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「気分は、下克上。」旅行編-29






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 マーライオンは、シンガポールの象徴だ。この国に来たキッカケも彼が観光用の葉書を見たことだった。その実物をまず見るために部屋を出た。彼は前髪をサラリと下している。それに服装は祐樹の贈った大学生が着るような服を着ているので、万が一、元患者さんやその家族といった彼の身元を知る人間も良く似ている他人だろうとしか見えないに違いない。多分、目敏いナースがもし観光に来ていても、「あの」香川教授とは識別出来ないだろうと思える自信は有る。彼が教授総回診で廊下を歩く時は辺りを払う威厳が漂っている。
 しかし今の彼は服装がカジュアルな上に旅先ということもあって彼はとても晴れやかで表情豊かだった。大学生…というのは無理があるにせよ大学院生と言っても通りそうだ。
 屈託のない顔だがどこか妖艶な雰囲気を醸し出しているのは部屋に着いた早々に情交に及んだせいも多少は有るだろうが。
 Rホテルの部屋を出て鍵を掛けた。そのまま何気なくエレベーターに乗ろうとすると、彼の冷たいが先ほどの情事の艶で底光りの光を纏ったしなやかな指が祐樹の指先を制止した。エレベーターのボタンを押そうとしていたのだが。
「多分、そのエレベーターはロビーには繋がっていない…」
「え?そうなんですか?」
「ロビーのエレベーターはきっとこっちだ」
 彼は祐樹の指から手を離してさして考えた様子もなく先に立って歩き出す。ホテルのエレベーターは絶対ロビーに直結していると思いこんでいた祐樹は半ば感心し、半ば呆れた。
「どうして、あのエレベーターではダメなんですか?」
「このホテルは約120年前に建てられた。その後増改築を繰り返して現在に至っているわけだから…日本の老舗旅館のように内部は入り組んでいる。ホテルの平面図を事前に調べていたのだが…それを鳥瞰図に組み立ててみたら、あのエレベーターの真下は恐らく客室にしか繋がっていないと予想される」
 ごくごく何でもなさそうに彼は言って祐樹の手首を左手で掴んだ。情事の火照りを内に秘めて艶めいた指がとても綺麗だった。その中でも薬指は指輪が慎ましい光を放っていてとても良く似合っている。
 しかし、平面のホテルの案内図を元に上から見る視点の変換が直ちに出来るとは…。やはり、まだまだ敵わないな…と思う。まだまだではなくて永久にかも知れないが。
 彼の誘導の元エレベーターに乗り込んだ。一階部分は宿泊客しか入れないエリアと観光客がアフタヌーンティなどを楽しめるエリアに分かれている。もちろん宿泊客用のエリアの方が豪華で、日本での逢瀬の場の例であるホテルを思わせる内装だ。
 そこを通り過ぎる際には不埒なことを思い浮かべてしまった。先ほどの彼の清楚かつ色めいた肢体の残像が脳裏を去らないせいなのか、開放的な旅先のせいなのか…。オレンジ色の照明とふんだんに飾られた蘭を中心にしたフラワーアレンジメント、そしてコロニアム形式の木目調の家具が映画のセットのようだった。
 あの椅子に彼の艶っぽい色だけを纏った肢体を座らせて思うがままに貪りたいなどと。 あの豪華な椅子の手すりに彼の白い脚を片方預けさせて下半身を少し浮かせてもらって彼の極上の内壁を目で、指でそして祐樹自身で味わいたいなど。もちろんそんなことは実行不可能だが。ただ、オレンジ色の照明と飴色の家具に彩られた彼の白く艶やかな肢体は淫らに調和するだろう。
「何か考え事でも?」
 彼は祐樹のことを見ていないフリをしながらも良く観察している。涼しげな瞳で尋ねられたが。まさかこの場で真情を吐露するわけにはいかない。
「いえ、マーライオンが貴方の計算通りか…私もちょっと考えていたもので…。それと、マーライオンの語源を失念してしまったため記憶を辿っていました…」
 咄嗟に誤魔化す。本当は両方とも覚えていたのだが。
「マーライオンは、シンガポールの伝説に出てくる想像上の生き物だ。上半身がライオンで下半身が魚になっているという…ちなみに、日本でもお寺で使われるサンスクリット語が語源で『シンガ』がライオン、『プーラ』が都…まぁ、このシンガポールのことを指している…な」
「サンスクリット語といえば、真言宗のお寺にある意味不明の文字ですよね?我々には馴染みが深いですよね」
 頭に浮かんだ妄念を振り払おうと全く関係のない話をする。彼は通りすがりのホテルマンに流暢な英語で話しかけていた。
「地下鉄でも行けるそうだが、歩いてもそんなにはかからないそうだ。どちらにする?」
 流石は世界三大ホテルの中の一つだ。ホテルマンは営業用の人懐っこい笑みを浮かべて彼の質問に答えようと慇懃な様子で立ち止まっている。祐樹の瞳を覗きこんで聞いてくる彼の瞳の奥にも情欲の熾火がくすぶっている。それはそうだろう。彼の細い腰の内部――祐樹しか許されない場所――に白真珠の雫が洗い流すことなく宿っているのだから。
「徒歩での道順と、その順路は人がたくさん歩いているかどうか確かめて下されば嬉しいです」
 一瞬怪訝そうな顔をしたものの彼はホテルマンとの会話を再開した。
 地下鉄は多分混んでいるだろう。が、日本の地下鉄と同じ構造だと祐樹が見たガイドブックには書いてあった。となると振動も日本のと同じハズで。祐樹の残滓が流れ出てくる可能性はある。徒歩ではそれほどでもないだろうが、途中に人が余りいないとなると日本では絶対不可能な彼と手を繋いで歩けるという利点がある。地下鉄だと人目もあるだろうから流石にそれは無理だ。
「この街のメインストリートのオーチャードロードは人で一杯だが、マーライオンの象までは人はあまりいないそうだ。散歩道だそうだから。それにマーライオンの象を見てから桟橋までがお勧めの遊歩道だそうだ。マリーナ湾の眺めも良いと」
「歩くのは平気でした…よね?聡の今の身体状態を考えると地下鉄の方がイイ?」
 先ほどからそのホテルマンと彼との会話を聞いている限り、日本語は解せない人のようなのできわどいことを言ってみた。万が一日本語を理解出来ても会話だけでは意味が分からないようにはしたが。
「大丈夫だ。歩ける」
 彼は祐樹を潤んだ眼差しで睨みつける。その後詳しい道順を聞いているらしい。彼は礼を言ってホテルマンを去らせた。
 どうやら観光客があまり居ない抜け道を聞いたらしい。万緑と呼ぶに相応しい緑の大きな葉をつける木と花に囲まれた小さな道を歩く。どちらともなく手を握って歩いた。
「もし日本人とすれ違ったら、聡は英語で話して…そうすればこの国には華僑がたくさんいるそうなので…そちらに間違われる方が後々のためです。私は適当に相槌を打つフリをするから」
 耳元で囁くと、耳たぶが濃い紅色に染まる。蘭にも負けないほど可憐で色っぽい。
 そろそろ猛々しい南国の太陽も傾く気配を見せている。
「分かった。その方が恥ずかしくなくていい…」
 彼の口調も擦れがちだ。
「後はどこに行きたい?
「イスラム街の…モスクにも行ってみたいが…やはり今は…無理だな…。何となく神罰が下りそうだ」
「そうですね…やはり身を清めてから行くべきでしょうね…。信者ではないですが、一応神域ですから…。
 私はその身体の方が魅力的ですが。表情もいつもに増して艶やかで…吐く息まで色っぽくてとてもとても惹かれてしまいます。今すぐに抱きたいほど。
 濡れた声を流し込むと彼の肢体が幽かに震えた。
「あ、あれだ。やっぱり計算通りの大きさだった…これはこれで可愛いが」
 彼は晴れやかな声で言う。一時の妖艶さが払拭された爽やかさだった。その後ろに置いてあるマーライオンのミニュチュアも手ごろな大きさだった。
 確かに白い象は彼の試算通り8mくらいだ。海の向こうに太陽が沈みかけている。と、その象がライトアップされた。
 ホテルマンから聞いた遊歩道から桟橋へと移動する。確かに余り人が居ない。
「しばらく、ここで見て行きましょう」
 人の気配がないのを確かめて彼のベルトで強調された細い腰に手を回した。




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綺麗なお花が満開の「ごんべえ」様から画像をお借りしております。
「ごんべえ」様のブログはこちら。綺麗なお花にグルメ記事と素敵なポエムが沢山有りますので~!「ごんべえ」様、いつも有り難うございます~!

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 同好の方は思いの丈を語って頂ければ嬉しいです。15禁表示というほどのものではないような気がするので、エッチはしていないし、愛撫もしてないので。でも妖しい雰囲気ですが。



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 今日は無性に小説が書きたくて、ヘロヘロっと二本更新です。シンガポールに旅行した気分になって下されば嬉しいです~!
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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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