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「がんじがらめの愛」第一章-8

「ああ、後は自分でするから。後で珈琲でも持って来てくれれば良い」
 案内してきた上女中にそう指示を与えると一礼して部屋から出て行った。
 浴室からなかなか片桐は出て来ない。氷雨に当って相当冷えたのだろうと判断し、落ち着かなげに書斎として使っている部屋に入った。
 浴室の気配が分かるように扉は開けたままにして。書斎の暖炉に火が入り濡れた体を温めてくれる。
 思っていた以上に華奢な肩だった。あの身体で、あの頭でああいうことを考えていたのかなど脈絡のないことを考えていた。暖炉の火を見詰めていると自分が着替えをしていないことに気がつく。平常の俺なら着替えもせずに暖炉の火に当るなどとは考えないだろう。理性が横滑りしているようだと自嘲し用意してあった室内着に着替えた。
 片桐が浴室から出て来た気配を感じた。すぐにベルを鳴らして女中を呼ぶ。バスロウブを羽織った片桐は落ち着かなげに佇んでいる。
「こちらが書斎だ。暖炉があるから落ち着く」
 声を掛けると頷いた。湯を浴びた後の上気した頬は瑞々しい果実のようだった。
「良い御湯だった。ありがとう」
「どう致しまして」
 形式的な挨拶に唇を笑みの形に緩めると、片桐も落ち着いたようで微笑む。
「髪が乾くまで火の傍にいると良い。この椅子に掛けろ」
 水滴をまとった髪を見て勧めた。素直に頷いた片桐に、
「お前は確か長男だったな。姉君はいらっしゃらないだろう」
「ああ、そうだ。妹と弟が1人だ。どうして分かった」
 意外そうな顔をして聞き返した。それには答えずに、
「母君もそんなにお前に干渉しない。そうだろう、多分」と思いつくままに言った。
 扉の向こうで「失礼いたします」とさっきの女中の声がした。普段なら部屋に入れるところだが、今日はその気になれなかった。部屋を出て珈琲の用意を受け取る。
「さっきの答えだが、他人の指示がないとあまり動かないだろう。上や同じ立場に立って物事を指図する人間が居ない人は得てしてそうなる」
 片桐の飲み易い位置に珈琲を置いた。
「その通りだ。母上は社交が好きで家にはあまり居ない。妹が女子部に通っている。弟は乳母が面倒を見ている」
「仲の良いご家族なのか」
 片桐のことは何でも知っておきたい気がして話を続けた。片桐は、学校に居る時の快活な表情を見せなかった。しかし、嫌そうな顔もしていない。
「ああ、オレと一番話すのは妹の華子だ。お転婆で困ってはいるが。母上は屋敷に居る時は話し相手になってくれる。父上は…そうだな、あまり社交好きではないので滅多に部屋からは出て来ない」
「母君は確か池田侯爵から縁付いて来られたのだったな、確か鶴子様。快活で優しい方だ」
 目を大きく見開いて、「良く知っているな」と呟くように言った。
「この世界は狭い上に皆、暇を持て余しているから夜会などに行きつけていれば噂などはすぐに耳に入る」
 納得したように頷く。その様子が無邪気な子供を連想させた。
「オレは、所詮天子様に逆らった家の出だ。あまり外には出たくなかったから、そういう話はあまり知らない」
「知っていてもそんなに役に立つものではない。それに、家にも過去にも拘る必要はないと俺は思う」
「そんなもの、かな。天子様が許して下さったって過去は変わらないだろう」
「そんなことはない。自分のことだけを考えて生きろ。俺もそんなことを考えていた」
 珈琲の湯気を見詰めながら考え事をしている様子の片桐を言葉もなく見詰めていた。無言で居ても寛いだ気分になれた。

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 FC2ブログは、「慣れると便利」とのことですが、リンクの表示の仕方すら分からないという。
 永遠に慣れなかったらどうしよう?と思っている今日この頃です。


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テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

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こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

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