スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「純愛と妄執に揺れる心」第二章-4(18禁)

「ほとんどのビデオって、女は綺麗なのに男はイマイチっすよね?この二人の絡みなら兄貴達も高く買ってくれるかもっす」
 平島のヤツがとんでもないことを言い出した。純一の肩を掴んでいたヤツが肩に力を込めて純一を正面から覗き込む。
「そうだな…コイツ、やたら小綺麗なツラしてやがるし。本○ビデオを撮られれば、誰にもチクれねぇ。いい考えかもしれねぇな。美少女と美少年のビデオなら兄貴はいつもより多めに報酬にしてくれるかもしんねぇ…」
 力ずくで押さえつけられていた平野さんの抵抗が止んだ。僕がビデオに写される?考えただけでおぞましい。だが、逃げ場はどこにもない。肩を押さえているヤツの力はとても強くて純一には振りほどけない。それに平野さんまで救い出すなんて今の状況では純一にはムリだ。必死に活路を見出そうと辺りを必死に窺ったが、出入り口は全て封鎖されている。
――直哉兄さん!――
 心の中で叫ぶが、直哉兄さんが来てくれるなんてことはないだろう。ここに純一がいることも知らないのだから。
「そうっすよね?でもいつもはもっと少ないんすか?俺達はただ出来ればいいっすが…」
 兄貴分に褒められた平島のヤツは嬉しそうだった。金銭欲と本能の二つが満たされると思ったせいか粘つく目つきが平野さんと純一に注がれる。
「ああ、普通は3万だ。だが、こいつらの絡みだと6万は固いかもな。こういうのはどうだ?美少女と美少年の逢引編をまず撮影する。その後でこの女を皆でやっているところを撮るってのは?」
 平野さんは真っ青な顔で純一を見ている。他のヤツは…皆楽しそうだ。
「いいっすね…。俺達も女を知っているって自慢出来ますし。やっぱ、何でも知っている方が強いっしょ?」
 こういうコトは好きな人同士、それも大人になってからするものだって施設の先輩のお姉さんが言っていた。施設の先輩のお姉さんは勉強こそからっきしだったが世間に対する知識が凄い。直哉兄さんとも良く話しているお姉さんの名前は佐藤隆子さんという。色々修羅場も経験してきたらしいが、それでいて自暴自棄にも情緒不安定にもならず将来の夢であるメイクアップアーティストになろうと頑張っている頼れるお姉さんだ。
 コイツラは女の子もクスリも、タバコもそうだが、知らないとバカにされる世界に生きているらしい。それで格好の餌食が平野さんなのかと思うとお腹の底から怒りと絶望がこみ上げてくる。
「お、こんな綺麗な顔なのに、おっかねぇツラも出来るんだな…だが、撮影中はそんなツラすんなよ」
 肩を掴まれて平野さんの方へと否応なしに連れて行かれる。
「ハダカの方がソレっぽくないっすか?」
 平島のヤツが平野さんの胸を触りながら言った。
「だよな…。工場での逢引だもんな」
 肩を掴んでいる中学生が合図したのか、純一の服が塵まみれの工場の床に落ちていった。その後、平野さんの身体の上に何も纏わない純一の身体が重ねられた。
「ごめん…平野さん…助けようとしたのだけれど、僕が間抜けだから…」
 ヤツラに聞こえないように小さく囁く。
「ううん、助けに来てくれただけで嬉しいよ…。それにどうせヤツらにマワされる運命だった…小倉君があたしのこと好きでもないことは知っている。けど、最初の人が初恋の人の方が断然イイ…。小倉君はとっても迷惑だろうけど、アイツらが最初の人になるのは嫌なの。あたしのこと少しでも可哀相に思ってくれるなら…アイツらより先にして…お願い」
 切々と訴える平野さんの言葉。
 純一がアイツらに見つからなければ平野さんだって無事に済んだハズだったのに…そう思っても後の祭りだった。
 平野さんの汗ばんだ手が純一の首に回された。
「お、いいじゃん?そのままやっちまえよ…といっても肝心なモノが準備出来てねぇよな」
 シ○ナーだか何かで頭のネジが飛んだヤツがヘラヘラ笑いながら純一のまだ幼いモノに触れる。気持ち悪さに吐き気がした。が、茎を上下に撫でられると純一の意思とは関係なく反応した。
「キスして…いい?」
 平野さんは僕の顔だけを見て真剣な表情で言った。女の平野さんが覚悟を決めているのだから僕も腹を括らなければならない。
 そっと唇を重ねた。初めてのキスだったが状況はあまりにも悲惨だ。
「次は胸だ。舌全体でアイスキャンデーを舐めるようにするんだ」
 一番の兄貴分――僕の肩を押さえていたヤツだ――が家庭用のビデオを回しながら言う。
 後はもう唯々諾々と指示に従うしかない。
 挿れる時は、とても苦労した。場所はアイツらに教えて貰ったが初めての平野さんは必死で痛みを堪えているらしく唇を噛み締めている。
「辛いだろうけど…もう少し…力を抜いて」
 アイツらに教わった方法ではなく、薄いピンクの胸の尖りを宝物みたいに撫でて囁いた。
『はやく、ブチコメよ!乱暴にされるほうがイイらしいぜぇ』
『本番、ナマダシだぁ』
 ヤジが飛ぶ。僕だって恥ずかしいけど、平野さんはもっと恥ずかしいに違いない。
「平野さん…優しくするから…力…抜いて」
 耳元で囁くと、平野さんの身体から水分が出てきた。その助けを借りて一気に平野さんの身体の中に挿った。
「痛くない?大丈夫?」
 そう聞いて見ると、平野さんはさっきの痛そうな顔ではなくわずかに和やかな表情を浮かべた。
「うん…大丈夫。あたしの中で動いて。一生の宝物に出来るから」
「動くって?」
 もうヤツらの指導なんて聞きたくもない。平野さんの言葉で行動したい。
「前後に体を動かすの。そうすればきっと大丈夫」
 平野さんの指示通りに動く。背中に回された平野さんの手が純一の動きのスピードを教えてくれた。
『男のケツの動きって間抜けっすね。ビデオでもそう思ったけど』
『でもコイツのケツは白くて綺麗だから…まだマシだろう。お前達も後で写るんだぞ』
 そんな雑音が入る中で、ゆっくりと動いた。頭の中は妙に冴えている。次第に茎も平野さんの暖かい場所で摩擦されると悦楽の切れ端を伝えて来た。
「あっ…」
 身体の奥から液体が出る。その未知の恐怖に一瞬怯んだ。汗ばんだ身体中の力が抜けて平野さんの身体の上にくずれおちてしまった。
「早く、ぬけよ」
 ビデオを持ったヤツが言った。
 平野さんを抱きしめてから身体を離す。
 彼女のシワシワになった白いスカートには禍々しい赤い血が付いていた。
「やっぱり初めてだったっす。コレって高く売れるっすか?」
 平島が兄貴分に聞いている声が妙に遠くに感じる。二度と見たくないと思っていた血の色の赤。それに注目しているのは純一だけだった。他のヤツらは平野さんの両脚を広げている。純一は先ほどとは違う冷たい汗が背中を滑り落ちていくことを自覚した。
「どうして、せーえきが出てこないっすかね?」
 平島が不満そうに兄貴分に聞いている。
「あれはビデオの演出だろ?だが、口に出せば飲み込まない限りはちゃんと見れる」
「ちっ、ナマダシの迫力とかシオフキとかもムリっすか?」
 平島のヤツと兄貴分の会話は、平野さんをモノとしてしか見ていない冷酷さがあった。が、僕は数年ぶりに血を見たショックで茫然自失だった。それに初めての体験がこんな異様な状況でだなんて…。それに何より、平野さんは僕がヘマをしたから助けることが出来なかった。唇と手がぶるぶると震えてしまう。
「ご免なさい。本当に」
 平野さんに震えた声で囁くと、平野さんはとても綺麗で切なげで儚い笑みを浮かべた。
「役者交代すっから、離れろ」
 平島のヤツに乱暴に平野さんから引き離された。
 とにかく服を着ようと僕の服がかたまって置いてあるところに行こうとした。
「服はダメだ。服を着たら逃げる可能性がある。このショーが終わるまでそのままだ」
 兄貴分が冷たい声で言う。僕は血を見た恐怖とこれから見なければならないものへの絶望感に打ちひしがれた。




_________________________________

BL小説にあるまじき男女の絡みでの18禁…。これ以上、読むのが辛いとのご意見もありますが…この話はとっても暗い話なので、仕方ないです~!スミマセン!!


綺麗なお花が満開の「ごんべえ」様から画像をお借りしております。
「ごんべえ」様のブログはこちら。綺麗なお花にグルメ記事と素敵なポエムが沢山有りますので~!「ごんべえ」様、いつも有り難うございます~!

 ↓ ↓ ↓
 
>
スポンサーサイト

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

「純愛と妄執に揺れる心」第二章-3

 自分の机に座って本を読んでいるフリをしながら平野さんと平島のヤツの様子を窺った。
 平島は粘っこい視線を平野さんの胸に注いでいる。何だか、その視線には純一の理解を超えたヘンな光が浮かんでいる。
 平野さんは、耳元で囁かれている言葉を嫌々聞いているようだった。時々、純一の方に視線を当てる。「助けて欲しい」と切羽詰った必死さが痛々しい。平野さんは「ひまわり園」の入居者だ。それに直哉兄さんが平島のヤツのお兄さん――今は「少年院」に入っていると直哉兄さんが言っていた――に蹴られた時には体育館に案内してくれた恩人でもある。
 それに直哉兄さんも「ひまわり園」の仲間はさり気なく庇ってあげるように言っていた。
 平島のヤツは、平野さんの肩を押して教室から出て行った。そっと跡を付ける。
 小学校の周辺は小さな家、それも木造で屋根が傾いたりしていつ建てられたのかも定かでない家や、小さな町工場――何を作っているのか純一には想像も出来なかったが――がごちゃごちゃと立ち並んでいる。それに工場も閉鎖されてそのまま放置されている建物も多い。
 そんな廃屋になった工場もどこかしら入り口はある。というよりも、不良の溜まり場としてこっそりと入り口を作っているようだ。
 その中の一つに平野さんと平島のヤツが入って行った。気づかれないように中を覗きこむ。
 すると、平島のヤツの先輩の中学生だろう、小学生とは思えない体の大きなヤツや、取り巻きに違いない小学校で見た顔が数人、機械や工具が散らばった工場の中に居た。
 平野さんはソイツらに質素なブラウスを引き裂かれている。胸もブラをたくし上げられ露にされている。青い果実のような痛々しい胸だった。平島のヤツが平野さんの両胸を乱暴に揉んでいる。
「施設のヤツは、親に殴られないだけマシだろう?他人のお情けで生きてきているんだ。 なら、お情けを身体で返すのがスジってもんだろう?女は良いよな…一回やったら病み付きになるってよ…これが・・・サ」
 平島が確信を持った口調で平野さんに言っているが、平野さんはとても辛そうな顔をしていた。
 目つきが明らかにおかしい平島の兄貴分はヘラヘラと笑っている。直哉兄さんが以前教えてくれたシ○ナーか何かをしているような顔だった。その他にも、冷静な顔でビデオを回している多分中学生も居た。
 平野さんの白いスカートが捲り上げられた。施設で与えられている服は、篤志家が寄付してくれるものか、養護施設への国や東京都から与えられたものだ。
 スカートは多分篤志家が与えたものだろう。ちょっとお洒落なものだったが、下着は純一が着けているような実用一点張りのものだった。
「色気のないパンツだよな…レースでひらひらしている綺麗なパンツとか、もっと色気の有るヤツを穿いて来いよ…それに、胸だってビデオとは違うんだな…ビデオのお姉さんは尖っているのに…お前のは、胸のてっぺんが平べったいんだな…まあ、色は綺麗だが」
 平野さんは虚ろな表情を錆び付いた機械の方向に向けている。
「ナマダシするぜ?それとも二本のモノで可愛がられたいか?シオフキってのも見てみたいよな?みんな?」
 多分、○ンナーで頭がぶっ飛んでいるヤツが可笑しくて堪らないといった様子で大笑いしている。
 廃屋となった工場は広くて、中で何が行われても純一のように意図的に覗いている人間でもなければ誰も気づかないだろう。
「おい、ビデオは回っているが、そんな胸や全く色気のない下着だと高く買っては貰えないぞ」
 凶悪だが冷静な顔でビデオを持った中学生の不良が言った。
「おかしいよな?俺達がこっそり観たビデオだと、お姉さんが楽しそうにコレをしているのに…」
 心の底から不思議そうに平島のヤツが言った。
「まぁ、この子は初めてなんだろう…。初めてでそんな芸当はムリだ。仕方ない…無理やり何人かで突っ込むというのも…結構そそるヤツもいるから。初めての女の子にナマダシを無理やりいっぱいすればイイ。それに手で俺達のモノを嫌々奉仕させるのも…」
 平野さんが乱暴されるのは時間の問題だと純一は判断した。めまぐるしく考えをまとめる。学校に戻って藤田先生か、上島先生を呼ぶか、警察に届けるかだと、公衆電話で110番にかけるとお金がなくても繋がると直哉兄さんに聞いたことがある。
 そっとその場を離れようとした時に、背後から乱暴な手つきで肩を強く掴まれた。
 驚いて首をねじって掴んだヤツの顔を見た。確か、昔直哉兄さんがお腹を蹴られた時に居た平島の兄の仲間だった。
「おいおい、皆、頭に血が上っているのか?養護施設の仲間がこっそり見ているぜ。どうせ、誰かにチクる積もりだろう?そうなれば、俺達もヤバい。兄貴にもどやされる」
 純一はもがいたが、肩を掴まれた手の力はとても強い。
「そうですね…すみません。注意不足でした。兄貴に折檻されると半殺しかも…。
 おい、平野、お前はコイツに惚れてるんだろ?王子様が助けに来てくれたぜ?といっても、何も出来ない王子様のようだが」
 胸をいじりながら平島のヤツが冷酷な口調で言う。「兄貴」とは平島の実の兄さんではないだろう。直哉兄さんはソイツが少年院に入っていると言っていた。聞きかじりの知識ではあったが、極道関係では子分は年上のチンピラを「兄貴」と呼ぶそうだ。
 平野さんは廃屋に連れて行かれた純一を見ると頬を赤くしたがすぐさま目を逸らす。
「お、胸が尖ってきたじゃないか?王子様出現でちょっとはその気になったのか?」
 凶悪な笑みを浮かべた平島のヤツは頭の回転がいつもより滑らかなようだ。
「コイツががチクらないようにするにはどうすればいいか…だな」
 舌なめずりをして純一と平野さんを交互に見る。
 純一は、直哉兄さんがこっそりとこういう状況に陥った「ひまわり園」の女の子達を救ってきたというのに、自分は救えなかったことに目の前が真っ暗になる。純一がもっと注意深く立ち回っていればこんな最悪の事態には陥らなかっただろう。
「面白いことを考えたっす。聞いて貰っていいっすか?」
 平島のヤツが、粘りつく目を純一と平野さんに向けた後で、純一の肩を逃げられないように強く拘束している先輩におもねるような口調で言った。
 

テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

「純愛と妄執に揺れる心」第二章-2

 純一も身体も成長した。少し細いのが気になるが身長はクラスでも後ろのほうだった。
 そしてお兄さんのベッドで寝ていた朝、濡れた下着が気になった。何しろ初めての出来事だったので。「まさか、おねしょ?」と思って途方に暮れているとお兄さんが起きてくれた。
「どうしたの?いつもと違う顔をしているよ?」
「下着が…」
 直哉兄さんにでも「おねしょ」の事実は言い辛い。純一の落ち着かない目の動きで悟ったのだろう。
「濡れていたの?それは別におかしなことでは全くないよ。純一が大人になったというだけのことだ。ただ、そっとお風呂場に行って洗った方が良いと思うけど。手伝おうか?」
 穏やかで優しい笑みだったが、下着を洗ってもらうわけにはいかない。
「大人になるって?」
「何かおかしな夢を見た?」
 夢?そういえばお兄さんとどこかに行く夢なら見たけれど、ヘンではないだろう。
「夢は…お兄さんとどこかに行く夢なら見たけど…」
 お兄さんは複雑な微笑を浮かべた。とても大人びて、でも真剣そうな顔だった。
「そう……それが出ると、女の人とそういうコトが出来るって印だよ」
 全く女の子に興味はなかったが、背が伸びたり体つきが変わったりするのと同じなのだろうと理解した。女の子では胸が大きくなるのと同じようなものだろうと。
 慌てて新しい下着とタオルを持って起床時間前のお風呂場に行った。純一も直哉兄さんも遅くまでこっそりと勉強をしているが、施設の子供達よりは早起きだった。
 その日も冷泉君の家で家庭教師をした。冷泉君のママは、以前家庭教師センターの不満を二人に爆発させて以来、「大人の話」もしてくれるようになった。親身になって二人の将来も案じてくれている。
 冷泉君から携帯のメールが入り、学校の都合で帰宅が遅れるとのことだったのでリビングでとても美味しい紅茶とケーキを前に二人は並んで腰掛けていた。
「わたくしどもは小学校で受験は終わりです、それはお二人も良く分かっていらっしゃると思います」
 特に自慢するわけでもなく事実を告げるだけの響きに純一は素直にそうだろうな…と思う。口調が鼻持ちならない様子だと嫌になっただろうが。
 それに僕だってもしお母さんが元気でエステの会社を経営していたら冷泉君の付属の大学よりはランクは少し落ちるが世間では一流大学の端くれと見てくれる大学まで進めたハズだった。とても悔しい。
「はい。それは分かっていますが…何か?」
 低い落ち着いた声で直哉兄さんが答えた。
「わたくしが通っている会席料理の学校でお友達になった方がいらっしゃって…その方は有名な弁護士さんの奥様なのですが、不思議なことにお子様が公立の中学校に通っていらっしゃるの。それでわたくしは高校受験についての知識をお二人にお教えしたくて、個人的に親しくなりましたのよ」
「有難うございます、とても助かります。何から何まで…僕が通っている中学では殆どが定時制に進学するという学校ですから…進路指導の先生も上位の学校は知らないもので…」
 お兄さんが神妙に頭を下げた。中学1年なのに進路指導の先生とも話しをしているお兄さんを今更ながらに尊敬してしまう。塾にも通っていない僕達は情報収集が出来ない。
「お陰様で弘雅の成績が急上昇致しましたもの…お返しをするのは当然のことですわ。ただ、周りに公立に通わせているお子さんがいらっしゃらないので…付属校の場合、家庭教師の先生を付けておけばそれで事足りますでしょう?その方とお話しをしてやっと分かりましたの。純一さんの前でご免なさい…」
 ケーキを食べながら話を聞いていた僕はイキナリ頭を下げられて驚いた。ただ、母しか居なかったという話は以前にしていたので、きっとそれに関係する話だろうな…と思う。 それ以外には頭を下げられる理由は全くなかった。
「いえ、僕は何を伺っても平気ですから」
 冷泉君のママは僕にとって信頼できる数少ない大人の一人だ。その人になら何を言われても平常心のままだろう。
「実は、その奥様は2番目の妻だったのです…というよりも、前の奥様が離婚に応じて下さらなかったらしく、籍は入っていません。つまりは私生児ということになります。それが小学校受験ではどれだけ不利になるかはご存知ですわね?」
 直哉兄さんが心配そうにチラリと僕を見た。僕は微笑み返した。そういえば、死んだお母さんも言っていた。「この子の出自では書類選考ではねられるわ」と。シングルマザーだったお母さんだから僕も戸籍の上では「私生児」になる。あの時は分からなかったが今になってその意味が良く分かった。それで冷泉君や直哉兄さんの通うハズの小学校には入れなかったというわけだ。
 ただ、あんな施設や小学校で6年もいれば、「私生児」を嫌う人が居てもおかしくはないとしみじみと実感する。小学校でも離婚したり籍が入っていなかったりする子供がたくさん居る。でも僕は友達になりたいと思えるような子供は居なかった。皆、不良じみた感じだったり情緒不安定だったりしたので。
「ええ、分かります。僕もそうでしたから…ただ、僕はA学院に入学出来ましたが…それは何故でしょう?」
「それなら決まっていますわよ。純一さんが優秀なお子さんだったからですわ。あちらの学校では書類選考よりも父兄面接と本人面接、そして知能指数の検査と協調性が重んじられますから。純一さんも面接をキチンとこなされたと思いますが、お母様も学校のお眼鏡に適ったというわけですわ」
 横に座ったお兄さんが大きく頷いてくれたのが嬉しかった。
「それでですね、その奥様は高校受験ならば学力試験だけで入学出来るので、塾に行かせていらっしゃるとかで…その方を通じて色々伺おうと思いまして。直哉さんはどんな学校をお望み?」
 冷泉君のママは優雅な動作で立ち上がり、革のスケジュール帳と渋い金色のペンを持って戻って来た。
「僕は…都立だと色々お金もかかります、修学旅行とか…施設から援助が出ますがなるべくなら頼りたくないのです。学力に応じてでも構わないので学費免除…それも全額免除の私立高校を希望しているのですが…。そんな都合のいい学校が有るかどうかまでは調べ切れなくて…」
 冷泉君のママは手帳に書き付けてから僕に向かって微笑みかけた。
「純一さんは?」
「出来れば…同じ学校が良いです」
 お兄さんは僕を見てとても嬉しそうな顔で合図する。
「分かりました。早速その方に伺ってみますわ。お返事は少し時間が必要かと思いますが」
「もちろんです。調べて下さるだけでとても助かります」
 お兄さんはフォークを置いて頭を下げた。僕も同じ気持ちだったのでフォークは手から離しておいた。深くお辞儀をする。
「塾にも通わないでお勉強ともなると大変だと思いますが…頑張って下さいませね。やはり都内の学校が良いのかしら?」
「いえ、学費などが免除されるならばどこでも構いません。ただ、遠くともなると寮に入るしかないので…寮費免除も条件になってきますが。それと、進学実績が良い学校ほど有り難いです」
「ええ、では早速伺ってみますわね。最近の私立校は――特に新興の進学校では特に――少子化の影響で進学実績を上げないと死活問題だと『○レジゼント』だか何かに載っておりました。ですから成績さえ良ければ免除してくれそうな学校はありそうですわね」
 死んだお母さんが仕事上の参考にするからと読んでいたファッション誌しか読んでなさそうな――というか、ファッション誌から抜け出したような――冷泉君のママから難しそうな本の名前が出て少し意外だった。
 お兄さんが思っているような学校だったら仮に寮に入ったとしても今よりはずっとマシなような気がする。一年遅れるのは寂しいけれど…。
 次の日、何だか嫌なものを見た。小学校の授業が終わり帰ろうとしていると平島のヤツが平野さんに絡んでいた。それもヘンな目つきで。平野さんは施設の子だ。僕と目が合うと、縋るような目をした。直哉兄さんはこういうのをさり気なく見張っていろって言ったことを思い出した。自然な感じで目を逸らして様子を窺う。平野さんは平島のヤツと教室を出て行った。

テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

「純愛と妄執に揺れる心」第二章-1

 小学校6年生の日々は毎日が陰鬱だった。冷泉君の家に家庭教師に行く時だけが憩いの場所だ。
 下町は人情が篤いなんて誰が言い出したのだろうと僕は真剣に恨んだ。「ひまわり園」では最低の衣食住は確保されているが、ただそれだけだ。
 直哉兄さんは「中学も小学校と同じだな…しかも、性や薬に興味を持つ年頃なだけに、授業中でもその話で盛り上がって先生の授業が聞けない」
 温和な顔を悔しそうに歪めてそう言っていた。ある夜に問題集の解き合いをしていた時だった。そういえば、小学校でもそうだな…と思い至る。クスリは誰がシンナーをやっているとか、誰が女の子とやったとか…本当かどうかは分からないけれども、自慢げに話している。そのことをお兄さんに話すと、「誰かに自慢したくてネタを探しているんだろうけど…純一」
 直哉兄さんは居ずまいを正す。
「僕のお腹を蹴った、平島が…少年院に入ったそうだ。といっても傷害罪だから直ぐに出所して来るとは思う。それに純一は平島の弟と同じクラスなのだろう。どうやらあの家は父親が暴○団の構成員らしいから気を付けろ」
 お兄さんは、真剣な顔で言う。
「そういえば、町で見かけなくなった、平島のヤツ…それに同級生のほうも『父親が極道だ』って自慢している。皆はそれで恐れ入っているよ。平島の兄さんは、僕が一人で道を歩いている時は口笛を吹いたり、ヘンな声を上げたりしてたり…」
「自慢出来るほどのことではないのが普通なのだけれど、この辺りでは自慢するネタにはなる。純一は狙われやすいから気を付けろ」
「狙われるって…?」
「何だか悪いヤツに目を付けられそうな顔をしているから…。この前の顔で思い知った。純一は冷たい顔も出来るだろう?あの顔は諸刃の剣だ。繊細なガラス細工に似た綺麗な表情だけど、それを踏みにじってみたいと思う人間だってこの辺りにはたくさん居るから。それでなくても綺麗な顔立ちで、『ひまわり園』の女の子も密かに憧れている子がたくさん居るし」
「え?悪いヤツって何をしてくるかな?また根性焼き?」
 あれはとっても痛かった。それとも殴る蹴るの暴行だろうか?でもお兄さんも何回かされている。「施設の子供のクセにその利口ぶった顔が許せない」とかで。
「お兄さんも何回か殴られたり蹴られたりしているよね?あれと同じことをされるのかな?」
 お兄さんがそういう被害に遭うたびに純一の心はとても痛んだ。お兄さんは我慢強いから「大丈夫」っていつも微笑っていたけど。それに、相手も手や足といった人目に付く所には絶対にケガはさせない。お兄さんが蹴られた時に助けてくれた藤田先生は、この学校で唯一不良ぶった児童に恐れられている先生だ。藤田先生にケガの跡を発見されると酷い時は体罰だそうだ。体罰はいけないことかもしれない…ただ、この学校では必要な気もする。けれど、藤田先生に言いつけると倍返しが待っている。僕は「今後手出しはしない」と約束させたメモが有ったので、倍返しはなかったが。
 皆は倍返しが恐くて藤田先生に言いつけることも出来ないらしい。
「純一は、女の子じゃないから大丈夫だと思うけど…」
 女の子でピンと来た。可愛い女の子で両親が無関心な子の場合、レ○プとやらの対象になる場合があると聞いたことがある。でも、僕は男だし関係ないと思っていた。実は大いに関係が有ったのだが。
「純一…何か性的なことをされたら…余計な抵抗はしない方がいい…犬に噛まれたと思ってひたすら耐えろ」
 お兄さんは暗い目をして諭すように言った。
「お兄さんはそういう経験があるの?」
「いや、僕は普通の顔だから大丈夫。ただ施設に居るというだけで暴力の対象になっただけのことだから…」
「じゃあ、僕もきっと大丈夫だよ」
 お兄さんの大人になりかけの整った顔を見て安心させるように笑った。
「そうだと良いけど。それに平野さん…純一と同じクラスなのだろう?」
「そうだよ?言ってなかった?」
「いや、聞いた。彼女は性的なことのターゲットになりやすそうなタイプだから…さり気なく気を配ってやってほしい」
「さり気なくって?」
「不良じみた連中に呼び出されたら、そっと跡を付けてみるとか…」
 平野さんは小学校一年の時にお兄さんが平島のヤツ――兄の方だ――に蹴られている時、僕を体育館まで連れて行ってくれた恩人だ。お兄さんがケガをしていることを藤田先生に伝えようとした時に僕は声を取り戻したというおまけまである。その後、彼女は背も伸びたし、とても綺麗な顔になった。胸も小学生にしては大きい方だろう。僕を見るとにっこり微笑んでくれるけど、小学校一年の時に「バカの平野」と呼ばれていた通りそんなに賢くはない。僕は賢い人が――今のところ、僕が賢いなと思ったのは直哉兄さん一人だ――好きみたいでそんなに関心はない。
「うん、分かった。お兄さんが言うなら、そうする。でも、お兄さんもそんなことをしていたの?」
「ああ、『ひまわり園』の子供がこれ以上心に傷を負わないように…そっと付けて行って、ホントに乱暴されそうな雰囲気ならこっそり引き返して藤田先生か上島先生に報告していた」
 上島先生はケガをしたお兄さんと失語症が治った僕を病院に運んでくれた先生だ。やる気のない先生の中に混じってこの二人だけは特別な先生だ。
「乱暴って…レイ○のこと?」
 お兄さんはもっと暗い顔で頷いた。
「あれはされた女の子に確実に身体にも心にも傷を残す。しかも加害者は面白半分でして罪悪感もないらしい」
 純一には具体的にそれがどういうものかも分かっていなかった。切れ切れにしか性に関する知識もなかった。それもかなり歪曲された噂話でしか入ってこない。また、特に性に関する興味も兆していなかった。
「ふーん。中学校でもそういうのはたくさん有る?」
「あるな…もっと酷い。暴力団と関わりのある生徒が生徒をレイ○して、その場面をビデオに撮って…そのテープをその団体が高値で買うらしい」
「買ってどうするの?」
 お金のことは切実だったのでついつい勉強そっちのけで聞いてしまう。
 冷泉君のママが純一の銀行口座を聞いた時に、25日を待たずにその銀行に行った。お兄さんがそうしろと言ったからだ。カードは純一の手元にあるものの、預金通帳は持っていなかった。お母さんの死のドサクサでどこかへ行ってしまったらしい。お兄さんと銀行へ行き、通帳を発行して貰おうとしたら大人でないと出来ないと言われた。だから機械を操作して残高照会というのをしてみたら、50万円という大金が入っていた。
「純一のお母さんは純一のために預金してくれたお金だよ。これは大切にしないと」
 そうお兄さんに言われていたし、使うアテもないのでそのままにしていた。
家庭教師の真似事をして25日にまた二人で銀行に行った。すると、お金が入金されていた。家庭教師一回につき3千円だった。お兄さんも同じく3千円。お兄さんの方が多いと獏然と思っていたが冷泉君のママは同じ金額を振り込んでいてくれているようだった。二つで割っても端数が出なかったので。この金額の多さにビックリした。お兄さんも驚いていた。ただ、前の家庭教師の先生は1万円が時給だったそうだから、大学を出てもいない上に冷泉君と年の変わらない僕たちにはこれくらいが妥当なのだと思う。
家庭教師の中途解約のことについても学んだ。エステも同じだが、中途解約をすると、上限5万の中途解約金というのを支払わなければならない「特定商取引法」という法律があることもネットで調べた。でも、それ以上に解約金を受け取ったら違法なのに、冷泉君のママは支払ったそうだ。その話を聞いて直哉兄さんは「金持ちケンカせず」ってヤツかなと笑っていた。
「ビデオを裏ルートで売るんだって…。大人の人が見るビデオっていうのがあって…それは法律が認めているのだけれど、厳しい規定があるし、肝心な所は隠さないといけない。けれども、隠しているところを観たいという大人がこっそり高値で買うらしい」
「ああ、施設の先輩達がこっそり観たがっているようなエッチなビデオ?」
「それは18歳になれば合法的に観られるのだけれどもね…。暴力団が絡んでくるのはもっと…全部写っているビデオだそうだ。もちろん法律で禁止されている」
 何が写っているのかは良く分からなかったが、暴力団とは係わり合いになりたくないのでその日はそんな話は打ち切って勉強の教えあいをした。


テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

「純愛と妄執に揺れる心」第一章-24

 「ひまわり園」でも学校でも、何かしら問題が起こっていた。ケンカだの万引きでの補導だの、噂ではシンナー吸引と相手にケガをさせてしまって警察ではなくて、検察官に事情聴取された――何でも知っているお兄さんに聞くと、ホントは14歳以下は検察に行くことは稀で、そういうのを「逆送」というそうだ――だので、学校の先生も「ひまわり園」の大谷園長も疲れきっているのが分かる。
 僕は冷泉君のママなどのごく少数の大人――でも、冷泉君のママだって僕がいい子だから良くしてくれるだけで、もし、平島のお兄さんみたいな格好をすれば情け容赦なく出入り禁止にするだろうことも分かっている――しか信用しないことに決めていた。それにはお兄さんも同意見だった。
 そういえば、冷泉君の一回目の家庭教師が終わった後でお兄さんもマドレーヌと紅茶を振舞われていた。
「マキシムですか…一回父母に連れられて銀座のお店に食事に行ったことがあります」
「まぁ…あそこは小さいお子さん連れは歓迎されないお店ですのに…」
 冷泉君のママは驚いた口調だった。
「ええ、ただ、代々の常連でしたし、それに僕は…」
「分かりますわ。あのお店以外でも嫌われるのは騒がしいお子様ですものね。直哉君は物静かな子供さんでしたものね…」
 冷泉君のママはちょっと不本意な目をして冷泉君を見た。確かに冷泉君は声も大きいし活発だ。
 純一も数学を教えて…それはなかなか面白い体験だった。冷泉君のママはベンツで「ひまわり園」まで送ってくれた。夜遅くの電車に二人を乗せることは出来ないという理由と、夜道で何があるか分からないという理由からだった。
 冷泉君のママは「ひまわり園」の建物を見てとても驚いたようだった。多分、純一の通っている小学校よりも粗末な建物と、今この建物の中に暮らしている人数に比べて――正式な人数は直哉兄さんが冷泉君のママに淡々と教えていた――建物の小ささに驚いたのだろう。
 その夜、直哉兄さんのベッドに潜り込み銀行のカードの件を慎重に聞いてみた。怒るかと心配していたが、一瞬お兄さんは黙り込み、「『芸が身を助ける不幸せ』かもな…。それにお金は有った方が何かと助かる」と苦いものを食べた後に似た口調で言った。
「芸が身を助ける不幸せ」の意味が分からなかったので後で調べてみようと思う。それに冷泉君のママが怒っていた「家庭教師センターの中途解約金」についても。
「ひまわり園」では当たり前のように消灯時間以後の行動は禁止されている。トイレに行くくらいしか自由になれない。集団生活ではそれも仕方のないことだと純一も思っている。
 ただ、この「ひまわり園」での生活は純一も、そして温和で人当たりの良い直哉兄さんですら苦痛だった。それまでの暮らしが違いすぎる子供ばかりだったので、純一や直哉兄さんが当たり前と思っていたことが通じない。言葉の暴力はいつものことだったし――純一の笑顔でリーダー格の先輩は優しくなったが――それでも皆がそれまでの生活で何かしらの心の傷を負っている。その心の傷にうっかり触れてしまうと大変なことになる。
 純一が何気なく漏らした言葉、「お母さんがどれほど優しかったか」を聞いて激怒した先輩も居た。その場所に直哉兄さんが居なかったのは純一にとって不幸なことだった。直哉兄さんは他人の話しに無関心そうでいて、実は良く聞いている。もし、あの時に直哉兄さんが傍に居れば、純一をさり気なく制止しただろう。
 後で直哉兄さんに聞いてみたところ、その先輩は純一と同じシングルマザーの母親に育てられたが、恋人が切れたことがなく恋人が部屋に尋ねて来る度に季節を問わず外に出されたそうだ。そして、恋人との仲が険悪になるとその先輩のせいにされて殴られたり蹴られたり酷い時にはタバコの火を押し付けられたりしたそうだった。その後、その母親は男性と失踪して、その先輩は「ひまわり園」にやってきたという。
 そういえばお風呂で見たヤケドの跡が多かった先輩のうちの一人だった。
 不用意に何も話してはならない。そう純一は学んだが、それはなかなか難しいことだった。色々な不幸を背負って「ひまわり園」に集まって来たのだからみんな仲良くすれば良いとは思うが、それは理想論だと直哉兄さんにたしなめられた。皆が触れられたくない過去を背負っていて、そこに触れられると逆上する。純一はお母さんのことが心の傷にはなってはいたが、別にお母さんの自殺の件を言われても怒ったりはしないのに…と直哉兄さんに言うと、「それは純一が優しいからだ」と穏やかな目をして笑ってくれた。
「お兄さんだって優しいよ。僕の面倒を最初から良くみてくれたし」
「それは…純一が僕と同じような育ちと体験をしたのを知っていたから、きっと良い友達になれると思った。僕だって、貧乏な家に生まれて虐待されて挙句の果てに親に捨てられた子供の気持ちは頭では分かっても本当のところは理解出来ないもの」
「僕も出来ない…お母さんは、とっても優しかったし。小学校に受かった時は本当に嬉しそうだった。あんな暮らしがあったこと…今は夢みたいだけど。マンションに帰ると僕専用のご飯が待っていて、僕専用の部屋があって…そして優しいお母さんやハウスキーパーの青井さんが居て」
 直哉兄さんが真剣な眼差しで僕を見た。
「昔の暮らしのことは…もう考えても仕方ない。今からは自分の手で新しい暮らしを手に入れることを考えないといけない」
 そう言うお兄さんは自分に言い聞かせているようだった。
「そうだね…学校でも施設の子とイジメられるし…。きっと大人になっても施設の子って言われるんだろうな…」
「言わせないような力を付ければいいんだよ。頑張って勉強して世間の人が驚く大学に入るんだ。それしか方法は思いつかない」
 純一はお兄さんをマジマジと見詰めた。薄暗い部屋の照明でもお兄さんは照れくさそうに笑っているのがかろうじて見えた。
「冷泉君のママも同じことを言っていたよ。直哉兄さんは、それを自分で考えたの?」
「自分で…というか、僕はパパがあんなことをする前は親戚も多かったから…大学のこととかは自然に耳に入る。ウチは医師が多い家系だったけど、一人変わり者の人が居て…『どうしても音楽家になりたい』と言っていた。僕はその小父さんのことは好きだったんだけど、一族は冷たい目で見ていたよ。でも、その人がジュリアードという世界的にとても有名な学校に入ったら、皆は自慢し始めた。そういうものかって思った」
 お兄さんは親戚が多いのに…パパがママを殺してから自殺したので誰も援助の手を差し伸べてくれなかった。純一はお母さんしか居なかったからお母さんが自殺したら誰も助けてくれないのは仕方ないと諦められる。でもお兄さんは違う。親戚付き合いというのがどういうものか、純一にはあんまり良く分からないけど。お兄さんの親戚は誰も引き取って育てようとしなかったのは、お兄さんにとっては悔しい出来事なのだろう…多分。それなのにお兄さんは過去のことは忘れて生きようとしている。
 けれども僕は未練がましくも考えてしまう。お母さんが生きていて以前のような暮らしを続けたかったな…と。完治したハズのお腹のヤケドが疼く。でも死んだ人は生き返らない。それなら、冷泉君のママに聞いた、お母さんのエステを邪魔したヤツを同じ目に遭わせてやる。そのためにどんな手段でも取れるように大学に行って偉くなろうと。
「今、純一はとても冷たい目をしている…なまじ綺麗な顔なだけに凄みがある…な。復讐の女神みたいだ」
「こんな目は、直哉兄さんは嫌い?」
 何故、こんな言葉が出たのかも分からずに純一は直哉兄さんに聞いていた。
「いや。純一は純一だもの」
 そう言った直哉兄さんは眠りの国に行ってしまった。

テーマ : 自作BL連載小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

こうやま みか

Author:こうやま みか
素人の完全な趣味で「ボーイズラブ」小説を書き始めました。
全然上手くないのですが、コメント頂ければとっても嬉しいです。
またヤフーブログが本館扱いで、こちらでは当面(ってイツ?)旧作を掘り起こして掲載していきたいと思います。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載などは禁止させて頂きます。何卒ご了承くださいませ。

FC2ブログランキング
ランキングに参加させて戴いております。ご訪問の際ポチっと。とっても喜びます!!

FC2Blog Ranking

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
「がんじがらめの愛」 (898)
目次 (1)
「気分は、下克上。」医師編 (56)
「純愛と妄執に揺れる心」 (28)
☆宝物のイラスト☆ (4)
その他 (5)
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。