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「気分は、下克上。」~お見舞い~13

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「じゃあ、そろそろ病院に戻ろうか?」
「そうだねぇ、そろそろ日も暮れそうだ」
 母も祐樹の恋人が男性だという一点を除いて(いや、昔から腹の据わった人だからそれほど気にしていないのかもしれなかったが)「息子が恋人を家に連れてきての団欒」を楽しんでいたようで、未練がましく壁に掛かった旧式の時計を見ている。
「お茶碗、洗ってきます」
 会話の最中も彼が何回か運んでくれた玉露は、京都では喫茶店やちょっとした料亭――といっても一介の研修医なのでそんなに足を運んだことはなかったが――でも供される。その中でも最上の味だった。惚れた欲目かとも思ったが、客観的に味わってみてもそう思う。
「そんなことをしなくても…台所に下げておけばご近所の親切な方が後始末をして下さいますよ?」
 祐樹をチラりと見て、(多分祐樹にさせようと一瞬思ったに違いない)「祐樹だとお茶碗を割りかねない」とばかりにウンザリした顔になる。とことん祐樹の器用さを信頼していないのが分かり少しムッとした。
「いえ、台所に洗い物が残っていると…何だか落ち着かない性分で…。しかし、お言葉に甘えて食器棚には戻さず洗って水切りカゴの中に入れておきますので」
 手早くテーブルの食器類を一番能率の良い、かつ美しい重ね方でトレーに載せる。
 比較的家事にはうるさい母も感心したように眺めている。
「祐樹、ぼさっとしてないでアルバムを元の場所に戻して来て」
 彼の良く動く白い指にプラチナとダイアの指輪が清浄な光を放っていた。そしてその周囲には前夜に祐樹が噛んだ紅い情痕が淫靡な雰囲気をも加えている。ついつい彼の指を凝視していた祐樹は母の言葉に我に返った。
「えっと…アルバムって、どこに仕舞ってあったっけ?」
 母はこれ見よがしに肩を落とす。
「アルバムは昔からこの部屋の食器棚の下…本を並べる場所です。ほら、そこ。空っぽになっている場所だよ。そんなことも知らなかったの?」
 知らなかった。高校生まではこの家で生活していたが、母は仕事が忙しくても祐樹の世話は今思い出しても良くやってくれていた。祐樹の部屋にある参考書などは祐樹自身が取り出していたが、それ以外の部屋、台所だの客間だのにあるものは祐樹が必要とする品物はどこからともなく母が出してくれていたので全く分からない。が、彼の手前もある。
「ははは。いやだな…それはちゃんと覚えてたよ、母さん。でももしかして置き場所を変えたんじゃないかと思ってさ」
 苦し紛れの言い訳をするが、母はお見通しのようだった。
「アルバムの置き場を変える家の方が珍しいよ…。聡さん?」
 トレーに食器を載せて器用にドアを開けようとしていた彼を呼び止める。
「こんないい加減な息子で本当に良いのですか?愛想尽かしするなら今のウチですよ?」
「いえ、私にとって祐樹はかけがえのない人ですから。祐樹が愛想尽かしをするまでは一緒に居たいと思っています」
 あくまでも真率な口調で言ってから静かにドアを閉めた。
「良い人だね…教授ってもっと偉そうな感じかと思っていたのだけれども…この家に来てからも、仕事でウチの病院に来て見舞ってくれる時もとても腰が低いし。
 あ、そうそう」
 母は先ほどの祐樹の発言を根に持っていたらしく嫌味を込めて悪戯っぽく笑った。
「香川教授が出張扱いでウチの病院に来て…その時も若いナースさんが騒いでいたようだけど、その後何回かいらしているだろう?その度ごとに私の病室を見舞って下さることが病院関係者の知るところとなってね」
 そうだろうな…と思う。彼はM市民病院・院長先生直々の招聘で、しかも、この業界では何よりも地位がモノを言う。市民病院の院長よりもK大学病院教授の方が席次は上だ。 そんな彼を巡ってウワサ――他の会社組織は祐樹には未知の世界だが、病院は無責任なウワサの温床だ――になっているのは想像に難くない。
「それで?」
「今まで病室に顔を出したことのないナースさんや女医さんまでもが部屋に来て、『香川教授』の話しをせがまれたり、紹介してくれって言われたり。聡さん『モテたことがない』って言っていたけど…そんなわけないよね?」
 どう説明すれば良いのか少し迷ったが。無難な線から聞いてみた。彼を狙っている女性が多数居るのは知っていて、想定内の話だった。が、心はさざ波が立つ。
「まさか、母さん紹介するなんて言ってないよね?」
 相手が母だったので気を許しているので動揺のあまり早口になる。これが職場だと動揺を悟られないようにしただろうが。
「もちろん、言っていませんよ。聡さんはどこぞの愚息には勿体無いくらいの大切な人だし、その上私の養子にしたいほど良く出来た人ですから。皆には『上司が部下の家族を心配して見舞って下さっています。K大病院の教授がお見舞いに来て下さることだけでもとても有り難いことなのに――そんな雲の上の人を紹介出来ることは出来ません』と丁寧に断っています。あんなにモテる人が『自分はモテない』というのが可笑しくて…」
 それを聞いて肩の力を抜く。
「いや、彼はほのめかしや普通は下心があるだろう…と分かる誘いも額面通りに受け取ってしまうひとなんだ『治療方針について食事をしながら教えて戴きたいわ』と言われればその通りに受け取ってしまう」
「仕事はあんなに優秀だし、とっても気が利く聡さんなのに、そういう面はまだまだ初心なんだねぇ…。ただ、そのギャップに惹かれる人間が――ああ、私の前にも一人居るね――居るんだから、祐樹も頑張るんだよ」
 言われなくてもそうしているさ…と言いたかったが、母の言葉には祐樹の恋愛を思い遣るしみじみとしたものだっただけに、黙って頷いた。
 彼の軽やかな足音が、老朽化した廊下から響いてきた。
「洗い物も済ませましたし、玉露の茶筒は元の場所に置いてきました。念のため火の元ももう一度確認を。
 台所で考えたのですが、このノートはお預かりしますが、私が写してお母様のノートはお返ししますね。私にとって田中家の味を継承することは喜びですが。祐樹だってこの先結婚話が出て来るかもしれないので、その時はお嫁さんに必要なものでしょう?」
 祐樹も母も顔色を変えた。変えた理由は違っていただろうが。
「いえ、私は聡さんこそに田中家の味を伝えたいと思いますよ?夫のエンゲージ兼結婚指輪を聡さんに託したのと同じで。あれも私にとっては一つしかない大切なものですから。それと同じ気持ちです。ノートは写して下さってもいいですし、そのまま聡さんが大切に使って下さっても構いません。祐樹を託すには聡さん以上の人は居ないと思っていますから」
「有難うございます。そう言って戴けてとても嬉しいですが、反面…身が引き締まる思いです」
 彼は唇を咲き初める梅の花に似た微笑の形に刻んだ。彼に微笑みかけて家を出る。
 祐樹は、先ほど母が席を外している時にちらっと「彼と出会わなければ、結婚という選択肢もあっただろうに」と言いかけて止めたという記憶がある。「後で教える」とその時は逃げたが、永久に教えない方がいいような気がした。彼は外科医的な適正を余すところなく持ってはいるが――手術の時の即断即決などは祐樹が見ていても違った意味で惚れ惚れするほど思い切りが良い――が、プライベートでは思い詰めたり、刹那的な行動に走ったりしてしまうきらいがある。その彼に冗談にせよ、祐樹の結婚話などは言えないな…と思った。
 センター入試の母が語った暴露話――彼は多分気づいていないだろうが――「あれほど焦ったのは前代未聞」と敢えて言った。「空前絶後」と言わなかったのは、彼に告白する前に山本センセが興信所を付けたことで彼との込み入った会話が不可能になり、彼が祐樹の愛情に自信が持てなくなっているのが態度や雰囲気で分かっていた。それでもホテルの逢瀬にこぎつけたのだが、祐樹は救急救命室に拉致され電話連絡が出来ないハメに陥り、仕事が終わった時に医局の電話を使って連絡を取ろうとした時――あの時が祐樹にとっては「空前絶後」に焦った時だった。
 スカイラインのエンジンをかけてエアコンの温度設定を一番上にする。
 母を送ったら、またこの家に彼と一緒に戻ってくる。一回家に入り、忘れ物があるフリをして自室に上がり、エアコンの温度設定をいつものホテルで彼が気に入っている温度にセットする。

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 スミマセン~!次は18禁とか書いていたのに、また長くなってしまいました。
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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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