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「気分は、下克上。」 春-44

「はぁ?仰っている意味が良く分かりません。女性の上司のお部屋を貸して頂いたのなら――まあ、そんな軽率なことは絶対に致しませんが――あらぬ憶測を招くことも有り得るかとは思いますが、同性同士です」
 笑い飛ばそうとして、心外そうなスパイスを含ませた天衣無縫の笑顔を作ったが、成功したかどうかは分からない。何しろ相手は想像を絶する権力闘争に勝ち残った絶対的勝者なのだから。
 こうして、病院長室で二人きりで話していることさえ信じがたい出来事だ。
 斎藤医学部長は演壇で演説する姿が一番しっくりくる。そういえば祐樹が大学を卒業した時も式場である大講堂で祝辞を重々しく語っていた。祐樹はもちろん卒業生として会場の後ろの方に座って拝聴していた。
「いやぁ、ご婦人方というのはスキャンダルが大好きな人種らしいですね」
 イキナリ何を言い出すのだろうかと、返す言葉も見つからない。
「大学時代の友人が病院を経営していて久闊を叙するつもりで訪問したのです…たまたま待合室に居たところ、女性週刊誌を片手にご婦人が真剣に議論してらっしゃっているのを呆然と眺めていた経験が有ります。
 曰く『大物俳優のOが中年と呼ばれる年になってやっと入籍したが、あれは同性愛者だとウワサに高いO何某のカムフラージュか否か』と。いやぁそれはもう白熱した議論でした。ああいった活発な議論を是非ウチの病院の各種委員会でもして頂きたいものだと思いましたよ」
 いかにも感心したかのようにしみじみと語ってはいるが、どうせ友人の病院云々は斎藤病院長のフィクションだろう。多忙な斎藤病院長が友人の病院を訪ねることは…百歩譲って本当だったとしても、天下のK大付属病院長様の訪問を受けた病院長が待合室で待たせるなどということは考えられない。そんな無謀な院長は京都には居ないハズだ。やむを得ない急患が搬送されたとしても院長室で待たせるのが常識だろう。
 邦画実写版の興行記録ナンバー1映画に主演した俳優の件はゲイバー「グレイス」でも話題になっていたので多少は知っている。確かに同性愛者だというウワサもあり、恋人は歌手のHだとかいやそれは違うとか色々言われていた。
 しかし、何故こんな下々の下賤なウワサを雲の上の人が知っているのだろうか?どれだけ広いアンテナを張っているのかと驚嘆を通り越して唖然とする。
「はあ、しかしそれは、日本人のほとんどが知っている俳優だからこそ議論の価値があるのでは?」
 斎藤病院長はにんまりと笑って指を組んだ。
「その構図は規模こそ小さいですが我が病院にも当てはまりますね。病院で知らぬ者が居ない花形教授と、ナースの人気度ナンバー1医師ですから」
 墓穴を掘ってしまったことに気づいて唖然とした。一体どうしたらこの泥沼から抜け出すことが出来るのだろう?
 「この紙質でお分かりかと思いますが、院内LANのプリントアウトした用紙です。アクセス制限が最高度に設定されているので、限られた人間しか閲覧出来ない仕組みになっています。
 それに原本は、あるまじきことですが…不思議なことに紛失し、現在の田中先生のお住まいは従来通りに書き換えられているのを今日秘書と私が確認しました。
副センター長をお引き受け下されば、私が責任を持ってこの書類はシュレッダーにかけて、あらぬ憶測を生むようなウワサは絶対に漏らしません。私の第一秘書は若いですが私が話すなと命じれば絶対に口外しない女性です。お二人の関係は、あくまで上司と部下というだけのこと。住所は真実がどうあれ、別々です。
 しかし、香川教授のマンションは立地条件がとても良いので…あの近くには病院関係者が多数住んでいます。偶然に田中先生がその辺りを通りかかっていたとしても、ましてやお二人が御一緒しているところを誰かに見られても、不肖この私が責任を持ってあらぬウワサは抹消すると御約束します。こちらがそれだけ譲歩したのですから副センター長、お引き受け下さいますよね?」
 例の香川教授への反逆事件が医局で持ち上がった頃、憎き山本センセが斎藤病院長に二人の真実の関係を示唆する言葉を吐いていたのを祐樹も携帯電話越しに聞いている。
 当時は一介の研修医で、この部屋には入ることが出来なかったため、最愛の彼に頼んでそうして貰っていた。
 その頃から斎藤病院長は二人の関係を知っていたのだろう。そして、4月に提出した書類を即座にチェックさせたに違いない。そうでなければ千人単位の病院関係者の住所などは分かるわけがない。
 もしかすると、香川教授のマンションはこの辺りでは一番の高級マンションだ。斎藤病院長に近い人間が住んでいるかもしれない。病院関係者が居ないことはあらかじめ確かめておいたが、斎藤病院長の人脈は祐樹などが考えつかないほど広いと思われる。二人が同棲状態なのを知っての上での交渉だということは言葉の端々で感じられた。
 悔しいがチェックメイトだ。関西随一の大学の医学部長兼病院長ともなれば、数々の修羅場をくぐりぬけて来たに違いない。一年生医師が敵う相手ではなかった。
 奥歯を噛みしめながら譲歩を引き出す戦術を練る。


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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
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