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「純愛と妄執の揺れる心」第一章-5



 とってもとってもビックリした。お目目がまん丸になっていると思う。
 直哉お兄さんは、さっきのコーヒーの顔よりももっと苦いものを飲んだ顔だったんだけれども、僕の顔を見てコーヒーにお砂糖をトバァってかけたみたいに、みるみる苦さが消えてちょっと笑ってくれた。
 大急ぎで書く。
―― おにいさん おこって ない ??? ――
 お兄さんのことを知りたくて、聞いてみただけなのに…お兄さんにあんな顔 させた。
 ちょっと涙が出た。お兄さんが怒って僕を嫌いになったらどうしよう?
 兄さんからは答えがなくてどんどん焦る。
―― おこって るよね。ごめん ――
 心臓がドキドキして、お兄さんの答えを待っていると、涙がほっぺをツーって流れているのが分かる。
―― もう聞かないから、ごめんなさい ――
 鼻の奥もツンツン言っている。こんな時に声が出れば書いて謝るんじゃなくてキチンと謝れたのに…そう思った瞬間…何だかいつも病院の先生がノドの中に何だか分からないけど、変な物差しみたいなもので押さえてくれて「ここを動かせるかい?」と聞いて下さったところが動くような気がした。病院では全然動かなかったけど。あ、今なら動かせる…かもっ!と思う。やってみようか。イチ ニ サ…
「怒ってない。泣かせてしまってこっちがゴメンなさい」
 いつもの優しい笑顔に戻ったお兄さんは涙の跡を指で拭いてくれた。テイッシュの箱からテッシュペーパーを取って、お鼻をチーンしてくれる。あ、今のお母さんもしてくれたっけ。
―― ホントに、ホントに怒ってない? ――
 だっていつもは優しいお兄さんの顔がとってもとっても怖かったんだもん。
「怒っていない。純一が聞かなくてもいつかは教えるつもりだった。大谷園長先生に純一の世話を頼まれたのも、同じような目に遭った子供同士で仲良くしなさいってことだろうと思ったし」
 オビオビして直哉兄さんの表情をずっと見ていた。ホントに怒っていないか確かめようって。お兄さんはどんどん笑顔になっていく。良かったぁ。
 お兄さんは、僕の頭をクシャっと撫でてくれる。
「純一が嫌じゃなければ聞いてくれるか?」
―― いいの? ぼくは、聞きたい…な。だってお兄さんのこと全ぶ 知りたい ――
 お兄さんは何だか緊張した顔をしている。どうしてそんな顔をするの?
「眠れない時のお薬って精神科か、心療内科に通っているってことだろう?」
―― そう。お声が出なくなった時に キュウキュウ車で運ばれたおっきな病院のセイシンカの先生が下さったの ――

「そうか、じゃあ先生と色々なお話しする時間ってある?」
 大きく頷く。でも僕はお兄さんの話しが聞きたいなぁ。
「僕も有る。その先生が、『辛いかったことを人に話せるのなら全部話しなさい。いや、それが私でなくてもいいんだ。直哉君が話したいと思える人が現れたらでいい。それが治療の第一歩だ』って純一になら話せるかなと思ってた。けれども純一の方がもっと病気は重いからそれは気の毒かもなって」
 お兄さん、お医者さんの言葉の物まね上手だなっと、ちょっと思った。言葉が難しくて分からないところもあったけど、お兄さんが僕に話してお兄さんがそれで病気が治るんだったら、僕いくらでも聞くよ。ちょっと怖かったけど…書いてみよう。あ、やっぱり手が震えてるや。だって、これを書くと真っ赤な血を流したお母さんの姿が頭の中に出てきちゃうから。
―― 見たの? ――
 僕が震えているのをお兄さんも気付いていた。お兄さんの身体が僕をギュっとお母さんみたいに抱き締めてくれた。お兄さんの身体はポカポカで、耳で聞く心臓のトクトクという音が僕の震えを持って行っちゃったみたいだ。お兄さんの心臓の音が波みたいに、僕の震えがピーチサンダルみたいに。僕のピーチサンダルは、お母さんと海水浴に行って波に持っていかれちゃったんだ。それと同じかなぁ?
「見なかった。僕はその時、お祖父様の所に預けられていて。パパは病院を経営していた」
―― びょういん けいえい? ――
 経営は分かるんだけど…お母さんもエステを経営していたから。でも病院って経営するものなんだ。じゃあ、社長だったのかな?お母さんと同じ?
「ああ、パパは医者で、自分で病院を持っていて…って分かるかい?」
 分からないと答えるともっと詳しい説明を絶対にしてくれそうなとっても優しい目だった。
―― うん。分かる。お医者様だった?とってもえらいいパパだね ――
 直哉兄さんはちょっと苦い…そう、お母さん好物のゴディバのビターチョコをちょこっと舐めた時の僕みたいな顔をしていると思う。
「そうでもない。純一が思っているのはドラマに出てくるお医者さんだろう?」
 そうだった。でも、もう好きだったああいうドラマは観られないな…だって、ちょっとしか映さなくても血が絶対出てくるもの。『メス クーパー コッフェル 』とかってお医者様が手術をしているドラマ。
 ブンブンと頭を振って頭に浮かんだ絵を頭から追い出そうとした。お兄さんは僕を暖かい目で眺めていた。ちょっと笑っていたけど。
―― そう、手じゅつ とか してた ――
「ウチは美容整形外科だった。つまりね、女の人を綺麗にするための医者で、患者さんを治す医者ではないんだ」
 え?女の人を綺麗にするためのお医者さんなんているんだ…
あ!でもそれじゃあお母さんのお仕事も「女の人を綺麗にする」って言ってた!お母さんはお医者様じゃなかったけど、「女の人を綺麗にする」のは直哉兄さんのパパと、僕のお母さんは同じようなお仕事なのかな?よく分からないけど。
―― お母さんも 女の人を きれいにする 会社を経営していたよ。同じ? ―― 
 同じ仕事だったら直哉兄さんともっと仲良くなれるかな?成れたらいいな!
「え?純一のお母さんは何を経営してたの?」
―― えすて って 言ってた ――
「ああ、エステね。同じじゃないみたいだけど、親戚みたいなものだと思うよ」
―― しんせき って? ――
 同じじゃないって言われて、どうしても「シンセキ」という言葉の意味が知りたくなった。
「血のつながりのある人ってこと」
 わぁい。じゃあ、全然知らない人よりも仲は良いよね。でも僕には親戚は居るんだけど、お葬式にも来なかった。でもきっと僕じゃない人の親戚は仲が良いよね?良くなかったら嫌だなぁ…。
―― しんせき って 仲はいい? ――
 ちょっとドキドキした。
「普通はね。僕の家もパパの病院が上手くいっている時はお祖父様やお祖母様や一族の皆とも仲が良かったし…」
 えと、えと、お祖父様っていうのは兄さんのパパのパパだったんだっけ?塾では習ったんだけど、僕の家族はお母さんだけで…他は知らないからピンと来なかった面接練習のレッスンで、覚えたような。
―― 仲はいいんだね? ――
 僕がきっととっても必死に聞いているから可笑しくなったのか、兄さんの表情が少し明るくなる。わぁい。
「良いよ」
 もっとわぁいだ。直哉兄さんのパパのお仕事とお母さんのお仕事が仲良しだったなんて。
「美容整形というのは、色々なことをするんだ。顔のシワを取ったり、鼻の形を良くしたり。分からないことはない?」
 シワを取る?鼻の形を良くする?分かんないけどいっか、別に。きっと大変なお仕事なんだろうな…。
―― うん 分かる ――
「純一は頭が良いんだ。それでね、純一のお母さんの会社もそうだったと思うんだけど、会社は綺麗な方がお客さんは入って来るとか…聞いている?お母さんから」
 えへ。褒められた。それにエステは雰囲気が大切なのとか言っていた。多分雰囲気が綺麗ってことかな?
―― 聞いた こと ある ――
「パパは病院の大改装工事で銀行から借金をしていた。その返済が始まって間もない時に患者さんから手術に失敗したからお金で弁償しろって裁判所に裁判を二件も立て続けに起こされて、患者様が来なくなった。あ、この先大丈夫かな?話しても?」
 とても心配そうに僕を見るお兄さんの目が話したそうなのは何となく分かった。お兄さんの病気が治るんだったら、お母さんを思い出してもいいや!と思った。きっとお兄さんが傍に居てくれれば怖くなんてないっ!
―― 大じょうぶ お兄さんが話したかったら 話して ――
 頭を撫でられた。こうしているととっても落ち着く。お兄さんの心臓の音がトクトク言っている。分からない言葉だらけだったけど。お兄さんはたくさん言葉を知っててスゴイなぁ。

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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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