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「純愛と妄執に揺れる心」第一章-16

 誰だよ、まさか藤田のヤツか?」
 以前の叱責がよほど激しいものだったのだろう、平島は今までの冷酷な目つきではなく、どこか怯えた光をちらつかせていた。
「いや、多分、藤原とかいう2年生のガキ」
「ああ、それなら構わない。通せよ」
 平島の目はギラギラとした怒りと冷たい光を宿している。
「兄貴…っていっても施設のダチだろ?お前が庇って根性焼きを入れられているのを見てどうするか、こりゃあ、見ものだぜぇ」
 嘲りの高笑いに他の5年か6年のヤツも「面白いですねぇ」と同調する。
 でも、ここに来ることは誰にも言ってなかったのに、直哉兄さんがどうして?それに、もう1回僕がこの激痛に耐えたらお兄さんだって、これ以上のケガをしないのに…僕は痛いのは我慢出来るけど、お兄さんがケガをするのはイヤだ。
「早く…2回目をして下さい」
 お兄さんは優しいけど、時々怖い目をする時がある。ケンカをしているところは見たことがないし、この前のお腹を蹴られた時だって仕返しはしていなかった。でも、僕が根性焼きというものをされているところを見れば、お兄さんがどうするか、純一には見当も付かない。何しろ知りあってまだ日が浅い。お兄さんが僕を庇ってケンカになったら…折角とってもとっても痛い根性焼きを1回済ませたのに…2回済まさないと、あのメモは貰えない。もっと痛くても僕は頑張るから、お兄さんがここに来る前に2回目も済ませて欲しい。
「それは出来ないなぁ…藤原ってヤツもムカつく。オレは正義ぶったヤツも大嫌いだ」
 ヤツはこの状況が楽しくて仕方がないというように蛇よりももっと冷酷な笑い方をした。ねっとりとした嫌な目つきだ。
 さっき紙と鉛筆を持ってきたヤツがお兄さんの両手を後ろでねじあげて連れてきた。お兄さんも身長は2年生にしては高い方だけど、上級生、しかもケンカ慣れしているだろう相手には体格も力も劣っている。直哉兄さんは走ってきたらしく荒い息をしている。純一を真っ先に見る。その瞬間お兄さんの目が厳しい光を宿す。
 お腹をむき出しにされて、ヤケドの痕を付けた僕を見て、今までに見たことがないほど鋭い目で平島を睨んでいる。
「お前達、純一に煙草の火を押し付けたのか?」
 食いしばった歯の奥から怒りの炎を吹き出すのに似た声で言う。
「ああ、そうさ。コイツが、お前と自分にこれ以上手出しはしない代わりに根性焼きを2回入れるというヤクソクをした」
「純一、それは本当か?」
 お兄さんはどこかにケガをしているみたいな声で聞いた。お腹のケガはもう痛くはないハズなのに…。
「うん。僕がそう頼んだ。僕が我慢すればいいだけだから。そうすればお兄さんはもう大丈夫」
「純一だけにヤケドを負わせるのは卑怯だ。これは藤田先生に叱られた腹いせだろう?それなら純一は呼びに行っただけで、叱られたのは僕のお腹を蹴ったからだ。僕の方にこそ恨みがあるんじゃないのか?2回という約束の1回は僕のお腹にしてもいいハズだ」
 お兄さんの目も怒ったせいでとても怖い。けど、僕のお腹と顔を見る時のお兄さんの目はとても僕を心配しているのが分かる。
「大丈夫。1度痛い目に遭ったら次はそんなに痛くないってお母さんに聞いたもの。だから僕がもう1回我慢する」
「へぇ、2人して互いに庇うのかぁ。もっとムカつく。どうしてやろうか?」
 目の奥から不気味な光を放って平島が言った。
 最悪、お兄さんまで煙草の火を押し付けられてメモも貰えないかもしれない!そう思うと、自然に膝を折って土下座の形になる。
「お願いです。約束通り2回根性焼きをして下さい。そしてメモを渡して下さい」
 体育館の裏手は光があまり当たらないので地面は濡れていた。そこに額をくっつけてヤツの顔を見てお願いした。ヤツの顔は随分高い所にあって、純一の目からは自然と涙が出ていた。土下座って、テレビで何気なく観ていた時とは違って、とても屈辱的な気分になる。でも、お兄さんが純一のさっき純一が感じたのヤケドの痛さを知るマシだ。
「へぇ…綺麗な顔に涙かよ…それに泥が顔に付いているぞ。根性焼きの時には声も出さず泣かなかったお前が…ふーん。その顔だと余計にイジめたくなるよな」
 ちらっと見たお兄さんの顔は青ざめて震えている。でもそれは怖いからではないのが良く分かる表情だった。
 お兄さんは手を自由にさせようともがいていたがやはり力では敵わない。
「お願いします。僕は何をされてもいいですから、お兄さんには手を出さないで」
 涙と鼻水が出てくるのを止められない。ヤツは純一の顔を面白そうに見下ろす。
「決めた。コイツのこんな顔を拝めたんだから、スジはきっちり通す。もう1回コイツに根性焼きをする。やっぱ、こんな綺麗なツラが涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってまでお願いされただけでも面白いなぁ」
 お兄さんを捕まえていない、もう一人に顎をしゃくるとソイツは純一を立たせた。純一のシャツはお腹が隠れてしまっていたので、もう一回まくりあげられる。再び1000℃だかの火が押し付けられる。
 ジュっという音と独特の臭い。この臭いは一生忘れないだろう。
 ただ、今度は直哉兄さんの顔を見ることが出来たからか、最初の時よりも痛くなかった。
 お兄さんの方が、自分のお腹に火を押し付けられているような顔をしていたので、「心配しないで」とかすかに笑う余裕すら有った。痛いのは物凄く痛かったけれども。ずっと直哉兄さんの顔を見ていたら、さっきよりも短い根性焼きなのかな?と思ったくらいだった。もちろん声も出なかった。
「終わったぜ。今回は余計な邪魔が入ったから2倍の20秒にした」
 純一よりも直哉兄さんの方を見て粘っこい笑い方をするヤツに、お腹をシャツで覆うと「約束です。メモを下さい」
 自分でも驚くくらい静かな口調で言う。お腹はジンジンしていたけど。
 平島は、純一の目を見て驚いた顔をした。何故驚いているのかは分からなかったけど。
「ああ、これな」
 意外なほどあっさりとメモを投げるように渡す。
「用は済んだ。引き揚げるぞ。また藤田のヤツに見つかると厄介だ」
 純一の方は見ずに、直哉兄さんの足元に唾を吐きかけると去っていった。その姿が視界から消える。今までの緊張や恐怖の反動だろうか。純一の膝はがくがく震え立っていられなくなる。体育館の外側の壁に身体を預けた。直哉兄さんが物凄い早さで近付いて来た。
「お腹、早く冷やさないと…。それに気分が悪いとかはないか?」
 お兄さんは泣きそうな痛そうな…とっても悲しそうな顔をしている。
「うん、大丈夫。このメモ、お兄さんが持っていて」
 メモを手渡すと一瞬で読み――それはそうだ。純一でさえすぐに読めるモノなので賢いお兄さんなら一目見ただけで内容は分かっただろう――泣きそうな中にも少し明るい目をしてから、注意深く純一のお腹を見ている。
「すぐに冷やさないと。ヤケドは直後に冷たい水か氷で冷やすのが一番良い。歩ける?」
「膝がガクガクゆってる。けど、歩く」
 正直に言うとお兄さんは純一の腋に右手を回して純一を歩かせようとする。左手は純一のお腹のヤケドをそっと触っている。お兄さんの手は熱かったけれども、触れられているとジンジンがマシになった。体育館の裏手に水道の蛇口があった。
 お兄さんは、思いっきり蛇口をひねると純一のヤケドに大量の水を浴びせかけた。服が濡れてしまうことに気付いたお兄さんは「シャツ、脱げるか?」と聞いてくれた。
「うん。でも皆がヘンに思わないかな?」
「それは大丈夫。平島が『体育館には近付くな』って皆に命令したらしいから」
 安心してシャツを脱ぐ。お兄さんは蛇口から出る水が直接純一のお腹に当たるように純一の身体を横たわらせた。
「でも、どうしてお兄さんが来てくれたの?僕、誰にも言ってないよ?」
「痛くはないか?ああ、平野さんが僕の教室に来てくれて『小倉君が大変…体育館』と。どうも、平島の弟が教室で喋っていたらしい。純一、本当にごめんなさい。僕が純一を守ると決めたのに僕のせいで、こんなヤケドを…」
 お兄さんがヤケドをしたみたいな顔をしている。今にも泣きそうな顔だった。









 本編(というか、彼らが社会人になったところ)を早く書きたいのですが、なかなかそこまでたどり着けません。しかも暗いし。でももっと暗くなる予定です。最後はお約束のハッピーエンドですが。
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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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