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「気分は、下克上。」医師編 春-34

「冷たくなった」
「では、蒸しタオルに変えますね」
 目の腫れの場合、冷→温→冷の繰り返しが望ましいと祐樹が遥か昔のことに感じられる学生時代に学んだ覚えがある。
 アイスパックを取って、保温機代わりの何も入っていない湯沸し兼保温機に祐樹が量産した蒸しタオルを取り出して温度を調節してから彼の目元に当てた。
「熱くないですか?」
 祐樹の左腕を枕にしている彼は泣いた後、独特の鼻声――それはそれでとてもセクシーだったが――で言葉を桜色の唇を動かす。
「ああ、とてもいい気持ちだ」
「では、血流マッサージもしますね。本当は両手が良いのですが頭部を上にするのが治り早いので」
 彼の幾分小さめの顔にも当然血管が通っている。その血液を人為で循環させると腫れは引き易い。
 決して愛撫のつもりではないのだが、顔も神経が集中している。顔全体を血液の流れに沿って優しく触ると結局はマッサージというか繊細な愛撫となってしまう。
「とても気持ちがいい…」
 彼の満足そうな甘やかな声にかなり満足した。顔のどの部分に血管が通っているかは「目の腫れの治療法」よりも頭の中の浅い部分に記憶が鮮明に存在するので、その順番に沿って祐樹も彼ほどではないが繊細な動きで顔を撫でる。
「ああ、タオルが冷たくなって来ましたね。アイスパックに切り替えましょう」
 タオルを彼の顔から取ると、目を瞑っている彼の顔の長い睫毛が部屋の照明で影を作る。
 情事の火照りの余韻か、お風呂に長い時間浸かったせいか…あるいはその両方かもしれないが彼の頬は薄紅色に染まっている。その頬に落ちた黒い睫毛の影はとても綺麗だった。
 アイスパックに切り替えてからも血流を良くする手の動きは止めない。
「杉田弁護士の話とは一体何だ…ろうな?」
 彼の恍惚さをはらんだ声がする。
「心当たりは全くないのですが…。野暮は嫌いな人です。私達が何をしていたか…も察していらっしゃったので、緊急度の高い電話でなかったら二回ほど掛けて止めると思いますし、それに私の『救急救命センター』を休ませてくれるように奥様に頼んでみると仰っていたので…何か私達には重大な用件かも知れません…ね。それに杉田弁護士はこの病院の動向に詳しい」
「訴訟の当方代理人となった過去が有ると聞いているが?」
 リラックスした口調にそぐわない硬い会話だ。
「ええ、貴方が帰国される前ですが、内科から回って来た電子カルテに不備があって、誠に迂闊なことに――これは極秘ですが――クロスマッチ(血液交差適合試験)でもその不備を見落としたのです」
「クロスマッチで見落とすと大変ではないのか?クロスマッチは異なった血液型だと黒く凝固するだろう?」
「そうです。私はもちろんクロスマッチには関知していませんでしたが…。あの時は、内科・外科の致命的なエラーでした。が、杉田弁護士は当方の過失ではないという旨の主張を裁判で主張しつつも、内々に示談金で大事に至る前に手を打って下さったようですね。外科代表の窓口は黒木准教授で、内科代表は今居教授でしたが」
「私なら全てを詳らかにするが…大学病院ではそれが当たり前のことなのは知っている隠蔽工作は悪しき習慣だが…」
「そうですよね。その裁判でも……。あ、そろそろ蒸しタオルですね」
 交換しつつ、彼の目の腫れ具合を確かめた。かなり緩和されている。
「内科と外科では泥仕合を…。結局、担当の両先生は系列病院に左遷ですが・・・」
「トカゲの尻尾きりか…本来は上のポジションが責任を取るべきなのだが、それが出来ないのは私がこの大学で学んでいた頃と変わりがないのだな…」
 甘やかな声に苦々しさが混じる。
「今回の雨宮氏の件で――祐樹が『オートパシーイメージング――死後画像検索――』思いついてくれなくて、私の手術ミスだった場合は、私自ら遺族に陳謝してそれでも許して貰えなかった場合は裁判所に訴状を出してもらっても良かったのだが…」
「そういえば、杉田弁護士が仰っていましたよ。『香川教授が訴えられる可能性はとても低い』と」
「そうか?それは何故?」
「まずは、手術の難易度が高いので、患者さんやそのご家族が最悪の場合を覚悟して手術同意書にサインをすること。それよりも重要なのは、貴方の人柄です。貴方は手術の時は全てのリスクを説明しますよね?時間を惜しむこともないし、他の医師には任せない。貴方と患者さんやそのご家族には信頼関係が成り立っているので裁判所には駆け込まないだろうと…」
「いや、私が向き合うのは私を必要とする患者さんだけだ。ご家族も含まれるが…彼らに真摯に向き合うのは執刀医としての義務だから…」
 これが他のいい加減な医師の口から出た言葉だったとしたら「奇麗事を…」で済ますが、彼の場合、本気なのが分かるの。見習っていかねばならないな…と思う。
「目は大丈夫のようです。仕上げに…」
 情事の瑞々しさは残っているものの、職業的に切り替えは早い。
「ああ、足の裏からか?」
 普段の声で言う。裸足の足を祐樹がマッサージしやすいように肢体の位置を変える。
「足は、マッサージしても良いが…指の付け根は…」
 幾分上擦った声で言う。
「そんな掠れた色っぽい声を出さないで下さい。もちろん貴方の感じやすいところは触りませんから…」




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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
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