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「気分は、下克上。」医師編 春-35

「今、貴方の感じやすいところを触ってしまったら、埋み火に油を注ぐようなものです。貴方の肢体や頭に残っている欲望が燃え広がるでしょう?明日が休みならともかく、通常勤務なので…涙を飲んで諦めます…よ。これ以上したら貴方の身体がもたないので」
 桜色の溜息が一つ零れた。
「祐樹の言う通りだ…本能は『もっと』と言っているが、理性では『止めろ』と言っている。今日は理性に従うのが――不本意だが――正解だな」
 足の裏のマッサージを終える。この人は足の指まで人形師が丹精を込めて作ったかのように綺麗だ。ちなみに手の指の形や長さもそうだが。ただ腕部分は手術をこなしているうちに付いた無駄のない綺麗な筋肉がうっすらと付いて機能美も備わっている。案外外科医は力も使う仕事だ。
「次は…」
「腎臓か?」
「ええ」
 足の裏や腎臓、膀胱などをマッサージすると水分が体外に出やすくなる。目の腫れは基本的には水分なので、その水分を追い出せば完璧だ。
 目の腫れもかなり蒸しタオルとアイスパックで引いてきたが明日は新人医師の歓迎式典だ。教授職も当然出席するし、職場の主だった人間も一堂に会する。その中で、今日患者さんを死なせてしまった彼には今以上の視線が集まる。いつもの怜悧で真摯な顔に一点の曇りもなく参列して欲しい。
「パジャマは脱いだ方が?」
「ダメです。その襟ぐりの大きなパジャマから見える鎖骨の紅い花だけでも理性がグラつきそうになっているのに、脱がれてはなけなしの理性が吹っ飛びます」
 彼は困惑した気持ちと嬉しそうな気持ちを混合した眼差しで祐樹を見詰める。散るのを迷う桜が擬人化すればこんな眼差しだろう。初々しく、そして妖艶だ。
「腎臓の在り処くらいはパジャマの上からでも分かります。痛かったら言ってくださいね」
 2つある腎臓を両手でマッサージしていると彼が吐息を零す。
「やはり、祐樹の手はとても気持ちがいい。しなやかで強靭な指が」
「そうですか?貴方の方がしなやかで強靭ですよ?それにとても――他の外科の先生たちとは手技の正確さと迅速さが桁違いだ」
「そうか…な?桜木先生の方が臨機応変――まぁ、あそこの場合は実際に癌細胞を見ないと事前検査では分からないことも多い――だし、外科医としての腕は最高だと思うが…」
 桜木先生は悪性新生物――いわゆる癌だ――の手術の名手だ。ただ、変わり者のせいで出世には興味がない。
「桜木先生…今でも時々貴方の手術を見学に来て手術のインスピレーションを貰って帰るという噂ですよ?」
「そうなのか?それは光栄だ。私も見学したいが、生憎時間がない」
「教授職は激務ですから仕方ないですよ…そんなに褒めて戴けるのでしたら、後で肩とか首とか後頭部のマッサージもしますね」
「ああ、それは有り難い。祐樹のはとても気持ちがいいから」
 今日はせめてものお詫び――これくらいでは到底お詫びにはならないだろうが――で彼の望むことを全て叶えよう。
「次は尿管ですが…余計な場所は絶対に触りません。それに患者さんに接するようにしか触らないのです。絶対その下は触りませんので…」
 尿管は当然下半身に有る。
「ああ、祐樹のことはとても信頼している。それに余計な水分を排出すると腫れも収まるだろうから…。そうそう…目は赤くなっていないか?」
「ええ、それは大丈夫です。アイスパックで毛細血管を冷却したので…」
 彼は満開の桜も形無しの微笑を浮かべた。
「有難う。ただ、あれだけの涙を出すと却って気分もさっぱりする…それに、性的ではない快感を得ることが出来るのだと初めて知った」
 何故泣いたかについては悦楽の涙だけでなく後悔の涙も含まれているハズなので。
「そういうものですか?私は泣いたことがあまりないもので…。次は膀胱です。その後は利尿作用のある紅茶とかコーヒとかウーロン茶を召し上がった方が良いですよね?どれが一番効きそうですか?貴方の経験からすると?」
 膀胱を触診で探り当ててマッサージをする。
「ああ、長岡先生が香港のお土産にと色々買ってきてくれた中に本場のお茶が有っただろう?あれが一番だと思う」
 ちなみに長岡先生は結婚式の日取りこそ決まっていないが、結婚準備を着々と進めている。彼女らしくゴージャスに新居に飾る食器や絵や家具などを。
『本当は、イタリアに行って家具を色々探したいのですが…それだとご迷惑をお掛けするので、仲介の方に任せていますの。食器や絵は香港に良い物が意外に揃っていますから』
 などと、有給を取ってはお買い物ツアーをしている。そのお土産は、祐樹などの常識では職場に一つ、上司に一つなのだが、医局にも香港のお菓子が溢れている。祐樹は最愛の彼御用達ブランドのネクタイを事も無げに貰った。しかも彼とは色違いという長岡先生らしい心配りだったが。彼の方はもっと色々なものを貰っている。数種類のお茶だの、お菓子だの、ネクタイだのと。ただ、長岡先生はもう少しこの病院で修行したいらしく、この一年は在籍するそうだ。婚約者の病院でもお父様がまだまだ現役なので、婚約者の岩松先生もそんなに急いではないらしい。
「では、あの茶葉をたくさん入れて…とても苦い烏龍茶にします。それとも、ジャスミンティーともブレンドしますか?」
「ブレンド…にして欲しい。祐樹のブレンドの烏龍茶…何だか好きなので」
「了解です。水分が早く抜ければ、そして首を高くして寝れば、明日の朝はきっと大丈夫ですよ。明日の杉田弁護士の話って何でしょうね?」
「ああ、私も気になるが…行ってみないことには分からないな。昨日待ち合わせした○ターバックスに5時45分に来られるか?」
「ええ、『救急救命室』には断りを入れますので。もし、(現)杉田士長が『絶対ダメ』と言い張った場合には教授権限を使って下さいね。では貴方お好みのブレンドお茶入れてきます。なるべく頭、高くしていてくださいね」
 そう言い置いて祐樹のベッドから出た。振り返った彼の姿は髪の毛を乾かしていないせいか、とても年上には見えない上に、とても清楚かつ妖艶という二律背反の顔と肢体だった。 
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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
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