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「がんじがらめの愛」第一章-14

 園遊会当日が来た。開催時期が冬なので主催者の鮎川公爵は庭ではなく、広大な屋敷内で行うらしい。父母と共に屋敷に入った晃彦はさり気なくは振舞ってはいたが内心では落ち着かない気持ちで片桐の姿を探していた。
 周りでは鮎川公爵の敬意を表してか、男性は園遊会用のタキシードではなく燕尾服を着用し、女性は昼間なので洋装の方たちは肩や胸を出すことのないイブニングドレス姿で和服の方たちは訪問着か振袖だった。
「流石は鮎川公爵ですわね。来年新館完成予定の帝国ホテルの料理長に内定したシェフを呼ばれてのお料理のお振る舞いですわよ。公爵家のシェフよりも味が良いと仰って」
「まああ、では早速お味をみてみませんこと。父も味にはうるさいものですから」
 そう貴婦人に声を掛けられた母は父を伴って場所を移動した。晃彦は片桐が来るのを待つ為にその場を動かなかった。客達を見遣るともなく眺めていた。知り合いは今のところ来ていないようだ。周囲の会話を聞くともなく聞いていた。煌びやかに着飾った令嬢達が声を掛けてくるが一言声を掛けると失礼のないように遠ざかる。
「そうそう、志賀先生が新しい話を執筆中だそうだね」
「彼の作品は学習院を卒業したとは思えないくらい庶民的な話が多くて。何と言っても夏目先生の作品の方が気品に満ちていると私などは思うのだがね」
「それも一理ありますな。庶民と言えば、不景気で困っているそうじゃないか。大変そうだね。お気の毒としか言いようがない」
「庶民が貧困で困るのは別に構わないが、不衛生な彼らのことだ。疫病でも流行らされては困るね。スペイン風邪のように流行されてはこちらまで迷惑する」
 その紳士たちは他人事のような口振りで不況のことを口にした。
 片桐のことを思い出す。彼は庶民の味方になって物事を考えていた。そんな彼にこのような話を聞かせなくて良かったと思った。そして、庶民の貧困を何でもない様子で話している人間に対して嫌悪感を抱いた。以前だったら別にどうとも思わなかった会話だったのだが。
 片桐が幾分、緊張した面持ちで部屋に入って来た。燕尾服姿の彼を見るのは初めてだ。髪も後ろに流している。その姿に心臓が一跳ねした。
 ふと、周囲を見回すと、令嬢達も袖を引き合って囁いている。あまり社交界に顔を出していない彼を知らない令嬢も多いはずだ。
「あの方、どちらの」
 などと言う声が聞こえてきた。
 失礼にならない速度で歩き彼に近づく。
「来てくれたのだな。嬉しいよ」
「ああ、でもオレはこういう場所は慣れていないから失礼があってはと気がかりでならない」
 唇に人差し指を当てながらそう言った。
「そのような事は気にしなくても大丈夫だ。さっきお前が入って来た時、令嬢達がざわめいたぞ」
「場違いが出て来て珍しいからだろう、きっと」
「いや、そんなことはない。似合っている。その格好もその髪も」
 そんな会話を交わしていると、華やかな梅模様の京友禅の振袖を着た令嬢が近づいてきた。
「晃彦様、その方を紹介して戴けないこと」
 優雅に微笑んでそう言った。






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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
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