする――そんな日常生活ではありきたりな動作でも、彼の仕草は妖艶かつ清楚な香りを放っている。
 会話の断片を聞きながらうっとりしていたが、通話を続ける彼の顔がある時から曇ってきていることに気付いた。何かまた良くない知らせがあったようだ。今度は一体何だろうかと不安に駆られる。
 通話を終えた彼は、携帯電話をベッドサイドの机に几帳面に置くと溜め息を吐いた。先ほどまでの色香を漂わせるものとは明らかに違っている。聞いていいものか…一瞬迷ったが、彼がらみのトラブルなら何とかしたいと以前よりも強く願うようになっていたので。
「黒木准教授は何を?」
 彼の細い肩を強い力で抱き締めて聞いた。
「大まかに分けて二つだな。
 一つは辞表を提出した山本先生と木村先生、そして辞職を勧告された星川ナースの再就職先を世話したということ。彼も一連の医局の騒動に間接的にせよ関わってしまったので責任感に苛まれている。それで佐々木前教授が現在センター長――院長の異名だが――に就任しているE心臓センターに再就職させることにした…と。佐々木前教授に全部事情を申し上げたら佐々木先生も責任を深く感じられたそうで。両先生には心臓外科医としての再教育と、星川ナースには厳重注意の上彼女本来の運動能力を活かした手術室ナースとしての活躍をさせると。佐々木前教授の目は誤魔化すことが出来ないだろうし、彼女も医療従事者を目指した時の使命感を思い出してもらうように徹底的に再教育すると。給料も、心を入れ替えるまでは正規の給料ではないそうだ。三人はそれでもしぶしぶ納得したらしい」
 E心臓センターという名前には聞き覚えが有った。佐々木前教授がセンター長を勤めていることは初耳だったが。
「『E心臓センター』は最近出来た循環器系の専門病院ですよね?手術もなかなかの業績を上げているとか。確か琵琶湖のほとりに建っていて、風光明媚な上に病院食も栄養士の指導を受けた上で腕の良い板前さんが作るとか…」
「そうだ…私も最近、佐々木先生から挨拶状を貰った。患者さんの『生活の質』を最優先で確保するように建物も『いわゆる病院』といった感じではなく、ホテルのように快適に作ったそうだ。日本では馴染みがないが、手術もその病院専属の医師が行うだけではなく、患者さんの希望があればアメリカなどの医師を呼ぶことも可能な病院にした…と。これまでの病院の概念を覆す新しい取り組みをしているそうだ。
 そういえば、祐樹と一緒に星川ナースの手術妨害のビデオを佐々木前教授に持って行ったことが有ったな。その時、佐々木先生は『考えていることがある』と仰っていたが、このことだったのだな」
 彼の瞳の色に懐かしさの色が浮かぶ。きっと、2人で佐々木前教授の自宅を訪問した時のことを思い出しているのだろう。
「画期的な取り組みですよ…ね。貴方も呼ばれるのに相応しい医師ですが…手術は…無理ですよね?」
 自分達は準国家公務員だ。系列病院の手術要請が有った場合ですら手術しても謝礼は貰えない――タテマエだが――。E心臓センターは滋賀県の資産家数人が出資した純然たる私立病院だそうだ。旧国立大学の教授クラスの人間がアルバイトをしてはならない。研修医の自分なら黙認される行為ではあるが。
 彼は怜悧ではあるが、幾分曇った表情で頷く。
「祐樹がもっと執刀医として手術数をこなせば、私も推薦状を書くのはやぶさかではないが」
「それで…二つ目とは?」
 彼を陥れようとした三人が佐々木前教授にしごかれようが、琵琶湖に突き落とされようが知ったことではない。この件で彼が顔を曇らせる要因はなさそうだ。話を促す。
「黒木准教授の同期の某准教授が耳打ちしてくれたらしい。ウチの医局でのトラブルを聞きつけた内科の今居教授が今度の教授会でこの件を徹底究明すると息巻いていると」
 内科の今居教授は齋藤医学部長と犬猿の仲だ。今回は斉藤医学部長も教授会に出席するハズだが…医学部長から招聘を受けた香川教授(と病院関係者は思い込んでいるが、実は佐々木前教授の推薦の上での人事だ)は齋藤派と看做されている。今度も吊るし上げ教授会になるのか…と暗然たる気持ちになった。
 その表情が顔に出たのだろう。彼は祐樹の顔に澄んだ眼差しを近づけて自分自身に言い聞かせるように涼やかな声で言った。
「大丈夫だ。この前は…祐樹のことで悩んでもいたのでかなりの衝撃だったが。今回は、祐樹が私を愛してくれていたことが分かったのでこの程度のことは乗り切れる」
 落ち着いた声と表情だったが、祐樹としてはとても気掛かりだった。
 ただ黙って彼の細い肢体を抱き寄せた、彼が少しでも安心出来るように。

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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