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「気分は、下克上。」初詣編~お見舞い~2





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「聡さん、私が祐樹に不満があれば遠慮なく申して下さいと指輪を託した日に言いましたよね?」
 先ほどの母とのアイコンタクトに失敗したのかもしれない。母がいずまいを正して言った。
「はい、承りましたが?」
 彼は怪訝な顔をしている。
「連絡がないというのは、こんな愚息に不満がないということですか?我が儘でいい加減で口八丁で世渡りをしているだけの祐樹に?…まぁ、外面も良いですし、頭も聡さんに比べれば格段に劣るでしょうけど…世間様には頭脳明晰だと思われてはいますけど…私から見れば欠点だらけですのに…」
 どんな息子の評価だ…とゲンナリするがえてして身内の評価は辛いものだ。母の口調は彼を心の底から案じているのが分かってしまったので祐樹としては黙るしかない。
「全く有りません。本当です。
 ただ、この病院には仕事絡みでしかお伺い出来ず、お見舞いもゆっくり出来なかったことは申し訳なく思っています。もっとお母様とはお話ししたかったのですが…。運悪くナースさんがいらしたりでなかなかお話しする機会がなかったもので…」
 彼は心の底からそう思っている――付き合ってから、彼のことはずっと見ていた。仕事の交渉などで心ならずも嘘を吐(つ)く彼の口調の僅かな変化には気付くことが出来るくらいにはなっている。彼を観察していたのは正確に言えば彼が帰国してからずっとだが――表情と口調で静かに言う。
 母はまだ疑惑の視線を彼に向けている。とはいえ少しは安堵した表情だったが。
「祐樹、貴方は一応この病院でも研修医とはいえ顔は効くのでしょう?私の病気の手当てくらいは出来るわよね?一時帰宅の許可、貰って来て来て下さい」
 本当は彼の方が病院には影響力がある。ただ、今の彼は完全なお忍びで、医局にあまり顔を出したくないことも母は知っているからこその息子指名だろう。
 数回の手術の後、彼の名前と神業の手技は病院内に知れ渡り、個室に居るとはいえ以前居た――個室に移れたのも彼の心配りのお陰だ――部屋の患者さんとは暇つぶしのお喋りをしている母も当然良く知っている。
「外は寒いですし…お母様の御身体に障っては…」
 彼が控え目に言う。が、本心で止めているというわけではなさそうだ。母の容態についてはカルテを全部持ち帰り、彼専属の内科の長岡先生や、内科の講師の内田先生とも祐樹も加えて色々アドバイスを受けているので良く知っているハズだ。
 ちなみに母の手から体細胞は入手済みで、再生医療の研究が進めば腎臓を作ることも出来そうな感触だった。
「折角のお正月ですし…愚息はともかく名にし負う香川教授が同行して下さるのでしたら、外に出ても心強いです。お節料理の作り方を書いたノートも私が直接渡したほうが安心ですし、初詣にお参りしたいお宮様もありますし…ご一緒して戴けますか?」
「はい、お母様のご容態さえ宜しければ、喜んで」
 彼は祐樹の表情を確かめた後に答えた。
「では、決まりね。祐樹、外出許可を貰ってきて下さい」
「はい、はい。分かりました」
「『はい』は一回でいいんですよ」
 肩をすくめて病室を出て行こうとすると彼も後に続く。外出許可を貰うには本人か近親者が申し出るのが普通だが、お正月ということもあって担当医が不在という可能性も高い。そうなればナースが他の医師に許可を貰うことになるかもしれない。その医師がお役所仕事の事勿れ主義なら厄介だ。その点を彼は見越したのだろう。彼なら病院長も動かせる権力は持っている。普段はそういう種類のごり押しはしない人なのに、母の件では祐樹以上に積極的に動いてくれている。多分肉親のえにしが薄いこの人は祐樹の母の存在がかなりの救いになっているに違いない。
 祐樹と並んで歩いてナース・ステーションまで行く。この廊下も並んで歩くことはなかなかないので新鮮だ。仕事絡みで来た時は彼が先頭を歩むのが社会的地位から言って当たり前なので。
「お母様がお元気そうで良かった、本当に。そういえば、縦の物も横にしないって本当なのか?」
 彼の唇が楽しそうに弛んでいる。
「そういえば…そうですねぇ。母は仕事で忙しい時も家事は完璧にこなしていましたからツイそれに甘えていました」
「しかし、以前お邪魔した祐樹の部屋は比較的綺麗だったが…」
「1人暮らしだと、放っておくとどんどん物が溜まって滅茶苦茶になります。日を決めて掃除をしていただけですよ。貴方のように勝手に手が動いて綺麗にする特技は残念ながらありません。ゴミ溜めにならないように瀬戸際で食い止めていただけです」
「特技…なのか?手を動かしていないと何となく落ち着かないだけなのだが…。貧乏性なだけだと思うのだが…」
 ナース・ステーションでは彼が系列の大学病院教授という錦の御旗を使うことなしにあっさりと一時帰宅の許可が出た。母の病気が週に一度の透析しか必要としない腎炎だったので本来は年末年始に帰宅が許される病気だったからかもしれない。まぁ、祐樹も研修医とはいえ医師の端くれだということも許可に寄与したのかもしれないが。
 それに執刀医として呼ばれた彼は第一助手として祐樹を必ず指名し、この病院に招かれているので実力以上に買い被られている可能性もある。
 ナースが難色を示したら外に居る彼を呼ぶことにしていたが、その必要はなかったのは助かった。彼が大学病院の教授として有りがちな傲慢で我が儘な人間だと思われては祐樹の立つ瀬がない。彼も病院内でいつも着ている白衣やスーツではなく、ごくラフな格好や前髪を下した姿だったので、病院関係者には気付かれてはいないことにも安堵する。
「許可を取ってきたよ。一時帰宅で良かったんだね?」
 母の病室に戻ると、母は外出着に着替え、口紅だけの薄化粧を済ませていた。とはいえ、長く入院していたのでコートはない。それを見て取った彼は自分のダウンジャケットを母に着せ掛けている。
「済みません。でも聡さんが寒くないかしら?普通は実の息子が貸してくれるものだけど…誰に似たのかホントに気が利かないんだから…。それにつけても聡さんはとても優しいねぇ」
 母の憎まれ口をやれやれと思って聞いていた。母は祐樹のダウンジャケットよりも彼の上着の方が嬉しいハズだ。
「いえ、車で来ましたから…玄関近くに停めてあるので少しなら大丈夫です。幸い私は滅多に風邪も引きませんし…職業上インフルエンザのワクチンも優先的に接種済みです」
 律儀に答える彼は心なしか嬉しそうだ。そういえば彼が風邪を引いたことはなかったなと今更ながらに思う。
 意識したことはなかったが、逆算すると祐樹も9年ぶりに実家に帰ることになる。病院内は閑散としていて、行き会う人も少ない。三人で歩いていると本当の親戚同士のようだった。
 出口でさり気なく祐樹のマフラーを彼に渡した。着せ掛けても良かったが人目のある所での過剰な接触は彼の意に反することなので。感謝の眼差しを一瞬投げかけられて祐樹の胸も温まる。
「先に行って車のエアコンをつけて来るので、少し待っていて下さい」
 彼は小さく頷くだけだったが。
「聡さんが寒くないように最強にしているんだよ」
 母は祐樹の背中に向かって言う。
 車に近付いてハタと気付く。2ドアの車の選択が裏目に出た。この場合、どちらを助手席に座らせたらいいのだろう?

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 体調不良のため(まだ治りません…)に動かしやすいこちらのお話しに逃げてしまいました。スミマセンです…。小説書き様なら分かって戴けると思うのですが、新しい話を書くのと、一年以上連載(?)して馴染みが出来たお話しだと断然書く気力体力が楽なもので逃げてしまっています。新作は、この繁忙期が終ったら必ず書きますので。
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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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