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「がんじがらめの愛」第一章-17

 園遊会の賑々しさとは異なる静寂な雰囲気が流れた。自分の鼓動だけが大きく聞こえる。小説で読んだ欧羅巴の古城にあたかも二人だけで存在するかのごとき静謐な空気に包まれる。
「加藤…」
 その声にふと我に返った。自分は一体彼に何を望んでいたのだろうかと。動作が止まり、自動的に頷きを返す。言葉を促されたと解釈したのだろう、彼は続けた。
「先程はオレの事を気遣ってくれたのだろう。有り難く思った。」
「それは…あの場には父上もいらしたから…」
「…それは、そうだが…ただ、オレの家にお前が居たらきっとオレの両親も同じような反応をなさっただろうと…そう思うから別に構わない」
「いや、そのような事ではなく…」
 言葉を続けようとしてもどう言えばいいのか分からなくなった。静かに佇む片桐の姿にただ見惚れた。
「そのような事ではなく?」
 唇をなぞる片桐の指が人差し指だけではなく中指も加わっていた。奇妙な、そして落ち着いた空気が二人の間を流れていた。
「ああ。ただ、ゆっくりと話したいと…そう思っただけで…」
「そうか…。この部屋は・・・いや、お前が居てくれるからかも知れないが…とても落ち着くような気がする」
 微笑を浮かべた片桐に、自分の気持ちを伝えてしまうとこの平穏な空気が無くなるかも知れないと危惧した。内心の葛藤は多分彼には伝わっていないだろう。しかし、全てを表現したいとも思った。躊躇いながら一歩彼に近づく。
「俺は…」
 かすれた声で言いかけた瞬間、扉の向こうで声がした。
「晃彦様、こちらにいらっしゃいますか。旦那様がお呼びで御座います」
 マサの声だった。彼女は陰のように父母に付いている。その声に先に反応したのは片桐だった。今までの穏やかな微笑が消え平静な顔をしてすっと離れる。その様子を見て、
「…ああ、ここに居る」
 断腸の思いで今まで心情を振り切るためにも必要以上の大声を出す。本来ははしたない事だとは分かっていたが。
「済まない。父上が…」
「仕様のない事だ。謝るには及ばない。オレはここに居て良いか?」
「ああ、好きなだけ、な。昔、母上とこの屋敷に来た時から俺の気に入りの場所だ。お前も気に入ってくれたようで嬉しい」
 そう言い置いて部屋を出た。
「父上が何の用だ」
 廊下に出て叱り付けるようにマサに言った。彼女は厳しい顔をしている。
「旦那様のご機嫌がお悪いようにお見受け致しました。皆様の前で片桐の家の人間と晃彦様が親しげなご様子でいらしたので。」
「父上がご立腹か…。」
「そのようにお見受け致しました。すぐにお戻り遊ばせ」
 冷酷な現実をに直面する。折角の親密な空気が中断されるのが惜しかった。
 三條の快活な声が響いてきたのはその時だった。



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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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