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「気分は、下克上。」~お見舞い~11

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そろそろ一時帰宅の門限が迫っている。と言っても今日は元旦なので車の流れはいつも以上にスムーズだと判断する。
「そろそろ、病院に帰った方がいいよね?」
 祐樹の言葉に母は壁に掛かっている時計を見る。
「そうだねぇ…お正月くらいは家でゆっくりしたいものだけれど…やっぱり食餌制限付きの私はそうそう我が儘を言うわけには行かないし…」
 彼は母に託された祐樹の実家の鍵を嬉しそうにキーホルダーに付けている。左手の小さいダイアモンドがいつか見せて貰った長岡先生の大きなダイアよりも彼の細くて長い指に調和している。大晦日の性行為で祐樹が指輪ごと強く甘く噛んだ指輪の回りもとても扇情的だ。
「いえ、公立病院はどこも財務状況は厳しいです。M市民病院はまだゆとりが有りますが、公立病院で破綻しそうな病院は枚挙に暇がありません。こちらもそのような憂き目に遭わないように執刀医としてお伺いしているのですが…
 お母様のカルテを全て拝見しました。重度の腎炎ですが、病院食以外の食物は口になさっていませんよね?そんな意思の固い患者さんなら一時帰宅ではなくて、お正月は帰宅許可が出てもいい筈なのですが、一時帰宅と帰宅の違いは、入院費の計算なのです…。多分、一時帰宅だと入院費用は請求出来ますが、帰宅許可だと入院費用は請求出来ません。おそらくその点で一時帰宅になったのではないでしょうか?」
 彼は立て板に水とばかりに説明した。祐樹も「一週間に一度の透析患者…しかも、母はどちらかと言えばいい加減でワガママな祐樹とは違い――この辺りは彼に似た趣きがある――医師の言いつけに背く性格でもない患者を何故入院のままにしているのかが分からなかったが、そういうことか」と納得した。
「そうなのね…まあ、主治医の先生の仰ることに従います。ただ、折角帰って来たのだし、少し荷物を持って行きます。あ、聡さんは座っていて。祐樹のアルバムでも2人で見ていて下さい」
 当然のように手伝おうと腰を浮かせた彼を制止して母は元気な足取りで自室に消えた。
 彼は祐樹に笑みを零すと、大切そうに客間のテーブルの上に几帳面に積み上げられた――母か彼のどちらがしたのかは不明だったが――のアルバムを熱心に見入っている。
「やっぱり祐樹の顔は高校時代からそんなに変わってないのだな…これなんか、制服を隠せば今の顔と同じだ。とても明るい顔で…太陽のように笑っている」
 高校の修学旅行の写真だった。クラスメイト5人と写っている写真。確かに笑ってはいるが当然ながら悩みがなかったわけではない。
「そんなに輝いて見えるのは、見ている貴方が私を特別視して下さっているからでしょう。当時は自分の性癖について悩み中だったハズです」
 彼は心底驚いた顔をした。この家に来てから、彼がますます表情が豊かになった気がする。きっとリラックスしているのだろうと祐樹までもが嬉しくなる。
「祐樹は…何というか…自分の性癖についても自然に認めている感じがしていたのだが?」
「それは酷いです…人並みの葛藤は当然有りましたよ。それに」
 「別に女性と全く出来ないというわけでもないので、将来は結婚も視野に入れてました」と続けようとしたが、彼が傷つくのではないかと思って黙った。彼も婚約者まで居たのだから、女性とも出来るだろうくらいのことは想像は付くがそこまで踏み込んでいいものかどうかが悩みどころだ。
「それに?」
「その続き、聞きたいですか?」
「ああ、もちろん。祐樹のことで聞きたくないことはない」
「では、その続きは、母を病院に連れて行ってから、ベッドで話します」
 耳元で囁くと彼は耳たぶを紅く染めて僅かに身じろぐ。その仕草も咲き染めた梅の花の初々しさと色香が薫るようだった。この部屋に同じ性癖の人間が居ればイチコロで恋に落ちそうだ。いや、そのケがなくても。
「この写真、同じような構図で写っている人間も一緒だ…貰っても構わないか?大切にするから」
「どうぞ。母もそう言ってましたよね?一枚だけで良いの?」
 思い切りの良さが外科医の身上だが、彼は躊躇う素振りを見せた。彼の記憶力なら全ての写真――祐樹は一人っ子なので生まれた時から写真は膨大な量になるが――を暗記しているだろうに。比較的新しいアルバムを手に取り、迷う様子もなくページを繰る。
「この大学の入学式の写真も同じような構図が何枚も有るから…これも貰っていいか?」
「ええ、もちろん。別に構図が一枚限りのでも構わないのに」
「いや、入院中のお母様に悪いので…この二枚だけにしておく。後は頭の中に入っているので」
 彼は胸ポケットから大型のスケジュール帳を魔法のように取り出して大切そうに中にしまった。確かあの手帳は彼がいつも持っているものだ。プライベートな旅行にまで持ってきているとは知らなかったが。あの中に入れて貰えるのはとても嬉しい。
 廊下に母の足音が聞こえた。客間の前で立ち止まると、少し時間を置いているようだ。わざとらしい咳払いの音も聞こえる。
 こんな場所で彼に良からぬことなどしないのに…と笑いがこみ上げるが、これもひとえに祐樹への信頼のなさゆえだろう。祐樹がゲンナリしていると、彼は静かな動作で立ち上がり母のためにドアを開けている。こういうことにはとことん疎い彼は多分母が病院に持って行く荷物が多いためとでも思っているだろうことは想像に難くない。
「どうぞ。お荷物はこれだけですか?」
 母の荷物をごく自然に受け取ると、案の定意外そうな声で言っている。
「日が暮れないうちに病院に戻った方が良いね。夜風は身体に悪いから」
「聡さんの職業的判断からもそう思うのかしらね…?」
 母の目が祐樹の下心を見透かしていると告げている。口調も少し意地が悪い。まぁ祐樹の自業自得だが。何も気づいた様子もなく、彼は真摯な表情を浮かべている。
「ええ、そうですね。やはり気温の高いうちに戻られた方が良いでしょう。風邪をお召しになっては困りますので。そう言えばお伺いするのをうっかりと失念していましたが…点滴はお母様のご希望ですか?それとも主治医の先生の?」
 母を自然に椅子に導きながら医師の口調でも肉親に向けた口調でもどっちとも取れる、それだけ曖昧な彼にしては珍しい口ぶりで言った。
「そんな…先生に希望なんか言いません…それに点滴は普通あんなものでしょう?」
「そうですか。しかし点滴針が外れて困ることは有りませんか?」
 今度は仕事場で良く聞く誠実かつ冷静な医師の声だった。
「ええ、それは良くあります。血管も細いタイプだと…それに年のせいだと先生が」
「その上少し血管も脆くなっています。本来ならIVH(中心静脈栄養)が一番良い方法だと思うのですが。ただ、それを指示するのは越権行為ですし…」
 彼は僅かに形の良い眉を顰めた。
「祐樹、IVHって…?」
 母は人の悪い笑顔を浮かべて敢えて祐樹に聞いて来た。彼に立たせて荷物を持たせた上になかんずく椅子にまで誘導させていながら、ぼうっと座っている祐樹に対するささやかな意趣返しだろう。
「中心静脈栄養は従来の点滴とは違って、胸を僅かに開胸して鎖骨下の静脈に太い薬剤を入れる方法だよ。腕の良い医師に当たれば普通の点滴よりもリスクが少ない上に高い効果が得られる。点滴はナースさんがするだろう?IVHは医師しか出来ない上に昼間しかしないのが普通だけど、ウチでは容態次第で夜でも行っている」
「祐樹すら出来るくらいの代物なのかい?」
「あのね、俺は一介の研修医の端くれと言っても医師免許はキチンと持っていますよ。その上心臓バイバス術の手術も鎖骨下の静脈は見慣れています。俺でも十分出来る程度のものなのですけど」
 「すら」とは何だと思ったが…肉親は評価が低いのはどこの家でも同じだろう。
「聡さんにならして貰いたいのだけれど…」
 その一言に内心ニンマリする。やっと言い返せるきっかけが見つかった。
「開胸するって言ったよね?それって上半身は裸っていう意味だよ」

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 本日は奇跡的に、仕事の合間が随分と開いたので…「下克上」も書けました。今は刹那的&体調と相談の綱渡りなので、ホントはこっちはストックにしようと思っていますが、「やっぱり『下克上』も!」という読者さまの声に負けました。それに更新出来る時にしておかないと、私も明日の体調の自信が全くないので。
 し、仕事、峠を越えました~♪
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プロフィール

こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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